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明秀日立が初の関東大会制覇!“力の無い世代”が練習、挑戦続けて「めちゃくちゃ伸びている」

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明秀日立高が関東高校大会初優勝を果たした

[5.30 関東高校大会Aグループ決勝 桐光学園高 1-4 明秀日立高]

 明秀日立が初の関東制覇! 令和4年度 第65回 関東高校サッカー大会が28日から30日まで神奈川県内で開催された。各都県1位によって争われたAグループの決勝(30日)で桐光学園高(神奈川)と明秀日立高(茨城)が激突。明秀日立が4-1で勝ち、初優勝を果たした。

 12年にインターハイ初出場を果たして以降、選手権8強など一歩一歩階段を上り続けている明秀日立が、関東タイトルを獲得した。プレミアリーグ、プリンスリーグ勢の大半が予選に出場しておらず、明秀日立と桐光学園含めて今後へ向けた強化へ重きを置いたチームが多かったことは確か。それでも、日体大柏高(千葉)、山梨学院(山梨)、そして桐光学園という強豪を3連破しての優勝は非常に価値がある。

 萬場努監督は「僕個人としてもデカいです。めちゃくちゃ嬉しいです」。そして、「あまり力が無いと言われていた子たちなので、練習をちゃんとやっているなという印象がありますね。めちゃくちゃ伸びていると思います」。ゴール裏には「挑戦」と記された3つの横断幕。1歳年上のGK谷口璃成(現岡山)やCB長谷川皓哉(現日本大)らの陰に隠れていた世代がトレーニング、今大会期間中も挑戦し続けて成長し、チームの歴史に新たな1ページを刻んだ。

 ともに初めての決勝進出。3-6-1システムの桐光学園は、準決勝からメンバー3人を変更。GKが山田啓太(3年)、3バックは右から平田翔之介(2年)、ゲーム主将のU-17高校選抜DF豊田怜央(3年)、中井丈仁(3年)。小西碧波(2年)と大高颯斗(3年)のダブルボランチで右WB峯岸慧(3年)、左WB齋藤俊輔(2年)、2シャドーが松田悠世(2年)と野頼駿介(3年)、そして1トップを金岡樹(3年)が務めた。

 一方の明秀日立は「ハイパフォーマンスを出し続ける」(萬場監督)ことを狙って3試合先発を固定。4-4-2システムのGKは山谷将斗(3年)で右SB藍原琉星(3年)、CB秋葉洸星(3年)、CB若田部礼(2年)、左SB本橋雅人(3年)、ダブルボランチが青木涼真(3年)と村田楓太主将(3年)、右SH森絢弥(3年)、左SH阿部亮介(3年)、2トップは熊崎瑛太(2年)と石橋鞘(2年)が務めた。

 序盤から強度の高さと切り替えの速さが印象的だった決勝戦。その中で桐光学園が大高のサイドチェンジなどを交えて精度、テンポ良くボールを動かしていた。また最終ラインで豊田が一際存在感を放ち、小西らがセカンドボールを回収。主導権を握って試合を進めていた。

 だが、鈴木勝大監督が「ポゼッションにこだわりすぎちゃうところはウチの課題です。パススピードよりも明秀さんのスライドの方が少し上回ってきた中でハマってしまったかなと。相手にとって怖いのはなんなんだということをもうちょっと整理しないといけない」と首を振ったように、桐光学園はゴールへ向かう姿勢がやや希薄だった。

 一方、徐々に相手のビルドアップに慣れた明秀日立は両SHが高い位置を取り、注目10番MF村田がパス交換でグイグイと前へ。阿部のシュートなど徐々にゴールへと近づいて行くと前半28分に先制点を挙げた。右サイドでの奪い返しから縦へ。そして、この日攻守両面で鋭い動きを連発していた石橋が個でDFの前へ潜り込むと、ラストパスを阿部が右足ダイレクトでゴールへ流し込んだ。

 明秀日立はその後も石橋の縦突破やミドルシュートでゴールを脅かす。桐光学園は後半開始から金岡と中井に代えて今大会2戦連発中のFW宮下拓弥(2年)と右WB杉野太一(1年)を投入。だが、明秀日立は連続ゴールで桐光学園を突き放した。

 後半2分、明秀日立は石橋がPA右でボールを奪い返してマイナスのラストパス。これを村田が右足ダイレクトでゴールへ沈めた。桐光学園は6分に峯岸をU-17高校選抜候補FW ベイリージャスティン勇誠主将(3年)へスイッチ。だが、明秀日立は9分、村田が左サイドから強引にシュートを打ち切り、こぼれ球を熊崎が右足で押し込む。

 明秀日立の萬場監督は「今大会通して獲りたい時に獲れたような感じがあったので、そのような流れがあったのが良かったです。頑張ることは凄くトレーニングやっているし、『走り負けないぞ』や『ぶつかり合いで負けないぞ』はあるんですけれども、上手さとか相手の急所を突いていくということが弱くて県予選はかなり不安定な状態でした。でも、向かっていくというスイッチが入ってきて、自分たちらしく強く戦えているかなというのが今日もありましたね」。0-3とされた桐光学園は11分に松田と左WB加藤竣(2年)を入れ替え、新鋭ドリブラーの齋藤を高い位置へ押し出す。

 前への姿勢が増した桐光学園は宮下の右足シュートなどで反撃。だが、明秀日立は秋葉がヘディングなど跳ね返す力を発揮する。青木らの回収力、また本橋、藍原の両SBのスピードも彼らの強み。桐光学園はベイリーのロングスローも交えてゴールをこじ開けに行くがなかなか1点を奪うことができない。

 明秀日立は22分、熊崎と石橋をFW古内悠ノ進(3年)、FW山賀颯太郎(3年)へ交代。桐光学園は24分に大高と10番MF菅江陸斗(3年)を入れ替える。すると27分、桐光学園は宮下のインターセプトを起点とした攻撃から、切り返しでDFを外した菅江が右足を振り抜く。DFに当たってコースの変わったボールがゴールを破り、1-3とした。
 
 明秀日立は森と左SB今野生斗(3年)を入れ替えるが、桐光学園がボールを支配して迫力のある攻撃。だが、GK山谷やDF陣中心に飲み込まれずに試合を進めた明秀日立は阿部とMF吉田裕哉(2年)を入れ替えた直後の40+1分、山賀からのラストパスで抜け出した村田が勝負を決定づける4点目のゴールを奪った。その後、青木とFW根岸隼(2年)を入れ替えて試合を締めた明秀日立が4-1で勝利。初優勝を喜んだ。

 明秀日立の村田は「明秀日立が常に挑戦と掲げている。今大会も相手のレベルが高かったので自分たちは挑戦していくつもりでチャレンジャー精神を持って臨みました」と振り返る。そして強敵相手に3連勝。阿部は「メンタル的にも強くなれたと思います。自分たちの良さは団結力。勝負強いというか忍耐強いので、やってきたことを着実にやれたと思います」と胸を張った。

 昨年は茨城県内のライバル・鹿島学園高に夏冬の全国大会出場、プリンスリーグ関東1部昇格を許した。その悔しさは忘れていない。関東制覇の自信を加えたチームは、「日本一を目指せるような基準にしたい」(村田)という日常で「もっと伸びて」今年は全国大会で活躍する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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