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チームとして戦い、流れ引き寄せた「NIKE FC」がかえつ有明高とドロー

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 ナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」は27日、埼玉県のレッズランドで全国高校総体出場経験を持つ東京の強豪・かえつ有明高とトレーニングマッチ(30本×3本)を行い、3-3で引き分けた。

 「NIKE FC」は真剣に上手くなりたいと思っている18歳以下のプレーヤーたちが、所属チームのトレーニングプラスアルファとして提供される特別なプログラムによって成長を目指す場。経験豊富な指導陣と好環境の中で実施されるトレーニングを通して、意識高いプレーヤーたちは少しずつ自分自身のパフォーマンスを向上させている。今回は今月6日に開催された「10月関東NIKE FC」セレクションの合格メンバーたちが同14日と、この日のトレーニングを経て、対外試合に挑戦した。

 「NIKE FC」の櫛山匠コーチは「セレクションのところで見ていたのは、ゲームインテリジェンスのところを凄く見ていたんですけど、前回の練習とかは早いテンポでのパス回しのサッカーをやろうと。それだけではダメなので、(NIKE FCの選手の課題となっている)フィニッシュのところも見ていきました。きょうの練習でもパスをする際の身体の向き、受け方、出し手へのタイミングをもっと気づいてほしかった」と口にする。加えて課題として挙げたのはコミュニケーションを取るという部分とオフ・ザ・ボールの動き。普段は別々の高校やクラブチームでプレーしていることもあってか、プレーヤーたちはなかなか自分の意図をチームメートたちに伝えることができなかった。4対1のボックストレーニングでも声が非常に少なく、ポジショニングが悪かったり、味方にメッセージが伝わるようなボールタッチができていなかった。

 準備の時点で出ていた課題がゲームでもそのまま出てしまう。参加28人を3チームに分けて臨んだトレーニングマッチの1本目は3年生ら主力不在のかえつ有明にいいようにボールを回されてしまう。開始7分間で3本もスルーパスを通されると、8分に失点。中盤をダイヤモンド型に構成した4-4-2システムを取ったNIKE FCだったが、守備時にプレッシャーが全くかからず、CBが不用意に飛び出したところで背後を取られるなど意志、動きがバラバラなまま12分にも2点目を奪われてしまう。

 NIKE FCはそれぞれがやや難しいプレーをしようとし過ぎた感もあり、ボールロストする回数が多かった。それでも右の北村大輔(藤沢西高3年)と左の南雲丈一郎(東大和高2年)の両SBの好キックなどで相手を押し下げると19分だ。中盤でのインターセプトからFW成重岳洋(石神井高2年)のパスを中央で受けたFW犬飼元気(irrumattio)がターンでDFをかわし、左足一閃。鮮やかな一撃をゴール左隅へ突き刺して1点差とする。ようやくリズムを掴んだNIKE FCはMF田中祐希(足立新田高3年)がポスト直撃の右足FKを放つなど、流れをやや取り戻して2本目の選手たちにバトンをつないだ。

 2本目は1本目で課題だった守備面で安定。中盤が危険を察知して素早くスペースを消すと、最終ラインでは本来SHのDF栗原航(伊奈学園総合高2年)とDF大杉慶介(所沢高1年)がPAへ入ってくるボールを確実に弾き返す。また積極的に前へ出る栗原が「NIKE FCでしっかりといい刺激をもらって、個をレベルアップしてそこから(所属チームで)勝負したいと思っている。(きょうはポジションが普段と違ったが)いつもチームの中でCBにこうして欲しいというのがあったので、それでできたのかなと思います」と絶妙なインターセプトから攻撃参加。チームとして人数をかけたカウンター攻撃を繰り出すシーンも見られた。ただ、簡単なミスで自分たちの首を締めるような場面も少なくなく、30分間を通してのチャンスはわずかで同点に追い付くことはできなかった。

 それでも1本目に出場していた選手5人が再び出場した3本目は、彼らの反省を活かしたプレーも随所に見られ、また個々の気持ちが伝わってくるような姿勢が出て、スコアも動く白熱の展開となった。特にFW志村陽平(東大和高)とFW貫井将孝(所沢高)の2トップが前線から非常にアグレッシブにボールを追い回すと、他の選手もダイレクトプレーや出し手との息のあった裏への飛び出しなどを連発する。17分、相手の波状攻撃を我慢することができずに1-3へ突き放されたものの直後の18分、志村の思い切ったプレスから田中がインターセプト。そのまま右中間を縦に切れ込んだ田中が鮮やかな右足ループシュートを決めて1点差とした。

 そして29分だ。再三好守を見せていた北村がインターセプトから右サイドへ展開。志願の交代出場をしていたMF鈴木暢(富士市立高)が絶妙なクロスを放り込むと、PAでコントロールした貫井が右足で同点ゴールを流し込んだ。「練習から調子悪くて、トラップとかも全然うまくいかなかった。でも最後だけうまくいけたので自分に勝てた気がしました。(ゴールシーンは)ちょっと焦りましたけれど、いいところに置くことができました。シュートも左の端を狙って入ったので良かったです。自分は得点力がなかったので、NIKE FCで点を取ることで自信がついてきたのは良かったです」と貫井。3本目は2トップの他にも右SB竹内豊(東大和高)や交代出場の鈴木もベンチからのゲキを背に献身的な走りを繰り返していたことが印象的だった。

 逆転することはできなかったものの、それぞれがチームのために何ができるか考え、一丸でとなって戦った結果、2点差を追いついてドロー。特に3本目はいい守備からいい攻撃につなげ、声も出ていた。そして終盤は迫力のある攻守。元U-18メキシコ代表のジョージ栗山GKコーチが「相手の弱いところを見つけてどんどん前に出て行くプレーは良かった。一人ひとりでいくのではなく、チームとして行けたのが良かった。もっともっとこういう試合を経験して欲しい」と頷けば、北村も「1本目は全然みんな機能しなかった。だからこそ、3本目はみんな気持ちが強くて勝とうという思いを出せたのは良かった」と納得の表情を見せていた。

 唯一の中学1年生、MF徳正弥(Shoot FC)は高校生との戦いを終え、「周りの方が身体が大きいし、スピードとかも速いから身体能力では勝てない部分が多いけれど、技術の部分では高校生でも上回れる部分が多いと思うから、そういうところを出していけたのは良かったと思います」と語った一方で「もっと声を出して、積極的に空いているところへ要求して行ったり、きょうとか風も強かったので試合の流れを読んで、もうちょっとボールがどう曲がるかとかも考えていければ良かったです」と課題を口にした。1か月間の試合へ向けた準備と試合の中でよりよいプレーをするためには何が必要か理解し、結果につなげたイレブン。ただ、「もっと上手くなりたい」と参加しているメンバーは満足せずにさらに先を見据える。リーダー格の北村は「みんなナイキ(NIKE FC)に受かるということが目標になってしまっている部分がある。もっとここで頑張ろうという意識が高まれば、もっと良くなる」。全国的には無名な選手たちだが、意欲は強豪の選手たちにも負けない。貴重な機会で力をつけて、それぞれの目標に近づく。


【NIKE FC出場メンバー】
GK広保友樹(海城高2年)
GK片山淳介(神奈川大附高1年)
MF田中祐希(足立新田高3年)
DF/MF南雲丈一郎(東大和高2年)
MF菊地大輔(矢板東高3年)
DF北村大輔(藤沢西高3年)
FW犬飼元気(irrumattio、3年)
DF海老沢颯太(栄北高2年)
DF竹内豊(東大和高2年)
FW志村陽平(東大和高2年)
DF堀口翔(東大和高2年)
GK鈴木諒(日本第一大付高3年)
FW鈴木暢(富士市立高2年)
MF栗原航(伊奈学園総合高2年)
MF徳正弥(Shoot FC、中学1年)
MF釜石怜(柏中央高2年)
MF中河原慎太郎(神奈川大附高1年)
MF高橋優斗(神奈川大附高1年)
MF達康大(神奈川大附中3年)
DF/MF猪俣凌(豊島学院高2年)
FW/MF阿部優貴(豊島学院高2年)
MF/FW成重岳洋(石神井高2年)
FW和田純也(石神井高2年)
DF大杉慶介(所沢高1年)
FW貫井将孝(所沢高1年)
MF清水駿之輔(東京成徳高2年)
DF花北秀人(東京成徳高2年)
MF古川慎也(東京成徳高1年)

【1本目】
NIKE FC 1-2 かえつ有明高
[得]犬飼元気(19分)

   犬飼 成重

    田中
 古川    猪俣
    菊地    

南雲 堀口 竹内 北村     

    鈴木諒

【2本目】
NIKE FC 0-0 かえつ有明高

   和田 鈴木暢

    高橋
 阿部     徳 
    釜石

花北 大杉 栗原 海老沢

    片山

【3本目】
NIKE FC 2-1 かえつ有明高
[得]田中祐希(18分)、貫井将孝(29分)

   貫井 志村

     達 
 中河原    田中
     清水 (24分→鈴木暢)

南雲 堀口 北村 竹内 

    広保

(取材・文 吉田太郎)

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