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[デンチャレ]サッカー選手の夢も救急救命士の夢も…中部大FW長井結矢は“二兎を追う”

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FW長井結矢(中部大3年=静岡学園高)

[2.28 デンチャレグループA U-20全日本選抜1-2東海選抜]

 東海選抜がU-20全日本大学選抜に2-1で競り勝った。前半27分にFW長井結矢(中部大3年=静岡学園高)の得点で先制すると、同点とされて迎えた後半19分にはDF武藤寛(中京大2年=市立船橋高)が勝ち越し弾を決めた。グループAは全チームが勝ち点3で並び、29日の最終節を迎えることになった。

 前日の関東選抜Bとの初戦を0-1で落としていた東海選抜に今大会初ゴールが生まれたのは前半27分、左SBの深澤壯太(中京大3年=大阪桐蔭高)からの浮き球パスでDFの背後を取った長井が、GKとの1対1を冷静に制した。「チーム(中部大)でもいつも相手の背中を取れと指示を受けています」。普段通りの実力を大舞台でも発揮した。

 昨年度の東海学生サッカーリーグ2部を優勝した中部大から唯一の参戦となっている。ただ昨年の長井の試合出場はわずかに1試合。ほとんどを怪我で離脱してしまった。「右足の肉離れ4回と、左を2回。1回目を練習中にやってしまってから、復帰しては怪我をしてを繰り返してしまいました」。

 ただ試合に出ることが出来ていなくても、東海選抜の候補には残っていたようだ。1部リーグを戦った一昨年は8ゴール4アシストと活躍。昨年の2部リーグで26得点を決めて得点王を獲得したFW小島大拓(3年=大阪桐蔭高)が選ばれていないことを考えれば、大抜擢になっている。「1年間怪我していたなかで選んでもらった。自分は一番下だと思っているので、とにかく結果を残したいです」。その意味でも大きな1得点になった。

 愛知県出身だが、高校は静岡県の名門・静岡学園高に進学。しかし2年生の時に高校選手権で全国制覇を果たしたチームだが、長井自身はほとんどをBチームで過ごした選手だった。「同学年には田邉秀斗(川崎F)や関根大輝(柏)がいたけど、自分は周りのメンバーに比べて名前も知られていなかった。だから結果で驚かす必要があった」。地元に戻って力をつけて、再び彼らと同じ舞台に立つことを目標に定めた。

 そしてもう一つ、救急救命士になる夢も同時に追うことにした。サッカー以外の将来を考えたとき、テレビドラマで活躍する救命士の姿が印象に残った。「コード・ブルーとか医療系のドラマが好きでよく見ていた。病院で助けるのは医者だと思うけど、裏で一番最初に心停止の人を蘇生させて、回復させるのは救命士。助けるという意味では救命士もかっこいいんじゃないかと思ったんです」。

 そこで救急救命士の国家資格が取れるスポーツ保健医療学科がある中部大で、2つの夢を叶えることにした。「プロに行くにしても救命士の資格は取りたい。プロってサッカー人生も限られていて、プロ生活を終えた後の方が長い。サッカーを辞めたあとに何やるかと考えたときに資格を持っていた方がいいと思っていて、救命士の資格を取ってプロになりたいと考えています」。しっかりとした人生設計がある。

 高校時代には正直描くことが出来なかったというプロサッカー選手の未来だが、今はおぼろげながら見えてきたと感じている。そして今大会で更なる結果を残すことで、また一歩前進したいと考えている。この日は接触プレーにより後半5分に途中交代となった長井だが、29日の試合には出場を志願する。「自分は自分の得点でチームを勝たせたいと常に思っている。今日は怪我で交代してしまったけど、明日も勝利に貢献して決勝に進みたいと思います」。東海選抜が昨年度決勝のリベンジマッチとなる関西選抜とのグループリーグ最終戦を勝利することで、運命を変える。

(取材・文 児玉幸洋)

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児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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