beacon

[MOM941]流通経済大MF藤井海和(4年)_激震走ったチームを開幕戦逆転勝利に導くVヘッド

このエントリーをはてなブックマークに追加

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.7 関東大学L1部第1節 流経大2-1東洋大 流通経済大フィールド]

 主将が後半43分に決めた劇的ヘッドで開幕戦勝利に導いた。前半からクロスバーに当てるシュートを打たれるなど苦しんだ流通経済大は、後半立ち上がり早々に与えたPKによって先制を許してしまう。

 しかしここから逆襲のスイッチが入った。後半22分にDF田口空我(3年=流通経済大柏高)のクロスから放ったシュートのこぼれ球をFW清水蒼太朗(3年=流通経済大柏高)が自ら押し込んで同点に追いつく。

 そして後半43分、カウンターから左サイドで受けたFW松永颯汰(3年=静岡学園高)がクロスを上げると、ゴール前で待っていたMF藤井海和(4年=流通経済大柏高)が頭でゴール右隅に流し込んで、試合をひっくり返した。

「どこかで勝負所は来ると思いながらやっていた。得点のシーズンは長い距離を走ってゴール前に入って、自分が点取れたのはよかった。流し込みながらのヘディングで難しかったけど、ゴールになってよかったです」

 ホームでの開幕戦で、この日のゴール裏には女子サッカー部のほか、硬式野球部、男女ラグビー部の部員が大挙して、イレブンに大声援を送っていた。“チーム流経大”の勝利に、藤井も「去年はこういう試合でなかなか勝てなかった。先制されたけど、応援があったから頑張れた。応援のおかげかなと思います」と頷きながら話した。

 激震が走った開幕に向け最終調整に入っていた先月末のことだ。中野雄二監督にパワーハラスメント行為があったとして、日本サッカ協会(JFA)から処分を受けていたことが発覚。大学も直ちに処分を決定し、ホームページで公表した。

 学内で起こした不祥事ではないこともあり、現実として受け止めることはなかなか難しかったが、藤井には主将として、チームをより団結させる必要が迫られていた。「試合でベンチに入っているかいないかは大きい」と存在の大きさを改めて感じた様子だが、逆に「簡単には負けられない」とする自然とあふれ出るイレブンの思いも感じることが出来たという。

 もとも昨年の主力メンバーが多く残る今季は、優勝への期待が高まっているシーズンでもある。藤井も高校時代から含めて、流経大“7年目”になることから、日本一への思いをより強くしている。「7年間、流経大にお世話になっていて、その間で日本一を経験していない。自分の力で優勝させて、ここを去ることが恩返しだと思っている。それを達成できるように頑張りたいです」。

 そして個人として、その先の夢に向けた大事な1年なることも分かっている。今季は早めにJリーグ入りを決断した拓殖大DF関根大輝が、柏レイソルでレギュラーとして活躍。ついこの間まで選抜チームで一緒にプレーしていた選手の飛躍に大いに刺激を受けている。

 藤井もこのオフは複数クラブの活動に帯同。すでにオファーを出しているクラブもあるようだが、プロキャリアを始めるクラブを、その先のキャリアも考えて選んでいきたいという。

「関根がもうJリーグで出ているのは悔しい思いと、彼がやれるなら俺もやれるという自信もくれている。今は負けているけど、ここがゴールじゃない。自分の目標はW杯に出る日本代表になるというところなので、彼を越えられるように頑張りたいです」

 監督不在で始まった異例のシーズンだが、名門・流経大の主将に就任した注目株は、今やれること、やるべきことに集中する。

(取材・文 児玉幸洋)

●第98回関東大学リーグ特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

TOP