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注目校・東山は奈良育英と引き分け、3戦未勝利。「自分ら変われるぞと思って」2週間取り組み、インハイへ

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前半36分、奈良育英高MF水流大翔が先制ゴール。インハイの有力校の一つ、東山高は3戦未勝利に

[7.9 高円宮杯プリンスリーグ関西2部第1節 東山高 1-1 奈良育英高 東山高G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2022 関西2部は9日、延期されていた第1節の東山高(京都)対奈良育英高(奈良)戦を行い、1-1で引き分けた。東山は5勝2分2敗の2位、奈良育英は3勝1分5敗の暫定7位で中断期間に入る。

 今年、全国的にも有力校の一つに挙げられている東山は、3戦未勝利でインターハイへ向かうことになった。C大阪内定のU-18日本代表候補MF阪田澪哉(3年)、ともにU-17日本高校選抜で主軸を担ったCB新谷陸斗主将(3年)とMF真田蓮司(3年)をはじめ、昨年度の夏冬全国8強、選手権で3冠王者の青森山田高(青森)を苦しめた経験をしている選手を半数残すが、福重良一監督は「良い時っていうのを忘れてしまっている。失点が毎回あるのがキツいですね。そういう状況を作らせている。当たり前のことをこの2週間、3週間やっていないですよ」と指摘する。

 序盤の3連続ロングスローをはじめ、セットプレーやサイドからの崩しなど相手ゴール前のシーンを再三作っていたが、是が非でもという迫力を欠いてしまい、シュート14本で1得点。セカンドボールを拾う回数を十分に増やせず、相手と競り合うことが曖昧になっていた部分やボールを動かす部分でも、やるべきことが徹底できていなかった。チームが今年掲げている目標は日本一。主将の新谷はまず自身が変わり、「前は行けるなという感覚があったので、それを引き戻して超えて行くこと。下を向かずに自分たちは2週間もあったら自分ら変われるぞと思って、危機感を持って取り組んでいかないといけない」とチーム全員で変わることを誓っていた。

 東山は3-4-3システムでスタート。GKが佐藤瑞起(3年)、3バックは保坂崇人(3年)、新谷、仲里勇真(3年)、右WB沖村丈也(1年)、左WB菊山和椰(3年)、真田と松橋啓太(3年)のダブルボランチ、前線は右から阪田、豊嶋蓮央(3年)、北村圭司朗(3年)が並んだ。

 一方の奈良育英はプリンスリーグで現在首位独走中の近大附高(大阪)に黒星をつけるなど開幕3連勝と好スタートを切ったものの、その後5連敗。悪い流れの中で迎えたインターハイ予選も準決勝で敗れている。この日は出場停止のGK伊藤圭介(3年)に代わって身長155cmのGK瀧川笑玄(2年)が初先発。右SB吉田悠人(3年)、CB奥村央樹(2年)、CB植村翔輝(1年)、左SB西尾駿(3年)、大西陽太主将(3年)と水津煌人(1年)のダブルボランチ、右SH磯貝新之助(2年)、左SH水流大翔(2年)、トップ下が濱上大輝(3年)、1トップは井登奏汰(2年)が先発した。

 奈良育英の梶村卓監督は結果が出ない中、「やるべきことをやれば(開幕3連勝のように)戦えるけれど、やれないとこうなるよと言っていたので。そこを(ここへ来て)気持ちの部分でやっと作り出したかな、徐々にできてきたので戦える部分もあったのかなと思います」と説明する。その奈良育英が「間違いなく(今年)日本を代表するチームだと思っていた」(梶村監督)という東山相手に気持ちの部分含めて戦うこと、前に出ることを徹底して食い下がった。

 立ち上がり、東山は10分間で6本、7本とロングスロー。ゴール前で競り勝つなどあわやのシーンを続ける。また、左DF仲里も高い位置で攻撃に絡んで数的優位を作り、カットインから菊山や北村がシュートを持ち込んだ。阪田も縦へのスピードを示すなど2点、3点挙げてもおかしくないような展開だった。だが、奈良育英は相手セットプレーでGK瀧川が思い切って前に出てパンチし、触れなくてもDF陣が連動してゴールをカバー。クロスバーに救われたほか、瀧川もファインセーブを見せるなどギリギリのところでゴールを守り続ける。

 逆に最前線の井登が粘ってCKを獲得するなどセットプレーを獲得。徐々に中盤で相手の攻撃を引っ掛ける回数やセカンドボールの回収を増やした奈良育英は、水津の好パスなどから磯貝や濱上がハイサイドへ抜け出し、ラストパスやシュートへ持ち込んだ。東山は34分、阪田が抜群のスピードでDFライン背後へ抜け出し、GKと1対1に。だが、右足シュートは左ポストをたたき、先制することができない。

 迎えた36分、奈良育英が先制点を奪う。奥村が自陣からのFKをPAへ蹴り込むと、井登が相手の甘い対応の隙を突いてヘッド。東山GK佐藤が反応したものの、こぼれ球を水流が左足で押し込んだ。我慢強い戦いからもぎ取った1点を喜び合う奈良育英に対し、東山は直後に北村とMF清水楓之介(3年)をスイッチ。だが、攻め切れないまま前半を終えてしまう。

 前半終盤はやや緩んだ部分のあった奈良育英だが、気を引き締め直して後半へ。「今日に至っては特に雰囲気のところは、ここまでやり切れていいないからやろうと言っていました」(梶村監督)という奈良育英は、ベンチ含めて良く声が出ていた。前向きな雰囲気で戦う中、シュートブロックなどゴール前での好守を継続。ポジショニング良い奥村が中心となって弾き返し、左SB西尾が前半の負傷でやや動きの重い注目MF阪田を封じ続けていた。

 後半もボールを握って攻める東山は攻撃性能高い沖村と阪田のポジションを入れ替え、14分には豊嶋に代えてFW中野翔真(3年)をピッチへ送り出す。奈良育英は15分に水流をMF山本浬(2年)へスイッチ。東山は松橋のパスや、真田の中央から割って入っていく動きなどで変化を加え、菊山が左クロスを入れる。だが、再三のセットプレー含めてなかなか相手を飲み込むことができず、真田の左足ダイレクトシュートがポストを弾くなど1点が遠い。

 奈良育英は27分に水津と井登をMF藤岡仙太郎(2年)とFW尾嵜雄太(3年)へ交代。32分のピンチを瀧川の好セーブで逃れる。それでも、東山は36分に阪田と保坂に代えてDF高田竜成(2年)と右WB藤本崇太(3年)を投入すると、この2人を起点とした攻撃から同点に追い付いた。39分、高田が藤本とのワンツーでエンドライン際まで攻め上がり、ラストパス。これを中野、清水と繋ぎ、最後はPA中央の真田が左足ダイレクトで決めて1-1とした。

 奈良育英は直後に吉田と磯貝を右SB竹田秦(1年)とMF山田麻人(3年)へ交代。東山が終盤、コンビネーションで突破するようなシーンを増やしたのに対し、奈良育英も44分に濱上が粘って大西が右足シュートを狙う。アディショナルタイム、東山は後半だけで6本ものシュートを放った真田が2度PAへ抜け出す。だが、GK瀧川や奈良育英DF陣が立ちはだかり、試合終了。1-1で引き分けた。
 
 東山はインターハイまでの2週間で変わり、シーズン当初の良かった時期を取り戻す決意だ。新谷は「東山弱いみたいになっている。結果を残せていない中でどうなんやろと思われていると思うんですけれども、それを跳ね返すくらいのプレーを自分たちは持っていると思う」という。試合後、福重監督と選手、その後選手だけでロングミーティング。不足している部分について、また自分たちのプレーを自信を持って表現することについて再確認した。

 真田は「声を出してやりたいけれど全然できていない。3年生が多く出ているところでもっと熱量出してやる。それが東山」と語り、阪田は「自分たちは新チームになる時に日本一という目標を掲げた中で今、本当に日本一と真剣に思っているのかというのを共有できているのか分からない。もう一回、日本一という目標に向かって共有してやっていきたい」。昨年は現3年生がスタメンの半数を占めていたが、自分たちの力ではなく、先輩たちが必死に支えてくれたからこその夏冬ベスト8だったことも再確認。今気づけたことを前向きに捉え、2週間で変わってインターハイを迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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