名門の新主将が、「3冠」「高卒プロ」を目標に掲げた。DF大川佳風(2年=FC多摩ジュニアユース出身)は、プレミアリーグに所属する流通経済大柏高(千葉)の新主将に就任。「自分たちは3冠を目標としてやっているので、チーム一丸となって、それを自分が引っ張ってやっていければ良い」と意気込んだ。

　流通経済大柏は全国制覇を目標に掲げて第100回選手権に出場。だが、近大和歌山高(和歌山)との1回戦で攻め続けながらも2点目を奪えず、ワンチャンスで追いつかれてPK戦で敗れた。

「率直に言うと悔しいのが一番で、自分としては全国優勝を目指してきて、そこであっけなく1回戦で負けるというのは全然想像していなくて、試合終わった当日も何が起きたか分かっていなくて……」と振り返る。相手がカウンターを特長とするチームであることは理解していた。序盤で先制し、前半で差を付けられなかったことを反省。選手権は学びの大会となった。

「流経に入ってから初めての選手権だったので、他のチームの雰囲気とか会場によって違うというところで自分たちの力をしっかりと発揮しないと勝てないと感じました」

　オフを挟んで新チームがスタート。悔しさはまだ残っているというが、新主将は「1年ってあっという間に終わっちゃうので、切り替えて、でもその悔しい気持ちを忘れずに(経験のある)自分たちがチームに上手く貢献していけたら良い」と前を向く。

　大川はFC多摩ジュニアユース(東京)時代に副主将だったが、主将は初めて。特に前主将は“大人”と評されていたほどの人間性と強いリーダーシップを備えていたMF渋谷諒太(3年)だった。

　新主将も前任者の偉大さを実感しており、「結構荷が重いです」と苦笑する。それでも、「渋谷キャプテンみたいにあんなに完璧にはなれないと思うので、自分なりにチームに寄り添って、声出しやプレーで引っ張っていければいいと思っています」と力を込めた。

　昨年、U-18日本代表候補やU-17日本高校選抜に選出されていた大川は今回、2年生ながら日本高校選抜に選出。「こっちに来るとは正直思っていなかったので嬉しいのもあるんですけれども、ここでやっていかないとプロに近づけない」と気を引き締めて臨んでいる。

　昨年は名門でSBのスタメンを勝ち取り、クロスなど攻撃面の持ち味を発揮。U-17日本代表候補に初招集され、さらにU-18日本代表候補へ個人昇格した。高い評価を得ているが、それ以上のプレーをしなければならないと考えている。

「1を求められていることに対して2とか3とか自分たちは結果を出していかないと生き残れない世界なので、もっと頑張らなければいけないと思っています」。チームだけでなく、日本高校選抜でも結果を出すことにこだわる。

　サッカーIQやフィジカル面といった課題に取り組み、改善すること。そして、「攻撃面では全部負けたくないと思っている」という強みを流経大柏、選抜チームにかかわらず、どの試合でも発揮する。まだ遠い将来のことは考えていないというが、来年絶対にプロになるという目標は変わらない。

「来年プロになることしか考えていなくて、でも流経を出て言った時に自分をずっと見てくれていたエノさん(榎本雅大監督)とかに恩返しというか、ワールドカップに出たり世界で活躍しなければいけないと思います」。

　悔しさを持ってスタートした新シーズン。9日から本格的な活動をスタートする日本高校選抜で選手権のヒーローたちから刺激を受け、学んで流経大柏での活躍、「3冠」に繋げる。　

(取材協力=スフィーダ、『高校サッカー年鑑』)

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(取材・文　吉田太郎)●【特設】高校選手権2021
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