beacon

大一番で見せた「失態」王者・イタリアが36年ぶりのGL敗退

このエントリーをはてなブックマークに追加

[6・24 10年W杯GL・F組 スロバキア 3-2 イタリア エリス・パーク]

 06年大会王者で5回目の世界一を目指したイタリアが、36年ぶりとなるグループリーグ敗退へと追い込まれた。10年W杯南アフリカ大会は24日、ヨハネスブルクのエリス・パークでグループリーグF組最終戦のスロバキア対イタリア戦を行い、スロバキアがFWロベルト・ビッテクの2ゴールなどにより3-2で勝利。グループ最下位から2位へ浮上したスロバキアが決勝トーナメント進出を決めた一方、イタリアは2位タイからグループ最下位に転落し、敗退が決まった。W杯王者として出場したチームがグループリーグで敗退するのは98年大会優勝のフランスが02年大会でグループリーグ敗退して以来。イタリアにとっては74年大会以来36年ぶりとなるファーストラウンドでの敗退となった。

 後半44分の失点で1-3と突き放されたイタリアは47分、途中出場のFWファビオ・クアリャレッラが鮮やかな右足ループを決めて1点差へと迫る。表示されていたロスタイムは4分。奇跡を信じてスロバキアゴールへとなだれ込んだアズーリだったが、MFシモーネ・ペペの決定的な右足シュートが枠を外れるなどあと1点が奪えないまま試合終了のホイッスルが鳴り響く。スロバキア国旗を広げて喜ぶ相手選手たちがピッチを走り回る隣で、イタリアのイレブンは顔を覆い、頭を抱えた。左腕にキャプテンマークを巻くDFファビオ・カンナバーロの目からは悔し涙が溢れていた。

 2試合を終えて2分、勝ち点わずか2のイタリアはこの試合、“闘犬”ジェンナーロ・ガットゥーゾを今大会初めてピッチへと送り出す。4-3-3システムのGKはフェデリコ・マルケッティで4バックは右からジャンルカ・ザンブロッタファビオ・カンナバーロジョルジョ・キエッリーニドメニコ・クリシート。中盤はガットゥーゾ、ダニエレ・デ・ロッシリカルド・モントリーボのトリプルボランチで3トップは右からペペ、ビンチェンツォ・イアクインタアントニオ・ディ・ナターレが並んだ。

 対して1分1敗のスロバキアは4-4-2システム。GKがヤン・ムハで4バックが右からペテル・ペカリークマルティン・シュクルテル、ヤン・ドゥリツァ、ラドスラフ・ザバブニク。中盤はズデノ・シュトルバとユライ・クツカをセンターに右がミロスラフ・ストフで左がマレク・ハムシク。エリク・イェンドリシェクとビッテクが2トップを組んだ。

 大きなプレッシャーの中で最終戦を迎えたイタリアは立ち上がりこそディ・ナターレとイアクインタがシュートにまで持ち込むが、その後は前線で力強いキープを見せるビッテクやサイドからストフ、ハムシクがぐいぐいと押し込むスロバキアに主導権を握られてしまう。また判断が遅く、どこか動きも重いイタリアはショートパスやコントロールのミスを多発。簡単にボールを失い、序盤は相手に6割もボール支配されてしまった。
 そして流れの悪いまま迎えた25分、イタリアは自陣でデ・ロッシが軽率なミスパス。インターセプトしたスロバキアのイェンドリシェクがすかさずペナルティーアークへラストパスを送ると、DFの間へ入り込んだビッテクが右足シュートをゴール左隅へねじ込んだ。

 球際への寄せが速く、身体も張る相手の前にほとんどいいところなく前半を終えたイタリアは、後半開始からガットゥーゾとクリシートに代えてクアリャレッラと右SBクリスティアン・マッジョを投入。序盤以降ほとんどなかったシュートチャンスをつくり出すと、11分には負傷明けのMFアンドレア・ピルロを早くもピッチへと送り出す。30分以上残して交代カードを使い切った積極策は当たった。ピルロの正確なパスなどにより、前半に比べて明らかにボールが動き出したイタリアは17分にディ・ナターレのコントロールショットがゴールを捉え、22分には右クロスをファーサイドで受けたクアリャレッラがゴール至近距離から決定的な右足シュート。だが、スロバキアはゴールライン上でシュクルテルがはじき出し、同点となることを許さない。

 相手のスパイクに足をえぐられながらも奮闘するシュトルバら前回王者の圧力に屈しなかったスロバキアは28分、右CKのこぼれ球をキッカーのハムシクがダイレクトで再び中央へ。DFよりも一瞬早くニアサイドを突いたビッテクが右足で押し込み、2-0とした。それでもイタリアは36分にワンツーでPAへ侵入したクアリャレッラのシュートのこぼれ球をディ・ナターレが左足で押し込み1点差へ迫る。残り約10分。追撃ムードが一気に高まったイタリアは怒涛の攻撃を展開する。スロバキアの粘り強い守りを前にしても、ロスタイムが4分間あったことを考えると、イタリアが引き分けに持ち込み決勝トーナメントに勝ち上がる可能性は十分にあった。

 しかし、地に堕ちた王者はここでまさかの失態を演じてしまう。44分、PAへ放り込まれた右スローインに走り込んだ途中出場のMFカミル・コプネクをDF陣が完全につかみ損ねてしまい、そのまま試合を決定付けるループシュートを決められてしまった。これで1-3。ロスタイムにクアリャレッラが決めたファインゴールも「焼け石に水」だった。

 大事な最終戦で致命的なミスパスを犯して先制点を献上。そして反撃ムードが最高潮に高まっていた試合終盤にはDF陣が集中力を欠いたプレーを見せてしまった。自ら崩壊した世界王者。その隙を突いていずれもゴールに結びつけたスロバキアが決勝トーナメント進出の権利を手にし、失態を演じたイタリアが敗退したのは「当然の報い」だったのかもしれない。

(文 吉田太郎)

W杯南アフリカ大会特設ページ

TOP