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[MOM3998]新潟U-18FW森田翼(3年)_チームに勝利をもたらした悩めるストライカーの今季初ゴールは努力と献身の結晶だ!

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今季初ゴールにアルビレックス新潟U-18FW森田翼が吠える!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.10 高円宮杯プリンスリーグ北信越第15節 新潟U-18 2-0 金沢U-18 デンカスワンフィールド]

 その瞬間。大きな雄叫びがピッチに響き渡る。それもそのはず。ずっと、ずっと、何よりも欲しかったゴールを手に入れたのだから、それぐらいの感情の発露は当然だ。駆け寄るほとんどのチームメイトが浮かべた笑顔も、その1点の価値をより如実に示していたことも、また間違いない。

「素直にとても嬉しいです。今シーズン初めて点を獲れましたし、プリンスリーグでもこれが初得点で、メチャメチャ嬉しかったので、全身に喜びが出ちゃいました。ここまで長かったですけど、やっぱり自分が点を獲ってチームを勝たせたいという気持ちがあったので、ゴールを決められて、チームも勝てたので良かったです」。

 アルビレックス新潟U-18(新潟)の9番を託された、悩めるストライカー。FW森田翼(3年=アルビレックス新潟U-15出身)は3年間のホーム最終戦で、今シーズンの公式戦初得点とプリンスリーグ初得点を同時に記録し、鮮やかに主役の座をさらっていった。

 森田は悩んでいた。長いボールが入ってきたら100パーセントで追いかけ、マイボールにするために100パーセントで身体を張る。守備のスイッチとなる前からのプレスも、常に100パーセントで掛け続ける。

「前線でボールを獲れたらそれが一番なんですけど、自分が前から行って、蹴らせて、センターバックに回収してもらうとか、そういうことは考えています」と自ら語るように、チームへの貢献度は攻守ともに間違いなく高い。

「フォワードはもちろん点も必要ですけど、それ以外の彼自身の良さとして、気迫あふれるプレーだったり、身体の強さでボールを収めることもそうですし、そういうところでチームに凄く貢献してくれています」と森田を評するのは、キャプテンのMF山根成陽(3年)。チームメイトも彼の献身性は認めている。だが、最も求められているゴールという結果が付いてこない。

「シュートのトレーニングのところで、割と力いっぱい蹴ることが多かったんですけど、練習の中で『しっかりコースを狙って』と言ってきた中で、最近は入るようになってきたんです」と明かすのはチームを率いる熊谷浩二監督。地道な練習は積み重ねてきている。あとは、ゴールネットを揺らすだけだった。
 
 1-0でリードして迎えた後半。開始早々の2分に決定的なチャンスがやってくる。MF石山青空(2年)とMF大岩徹平(3年)が丁寧に回したパスはエリア内へ。ゴールに背を向けながらパスを受けた森田は、鋭い反転で前を向くと躊躇なくシュートを選択。ボールはゴールネットへ鮮やかに吸い込まれる。

「『もう絶対自分が決めてやるんだ』という気持ちはありましたけど、練習から『力を抜いてシュートを打て』とコーチから言われていたので、そこをちゃんと力を抜いて打てたことが良かったと思いますし、綺麗な感じで入ったので、『これは練習通りだな』と思って、とても嬉しかったです」。

 ようやく生まれた今季初ゴールに、オレンジの仲間も叫びながら駆け寄ってくる。「この3年間試合に出ていましたけど、点が獲れていなくて苦しい中でもがいていて、いつも練習が終わった後にシュート練習をしていた彼にゴールが生まれたことは、チームメイトとしても凄く嬉しかったです」(山根)。9番の咆哮がスワンフィールドの熱気を切り裂いた。

 チームも2-0で勝利。貴重な勝ち点3を積み上げる。「フォワードは収めるだけでは仕事は務まらないわけで、やっぱりゴールを決めて、チームを勝たせられる選手になりたかったので、今日は良い感じで勝てたので良かったです」。安堵の笑顔を浮かべた表情に、ストライカーの矜持が滲んだ。

 小さくない刺激になっているのが、兄の活躍だという。1歳違いの兄は、明治大でプレーするDF森田翔。中学年代まではアルビレックスに所属しながら、高校からFC東京U-18でプレーすることを選択した、年代別代表も経験している“先輩”はある意味で憧れの存在だ。

「ずっと点を決められなかったので、兄にも『練習から得点を追求していけ』と言われていて、そこは練習から意識していましたし、それでようやく結果が出て嬉しいです。兄が凄く良い影響を与えてくれているなと思う部分もありますし、憧れる存在ではあります。たまに連絡は取っていますね」。いつか追い付き、追い越すのは携えている目標。そのためにも、残されたアルビレックスでの時間をどう過ごすかは、今後にとってもとにかく重要だ。

 発した言葉に力がこもる。「この1点を獲れた感触を忘れずに、次のゲームでもゴールを獲っていきたいですし、その次の試合も、ずっと点を獲り続けて、ストライカーと認めてもらえるようになりたいと思います」。

 一度奪ってしまったら、もうその快感には抗えない。あくまでもこの1点は爆発のきっかけ。森田がゴールを重ねれば、チームも上昇気流に乗って、さらに高い場所へと羽ばたいていくことは言うまでもない。



(取材・文 土屋雅史)
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