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クラブのレジェンド、澤登正朗監督が就任。新生・清水ユースは「さらに」のチームへ

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「ミスターエスパルス」澤登正朗新監督の下、清水エスパルスユースはさらに良い組織、良い選手を輩出するチームへ

 18日に開幕した第4回 J-VILLAGE CUP U18。全国から強豪が集ってリーグ戦開幕前の腕試しを図る春のフェスティバルには、新シーズンを前に新しい体制を迎えたチームもある。その代表格が、Jユース勢を代表するチームの一つである清水エスパルスユース(静岡)だろう。クラブのレジェンド、澤登正朗氏がユース監督に就任したのだ。

 澤登新監督は1992年のクラブ誕生と同時に清水へ加入。元より静岡の東海大一高(現・東海大翔洋高)で活躍したスター選手は、クラブの象徴的な存在として2005年までプレー。現役引退後は主にサッカー解説者として活躍していたが、09年からは常葉大浜松キャンパスサッカー部の監督に就任し、今年1月までの9年にわたって指導を続けてきた。そんな男が17年ぶりにオレンジのジャージに袖を通し、後進の指導に当たっている。

「コロナの影響でトレーニングができない時期もありましたが、手応えも感じています。ハイプレッシャーの中で強度を出していくところを追求してきて、その成果も少しずつ出てきたと思っています」

 ただ、「まだまだですけどね」とも言葉を続ける。2日目のU-17日本高校サッカー選抜との試合では、前半からボールを支配して優位に進める展開に持ち込みながら、結果としては0-2の敗戦となってしまった。その要因についてはこう分析する。

「最後に点を取るところもそうですが、判断のところに課題が出たと思っています。相手が狙っている位置に立ってしまって、みすみすプレスにハマってしまっていた。あれは個人の判断の部分だと思いますし、もっと上げないといけない」

 試合後には選手個人を呼んで厳格な態度で指導する一幕もあった。

「これまで自分が指導してきた大学生に比べるとやはりまだ子どもの部分はありますから、ぶつける言葉に気を遣う部分はあります。テクニックに関しては非常に高いものを持った選手ばかりですが、彼らがトップに行って活躍することを目標にするなら、まだまだ足りないところが多いですし、『今のままではトップには上げられないよ』とハッキリ伝えてもいます」

 技巧派プレーヤーだったイメージの強い澤登監督だが、テクニックを活かすサッカーを志向しつつも、「上手いだけではダメで、強さもないといけない」とも強調する。

「テクニック+サッカーの思考+フィジカル。それが付いてくるようになってくれば、元々テクニックのある選手は多いので、残り二つをプラスアルファしてあげることで、もっと上でやれる選手になれると思っています」

 昨年のチームも随所に強さを見せる好チームだったが、「リーグ戦の平均シュート数は5、6本で、少ないチャンスを決めて勝つチームだったと思うけれど、もっとボールを持って多くチャンスを作りながら勝ち切るチームを目指したい」と言い切る。それが簡単でないことは百も承知の上で、しかし決意は固まっていると言う。

「良いタイミングでユースの監督になって選手を育ててほしいというオファーをこのクラブから頂いた。自分自身、育成の大切さというのは分かっている。これまでの清水ユースも成功してきたチームだと思っていますが、『さらに』という部分が求められてきている。もっとより良い組織にして、さらに良い選手を輩出できればと思っています」

 大学サッカーで10年近いキャリアを積み上げた元日本代表のレジェンドが、17年ぶりに清水エスパルスへ帰ってきた。その最初のシーズンが、いよいよ始まろうとしている。

(取材・文 川端暁彦)

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