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最高の”プレゼント”を後輩たちへ。帝京長岡DF佐々木奈琉が思考する日本一への道筋

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帝京長岡高の右サイドを支えるDF佐々木奈琉(3年)

 右サイドにこの男がいれば、攻撃も守備も間違いなく高いレベルで計算できるが、本人は至って謙虚。まずは目の前にあるハードルを確実に乗り越えていくことが、結果的にその先へと繋がる一番の道筋だということも、十分に理解している。「チームとしては日本一になることはもちろん目標なんですけど、目先の1試合1試合を勝った先に1年間の“お土産”として日本一が来ればいいと思うので、その1試合1試合を成長する場にしたいと思っています」。悲願の日本一を狙う帝京長岡高のクレバーなサイドプレーヤー。DF佐々木奈琉(3年=ビークス石川SC出身)は地に足を付けながら、さらなる高みを目指していく。

 2020年は飛躍の年。1年時はほとんどトップチームの試合に絡むことはできなかったものの、2年に進級すると少しずつ自分の居場所を確立していく。だが、まだ自信を得るまでには至っていなかったという。「言っていいかわからないですけど、去年は自分が足を引っ張らないようにということを考えていて、ずっと3年生の背中を見て付いていくだけで全国まで連れていってもらったので、自分の中で精一杯プレーするだけでした」。

 意識が大きく変わったのは選手権の全国大会。ピッチからスタンドを見上げている内に、新たな感情が湧き出てきた。「選手権のピッチに立ってみて、応援のスタンドを見て、『やらなきゃいけないな』という自覚は芽生えました。帝京長岡はみんな仲が良くて、学年関係なく応援してくれますし、試合に出ていない先輩でも、出ている後輩のために一生懸命サポートしてくれる学校ですから」。

 加えて、プレー面でも小さくない手応えを掴む。「自分はスプリントが特徴だと思っているんですけど、そこで後半になっても相手を追い越す、味方を追い越す動きというのはできたので、そこは手応えがありました」。準決勝までの全4試合にフル出場を果たし、埼玉スタジアム2002の芝生を踏みしめた。

 逆に明確な課題も、全国レベルを知ったことで痛感している。「一番感じたのは山梨学院戦の入りの失点のように、チームがフワフワしている部分を落ち着かせる所の重要性ですね。自分は後ろの選手なので、チーム全体を見て、ゲームを落ち着かせる所は課題です。今まで躊躇していて、ああいう結果になってしまった所もあるので、そこは自分がやらなきゃいけないなと思います」。チームを牽引していく自覚も十分だ。

 今では右サイドを主戦場としているが、高校入学時はより攻撃的な選手だった。「最初はフォワードをしていたんですけど、1年生でBチームに行った時に、古沢先生から『右サイドバックをやらないか?』と言われて、そこから自分の中で掴めた部分があって、やり始めました。よくわからないまま始めて、少しずつ掴めていった感じです(笑)」

「最近は3-5-2のウイングバックをやっているんですけど、やっぱり右サイドがやりやすいですね」。指揮官の慧眼に導かれてスタートしたポジションも、すっかり自分のスタイルに染めながら、チームの中でも確固たる地位を築いてきた。

 全国4強に入った先輩たちを2年続けて間近で見てきたからこそ、その経験を高校ラストイヤーに生かしていく決意も固い。「どれぐらいの強度で毎日を過ごせばいいかということは、去年と一昨年のチームから“プレゼント”としてもらったと思うので、それを土台とした上での積み重ねの部分を、今年もチームとして作っていけば、日本一は見えてくると思います。その“プレゼント”は凄く価値のあるモノですよね」。

 帝京長岡が受け継いでいく、経験という名の“プレゼント”。佐々木は後輩たちへ最高のそれを残すため、今年の1年にすべてを懸けて右サイドを走り抜く。

(取材・文 土屋雅史)

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