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死体を飛び越えていた少年時代…ブラジル代表の22歳アントニー「サッカーでは何の重圧も感じない」

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過去の壮絶な体験を明かしたFWアントニー

 マンチェスター・ユナイテッドブラジル代表FWアントニーが『ザ・プレーヤーズ・トリビューン』に寄稿したエッセイの中で過去の壮絶な体験を明かした。

 現在22歳のアントニーは、サンパウロのユースから2018年にトップチーム昇格を果たし、2020年にオランダの名門アヤックスへ。今夏にはエールディビジ史上最高額でユナイテッドに移籍し、カタールW杯に臨むブラジル代表メンバーにも選ばれた。

 順調にステップアップを続けているが、ここまでの道のりは想像を絶するほど過酷なものだったようだ。『ザ・プレーヤーズ・トリビューン』で自身が過ごしてきた少年時代を語っている。

「僕は地獄で生まれた。冗談じゃないんだ。ヨーロッパの友人で知らない人もいるかもしれないけど、僕が育ったサンパウロのファベーラは、実はインフェルニーニョ(小さな地獄)と呼ばれている」

「悪名高い場所だ。家の玄関から15歩も歩けば、いつも麻薬の売人が商売をしていて、物を手渡ししていた。窓の外はいつも臭かった」

「僕たちは銃を見慣れすぎていて、怖くも何ともなかった。日常生活の一部に過ぎなかったんだ。それよりも、警察がドアをノックしてくることの方が怖かった。ある時、警察が人を探して家に侵入し、叫びながら走ってきたことがあった。もちろん、何も見つからなかったけどね」

「8歳か9歳くらいの時には、朝に学校へ行く途中、路地で倒れている人に遭遇した。彼は動かなかった。近づいてみると、彼は死んでいたんだ。スラム街では、こういうことに無頓着になる。他に道はないし、学校にも行かなくちゃいけない。だから目をつぶって死体を飛び越えたんだ」

 アントニーは先月のユナイテッドでの試合中、プレッシャーのないところでボールを持って2回転する技を披露し、多くの批判を浴びていた。だが、そのプレーに相手への挑発やテクニックを誇示するような意図はなく、自分が理想とするフットボールを追い求めようとしているだけのようだ。

「僕の10秒間の映像を見ただけでは理解できないだろう。僕がすることに冗談はない。全てに目的がある。大胆に前に出ること、相手に恐怖を与えること、スペースを作ること、チームのために違いを生み出すことだ」

「僕をただの道化師だと思っているのなら、僕の話を理解していないことになる。ロナウジーニョやクリスティアーノ、ネイマールの芸術は、子供の頃の僕を奮い立たせた。盗んだWi-Fiでこれらの神々を驚きながら見て、それからコンクリートのピッチに出て、彼らの天才的な技を真似ようとしたんだ」

 スラム街から“夢の劇場”ことオールド・トラッフォードに辿り着き、少年時代に憧れた選手たちとともにW杯の舞台に立つまでになった。

「僕は3年でスラム街からアヤックス、そしてマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。どうしてそんなに早く転身できたのか、いつも聞かれる。正直なところ、サッカーのピッチでは何のプレッシャーも感じないからだ。恐怖心がない。恐怖心? 恐怖心とは何だろう? 学校に行くために死体も飛び越えるような環境で育っていれば、サッカーで怖い思いをすることはない」

 その怖いもの知らずのメンタリティーは、世界の檜舞台でも大きな武器となるに違いない。

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