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[新人戦]広島皆実が中国制覇!転任する指揮官の“ラストゲーム”を延長戦で制す!

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[3.21 中国新人大会決勝 広島皆実高 2-1(延長)瀬戸内高 広島皆実高G]

 第8回中国高校サッカー新人大会は21日午後、決勝戦を行い、ともに広島県勢の広島皆実高瀬戸内高が激突。1-1で突入した延長前半にMF藤井敦仁(2年)が決めた決勝点によって広島皆実が2-1で勝ち、優勝を飾った。

 転任する恩師を最高の形で送り出した。広島皆実は19日の教職員異動人事発表で河江俊明監督が広島国泰寺高へ転任。河江監督にとっては、この試合が広島皆実で指揮を執るラストゲームとなった。DF小林拓真(2年)が「一昨日から河江先生が転勤するとみんな知っていたんで、そこから絶対に負けられないという思いがあった。優勝して胴上げしようという思いがありました」と語り、DF有働周平主将(2年)は「面白くて選手の立場になって考えてくれる、凄いいい先生でした。優勝して皆実高校から国泰寺高校へ行かせてあげようと思っていた。選手の中では河江先生と木村(翔悟)外部コーチふたりいなくなってしまうので、ふたりのために絶対に優勝をプレゼントしようと言っていたのでそれができて良かったです」と笑顔。その思いが延長戦を含む90分間を戦わせ、優勝の原動力となった。

 決勝は試合開始直後にスコアが動いた。2分、広島皆実は左サイドからのスピーディーなパスワークで瀬戸内DFを振り回すと、最後はFW片岡永典(2年)のスルーパスで抜けだしたFW遠藤翔太(2年)が左足で押し込んで先制。早くもリードを奪われた瀬戸内だが11分、相手を見ながら落ち着いてボールを動かすと右クロスのクリアボールをMF浅野嵩人(2年)が落とし、最後はMF川岡謙太(2年)が左足シュートを叩き込む。

 追いつかれた広島皆実はサイドの局面を1タッチを交えたパスワークで打開するなど攻め返す。だが、なかなか中盤でボールを握ることができず、シュートシーンを増やすことができない。一方の瀬戸内は広島皆実DFが捕まえきれていなかったトップ下の浅野が存在感。攻め急ぐことなく、攻撃をスローダウンさせて丁寧にビルドアップしていく瀬戸内はMF中間俊亘(2年)らが正確にボールを動かすと、浅野がシュートシーンに絡んでくる。28分には川岡の突破から浅野が右足シュートを打ち込み、28分には右オープンスペースを突いたSB古御堂光(2年)の折り返しから浅野が決定的な右足シュートを打ち込んだ。

 前半は浅野を自由にさせ過ぎていた部分のあった広島皆実だが、後半に守備から立て直す。河江監督は「前半、相手のトップ下の浅野くんのところが起点になりながら攻撃を展開されたので。あそこはブロック引く形でパスコースだけ切ったら、長いボール増えてくるだろうからその対応をしっかりやれと伝えました」。その狙いどおり、浅野封じを成功させた広島皆実は有働、小林、DF青柳星吾(2年)の3バックが相手のロングボールを封鎖。それでも瀬戸内は4分にクロスのこぼれ球にFW上禅世(2年)が反応して右足シュートを放ち、8分には連動した攻撃から浅野がPAへ侵入する。だが有働のカバーリングで防いだ広島皆実は11分にも右サイドからの決定的なラストパスを小林が阻止して得点を許さない。

 逆に広島皆実は前半に比べてボランチの位置でボールを握れるようになり、片岡やMF安原修平(2年)がドリブルでDFを剥がすなど、ハイサイドを起点とした攻撃から崩しにかかる。そして後半終了間際には決定機を連発。34分には右サイドを切れ込んだMF疋田優人(2年)の折り返しのこぼれを交代出場FW赤川誠(2年)が狙い、アディショナルタイム突入後にはFKのクリアボールを小林が難しい体勢から左足シュート。だがGK佐々木衆(2年)のファインセーブに阻まれてしまう。

 試合は1-1のまま延長戦へ突入。3日間で4試合目、そして延長戦と選手たちにとっては体力面で厳しいものとなったが互いに守備意識が高く、球際で激しいプレーを連発するなど非常に締まった試合となった。その延長前半7分、広島皆実が決勝点を挙げる。右サイドで小林がインターセプトすると、前方のスペースを走る赤川へボールが入る。その赤川がペナルティーアークでフリーとなった藤井へラストパス。これをコントロールした藤井が切り返しでDFのスライディングタックルを外すと、そのまま右足シュートを叩き込んだ。殊勲の一撃を決めた広島皆実のエースナンバー「7」を中心に歓喜の輪が広がる。その後も小林の気迫のヘッドや有働のカバーリングなど最後まで瀬戸内にチャンスをつくらせなかった広島皆実が頂点に立った。

 藤井は「(河江)先生を優勝させたいというのは自分の目標だったし、チームの目標だったので本当に良かったですね。先生のために、最後胴上げしたいとみんな言っていた。最後そのモチベーションがあったから優勝できた」。そして試合後、選手たちは河江監督と木村コーチを胴上げ。笑顔で優勝の喜びを分かちあった。選手に加え、多数の保護者やOBたちから感謝の言葉を伝えられていた河江監督は「今年は広島インターハイもあるし、強い広島皆実高校に。今回の優勝をインターハイ、選手権に繋げてもらいたい。(敢えて求めるならば)もっといろいろなものが判断できるようになってもらいたい。そのためには選択肢をどんどん多く。これはみんなに必要なことだと思います。いろいろな動きをつくって、選択肢を攻撃の中で増やしながら、その中で判断して攻撃できるような。そんな攻撃的なチームになってもらいたい。サッカーは点取った時が一番面白いと思いますから」。
 
 新人戦は県大会、そして中国大会でも優勝。地元・広島で全国大会が開催される総体、またプリンスリーグ中国に向けていい形でスタートを切った。皆実伝統の堅守、そして前線の破壊力を示しての優勝。だが、小林が「全国で見たら全然。まだまだ」と口にするようにまだまだレベルアップが必要だ。「自分たちが優勝できているのは河江先生が攻守の切り替えを徹底させてくれたからと思っているので国泰寺高校で先生はやられるんですけど、インターハイ、選手権で良い報告ができるようにしたいです」(有働)、「まだシーズンはじまったばかり。自分たちの目標は全国でてっぺんを獲ること」(藤井)という目標を果たすために中国王者・皆実はさらに進化を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)

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