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「破るため」の質向上にこだわる立正大淞南、後半3発で中国新人戦制覇!!

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[3.16 中国高校新人大会決勝 立正大淞南高 3-1 広島皆実高 山口県立おのだサッカー交流公園]

 第7回中国高校サッカー新人大会(山口)決勝が16日に行われ、立正大淞南高(島根1)がFW杉本龍哉(2年)の先制点と交代出場のFW千川原慎(2年)の2得点によって3-1で広島皆実高(広島2)に勝利。2年ぶりの優勝を果たした。

 表彰式直後のベンチ前。立正大淞南の南健司監督は選手たちに向けて、目標の日本一に近づくために、ここからまた一歩ずつ踏み出していかなければならないことを強調していた。全試合で1失点したものの4試合で14得点をたたき出して堂々の中国制覇。それも、主将のCB饗庭瑞生(2年)とエースFW井上直輝(2年)という2本柱がともに怪我で不在だったにも関わらず、強さを十分に印象付けてタイトルを勝ち取った。だが、ここから大きく一歩を踏み出すことが必要。それだけに、杉本は「全国優勝が最終目標なので、ここは通過点のひとつにすぎない。これからどれだけ上げていけるか。もっともっと丁寧に上目指してやっていきたいです」と誓った。

 試合開始から非常にテンションの高いゲームとなった。特に立正大淞南が立ち上がりから見せた猛攻は圧巻の一言。休むことなく動き続ける杉本と身体能力の高さを見せたFW藤尾悠也(2年)の2トップや、ともにドリブルで皆実守備陣を切り裂いた左MF上西健也(2年)と右MF上村大悟(2年)が突破を繰り返していく。相手に息をつかせずに攻め続けた5分間。広島皆実は1対1の局面で劣勢となったが、それでも決定的なシーンを的確なカバーで封じていたCB林耕平主将(2年)とCB田中惇史(2年)を中心に集中力高い守りで切り抜けて見せる。この立ち上がりの攻防戦をはじめ、ハイレベルな戦いが70分間繰り広げられた。

 序盤押し込まれて、ボールが収まらなかった広島皆実も徐々に攻め返す。12分、ショートパスをつないでフィニッシュまで持ち込むと、14分には絶妙な展開からFW安原修平(1年)がドリブルで持ち込み、最後は左サイドへ開いたMF中島陵吾(2年)がクロスバーを叩く右足シュート。立正大淞南も19分に上西のスルーパスで杉本が抜け出したが、シュートは広島皆実GK對川敦紀(2年)が止め、23分にPAへ潜り込んだ藤尾のラストパスは必死に戻ったCB林にギリギリのところでクリアされた。立正大淞南はドリブルによって局面を何度も打開していたが、それでも得点を許さなかった広島皆実。だが、立正大淞南は守備の出足も非常に速く、中盤で相手ボールを奪い取る180cmMF林尚輝(1年)を中心に隙を見せない。広島皆実は前線が孤立していい攻撃ができなかったために、「ボールに関わった選手から取りにいくことをやらせていた」(河江俊明監督)という守備に上手く入ることができず、苦しい展開となった。

 そして後半、準決勝までの11得点中8得点を後半に挙げていた立正大淞南のギアが上がる。5分に俊足FW千川原を投入すると7分、上村の右クロスをファーサイドの上西が頭で折り返し、最後は杉本が右サイドからやや距離の長いヘディングシュート。これがGKの頭上を越えてゴールへ吸い込まれた。さらに13分のゴールが立正大淞南を勢いづける。前線へ入れたフィードは広島皆実のDFがブロックし、GKが捕球体勢に入っていた。だが、立正大淞南はこれを鋭く狙っていた千川原が一気に距離を詰めてGKの前でインターセプト。166cmのFWはそのままGKを抜き去って右足シュートを叩き込んだ。

 14分に杉本が放ったドリブルシュートのこぼれ球に反応した千川原の決定的なシュートは枠上。だが17分、立正大淞南は正面から杉本が右前方へのラストパスを通すと、千川原が右足シュートを決めて3-0とした。立正大淞南は、その後も抜群の運動量で脅威となった杉本と千川原を中心に右サイドで存在感放つ上村らが攻め続けて相手の息の根を止めようとする。それでも広島皆実はボールキープと好パスで攻撃の中心になっていたMF藤井陸(2年)を起点に反撃。29分、藤井陸のパスからMF藤井敦仁(1年)が右足シュートを放つと、終了間際には人数をかけた攻撃から最後はPAへ侵入したFW有國修平(2年)の折り返しを藤井敦が右足で押し込んで意地の1点を返した。

 それでも立正大淞南は揺るがずに3-1で優勝。中央突破とハイプレスという伝統的な特長を発揮して頂点に立った。この強豪校がこだわっているのは「破るため」の質だ。今大会、最終日のみの参加となった南監督は「最近言っているのは『サッカーの質を上げる』ということ。最終ラインからキチンと繋いでビルドアップするのがサッカーの質を上げるじゃない。めっさええところに(狙って)クリアしてそれをかっ去ってシュートとか、1対1の質を上げるとか、(一度預けて)前線を追い越すということがサッカーの質を上げる。『破る』というためにサッカーの質を上げるということを言って、それが今大会できていたという話」と説明する。

 強さを見せつけて優勝した立正大淞南だが、確かに中盤やDFが見せた前線を追い越す動きや1対1で仕掛けた数はかなりのもの。そして奪ったボールを苦し紛れにクリアするのではなく、前方を確認してから蹴り込むなど攻撃の第一歩にする狙いが見られた。狙って前線へ入れて、そのボールを強奪して決めた後半13分のゴールはまさにその狙い通りの得点。奪ってから間髪入れずに入れるパスの精度はまだまだ向上の余地があるが、より相手の守りを「破るため」の狙いが、タレント揃う今年の立正大淞南のサッカーをより強力なものにしていた。杉本は「選手権全国優勝が目標。走らないと勝てないので前線から走って、守備して前線で奪えたら得点にも繋がるので丁寧にやっていきたいと思います」。より日本一に近づくために。立正大淞南はその質を上げ、相手よりも走って、「破る」。

(取材・文 吉田太郎)

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