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尚志から世界へ。CBチェイス・アンリはコーチ陣、教職員にも感謝

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シュツットガルト入りするCBチェイス・アンリは、母校・尚志高に感謝

 ブンデスリーガ1部のシュツットガルト入りするCBチェイス・アンリが、母校・尚志高に感謝した。8日に福島県郡山市の尚志でシュツットガルト入団内定会見を行ったアンリは、「(コーチ陣だけでなく、)先生たちにも感謝していますし、色々教えてくれてありがとうございました」とコメント。今年3月に卒業式を終えているアンリだが、改めて恩師たちへ感謝の思いを伝えていた。

 アンリは横須賀市立長沢中1年時に本格的にサッカーをはじめ、尚志では1年時にセカンドチームでプリンスリーグ東北を経験しながら成長。当時は、同学年の選手と比べても技術力、判断力不足は明らかで、アンリのミスで負けた試合もあるという。

 アンリは当時について、「(1年生の頃は)何回もやらかしたりしていたので、寮帰って何回も泣いたりしていた」と微笑みながら振り返る。仲村浩二監督は、セカンドチーム担当の梅津知巳コーチに対し、「無理して(アンリを)使わなくても良いよ」と助言したというが、梅津コーチは「(この素材を)使わないとダメだ」と辛抱強く起用。経験を重ねる中で課題を一つ一つ改善し、大きなポテンシャルを発揮したアンリは、同11月にトップチームが参加していたプレミアリーグEASTに初出場し、最終節で先発出場も飾った。

 地道な個人練習でキックフォームを固めるなど、チーム練習以外でも努力を重ねてきたアンリだが、常日頃から「尚志のお陰でここまでこれた」と強調。会見ではよく怒られていたという梅津コーチや、「第2の親みたいな感じです」という仲村監督に感謝の言葉を発し、学校関係者たちを笑顔にしていた。

 アンリは1年生で早くも全国高校選手権のピッチに立つと、20年2月にU-17日本代表へ初選出された。U-17代表では世代トップクラスの才能たちの中でミスが目立ち、スタッフに「早く帰りたい」と漏らしていたという。だが、徐々に圧倒的な空中戦の強さや対人能力の高さ、正確な右足フィードを発揮する。そして、U-19東ティモール代表との決勝戦でヘディング弾を決めるなど国際大会の「JENESYS2019 青少年サッカー交流大会」優勝に貢献し、そこから自信をつけた。

 ブレイクのきっかけはU-17代表で得た自信。だが、自由な校風の尚志で自立心を養い、自発的に努力できたことも大きい。そして、仲村監督の指導の下、弱点を一定のレベルまで引き上げることを目指す一方、ストロングポイントをとことん伸ばすことができた。

 仲村監督は、時間があればアンリの参加する年代別日本代表候補合宿を視察。「(世界で活躍することを目指すアンリに)協力してあげるのが僕の役目だと思って、できなかったことをこうじゃないかと話すことができたのが良かった」。反省点の共有と改善を繰り返し、その後の成長に繋げた。

 年代別日本代表常連となったアンリは、その経験を尚志に還元。ピッチ内で誰より厳しい要求をし、ピッチ外でも人一倍身体のケアに時間を費やしてチームの見本となった。父・レジナルドさんから「謙虚に、一番良い自分を目指してチームとコーチを尊敬して下さい」と助言されているアンリは、有名になっても謙虚な姿勢を変えずに学びを継続。チームの模範となり、同級生や後輩たちはその姿勢をピッチ内外で学び、それぞれの成長に繋げた。

 最終学年で目標の全国制覇を達成することはできなかったが、県新人戦、インターハイ予選、選手権予選、プリンスリーグ東北の4冠達成。その背中で後輩の目線を高めたアンリは今後も、尚志のために活躍する意気込みだ。

「(ドイツは)展開も速いので、頭を使わないといけない。プレッシングとか大事になる。
ビルドアップするチームが多いので能力を上げないといけないと思いました」。欧州で通用する体作りについても課題に挙げているアンリは、これからドイツや年上のU-21日本代表で挑戦。その現状を「尚志の1年生の時と同じ」と分析する。高校時代同様、自分が下だということを自覚し、学びと挑戦を継続。課題を一つクリアし続け、特長をさらに伸ばして飛躍を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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