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[MOM4031]鳥栖U-18DF山本楓大(3年)_“ヒーロー”にはなり損ねるも、貢献度大の右サイドバックが謙虚に携える成長の手応え

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上下動を繰り返せる右サイドバック、サガン鳥栖U-18DF山本楓大

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.8 高円宮杯プレミアリーグWEST第17節 清水ユース 3-3 鳥栖U-18 アイスタ]

 本人も語ったように“ヒーロー”にはなり損ねたかもしれないが、90分間に4分が加えられたアディショナルタイムも含めて、果敢に右サイドを上下動し続けたそのアグレッシブなプレーは色褪せない。黙々と、力強く、戦うことのできる男の存在は、ある意味でこのグループを象徴しているのではないだろうか。

「自分は左足も結構蹴れるので、カットインもできますし、縦にも仕掛けていけますし、守備も攻撃もできるしと、何でもできるポジションなので、凄くやっていて楽しいですね」。

 今シーズンからトライしている右サイドバックに、楽しさとやりがいを見出しているサガン鳥栖U-18(佐賀)きってのハードワーカー。DF山本楓大(3年=サガン鳥栖U-15出身)が攻守でチームに与える貢献度は、測り知れない。

 常に全力で上がり、全力で戻る。自ら「自分の特徴の1つは何回もスプリントを繰り返せることなので、そこは目標にやっています」と言い切った言葉は伊達ではない。サイドの深い位置で攻撃に参加したかと思えば、危機を察知した途端に踵を返して自陣まで帰っていく。背番号2のプレーエリアはとにかく広大だ。

 際立ったのは左センターバックに入ったDF林奏太朗(2年)が対角に蹴る正確なフィードに走り、攻撃の基点を作るシーン。「練習中から2人で合わせてやっていこうと話しているので、そこは試合中にもうまく出せていると思いますし、絶対良いボールが来るので、信じて走っています」と話す通り、このホットラインの開通はチームにアクセントをもたらしていく。

 ハイライトは2-2で迎えた最終盤の後半44分。相手陣内へ攻め込む流れの中で、MF坂井駿也(3年)からパスが届くと、即座に山本は決断する。「ファーストタッチはうまく決まらなかったんですけど、『自分で縦にえぐったら行けるかな』と思って、縦にポンと出して、あとは身体の力を抜いてしならせて、前に入って、倒れたらPKでした」。土壇場でのPK獲得。勝ち越すための絶好のチャンスを創出してみせる。

鋭いドリブルでPKを獲得!


「凄く嬉しかったですけど、PKは練習していなかったので、駿也に任せました(笑)」。坂井のPKがゴールネットを揺らし、鳥栖U-18はこのゲームで3度目のリードを手にする。残されたのはアディショナルタイムのみ。山本も勝利の“ヒーロー”になることを確信しかけたが、ホームチームが意地を見せる。

 45+4分に今度は清水ユースへPKが与えられ、これを沈められてタイムアップ。3-3。凄まじい打ち合いは、決着が付かず。ほとんど手にしていた勝ち点3はスルリと零れ落ち、鳥栖U-18はドローを突き付けられる格好に。「点を決めた後にしっかり守り切って、『自分がヒーローになれるぞ』みたいな感じだったんですけど、ディフェンスラインの甘さが出たゲームだったと思います」と山本も悔しさを隠せなかった。

 もともと鳥栖U-15時代はセンターバックが主戦場。昨シーズンは左サイドバックでの起用が多かったが、今シーズンは新しいポジションに挑戦している中で、ここまでのリーグ戦では全15試合にスタメンで登場。指揮官を筆頭にしたスタッフ陣の信頼もしっかりと勝ち獲っており、チームメイトの坂井もその成長をこう語る。

「山本は自分たちの代になって力が伸びたかなとは、一緒にやっていて思っていますし、あれだけ走ってくれて、チームのために動いてくれるので、本当に助かっています。自分で剥がせますし、逆に展開できますし、両足で蹴れますし、対人も強くなっていて、1対1になった時に『アイツなら大丈夫だろうな』って信じられる存在ですね」。

 本人も自身の今をポジティブに分析している。「夏のクラブユースで負けて、そこから課題が見つかって、テクニックの追求を練習から意識高くやってきたので、4月の頃よりはテクニックのところが一番成長したと思います。パスアンドコントロールの練習でも、しっかり首を振って、テンポも意識して、毎回そうやっていたら、まだまだですけど上達しましたし、成長したなと実感しました。サイドでハメられた時にワンタッチで剥がしたり、ドリブルで剥がしたりできた時は『おっ!』て思います(笑)」。

 新たなポジションで参考にしているのは、マンチェスター・シティのカイル・ウォーカーとレアル・マドリーのダニエル・カルバハル。「2人とも守備ができますし、攻撃の質も高いですし、どんどんオーバーラップもしていくので、そういう個人戦術のところを良く見ています」と世界最高峰の選手のイメージを、自身のプレーに採り入れている。

 この日の結果に満足しているはずもない。首位を快走してきたチームでここまで試合に出続けているからこそ、目指すべき場所は明確だ。「ここからは1つも落とさずに、全部勝つ気持ちで、最後はファイナルでの優勝を目指して、ここからまた頑張っていきたいですね。攻撃ではアシストだったり、点に絡むプレーでチームに貢献したいですし、守備は対人でボールを奪い切ったり、ディフェンスラインを統率してやっていきたいと思います」。

 ヒーローになるチャンスは、またきっと巡ってくる。今まで通り、黙々と、力強く、戦い続けている限り、スポットライトを浴びる瞬間は、きっと再び山本へと巡ってくるはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
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