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昨年度の青森山田、その10番のように。MF名願斗哉は選手権で履正社を引っ張り、観衆を沸かせて勝つ

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履正社高の10番MF名願斗哉(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)

[11.26 高円宮杯プレミアリーグWEST第21節 履正社高 2-3 静岡学園高 履正社茨木グラウンド]

「日本一を取れる力は自分たちでもあると思っているんですけれども、今日みたいにあんな簡単に失点して守備でヌルいところが出たら勝てないし、まだまだ自分たちの力不足です」

 履正社高のエースで川崎F内定のMF名願斗哉(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)は、敗戦について厳しい言葉で指摘していた。前半に2点を先取しながらも後半3失点。試合終了の笛が鳴ると、名願は中学時代のチームメートで同じくプロ入りする静岡学園高MF高橋隆大(3年、G大阪内定)と手を叩き、その後悔しさを滲ませていた。

 前半は名願のドリブルが止まらず、3度4度と大きく前進。相手が厳しいチェックで止めようとして来る中、入れ替わるように前に出て、ハイサイド、ゴール前へボールを運んでいた。そして、1-0の41分には左サイドからPA内にポジションを取り、FW古田和之介(3年)のラストパスを受けて右足シュート。高橋の寄せよりも一瞬速く振った右足で決め、2-0とした。

 前半は守備面でも献身的なプレスバック。味方と連動して守り、同サイドの高橋に十分な仕事をさせなかった。だが、後半は相手のボランチが抜け出してきたり、右SBが内側のポジションを取ってきたことで履正社は的を絞れなくなって後退。結果、後半は高橋に幾度も前を向かれ、3アシストを許す結果となった。

 後半はほとんどボールを受けることができず、チームもシュートゼロ。選手権予選決勝では延長後半に劇的な決勝ヘッドを決め、課題だったタフさの面での成長を示していた名願だが、この日はチームを勝たせることができなかった。「10番を背負っているからには結果を求められる世界だと思うので、結果にはこだわってやっているので、まだまだこれからかなと思いますね」。よりチームを引っ張る10番になることを誓っていた。

 選手権初戦まであと1か月。名願にとっては待望の舞台だ。2年時に名を上げた名願だが、昨年度は決勝で敗戦。だが、今回の決勝は自らの延長V弾で全国切符を勝ち取った。「去年の思いもあったので、勝てて良かったなと思います。試合の中であまり何もさせてもらっていなかったので結果を残せたのは嬉しかったです」。名願にとって選手権で特に思い浮かぶシーンは昨年度の全国決勝、青森山田高対大津高戦だという。

「去年の決勝がやっぱり。青森山田がシュート1本も打たせずに勝ったというのはめちゃくちゃ印象に残っていますね。飛び抜けて強かったので、自分たちもやり方は違うんですけれどもあそこを目指せるようにやりたいなと思います」。その青森山田の中心にいたのが、10番のMF松木玖生(現FC東京)だ。

「一つのプレーに対する気持ちというのが目に見えて、自分とは違うタイプなんですけれどもチームを引っ張っていける10番なんだなと思います」。誰よりも注目される中、結果を残し続けた松木のように、チームを引っ張って履正社を勝たせること。ドリブルは日本代表MF三笘薫(ブライトン)と比較されるほどだが、加えて、パス、シュートもハイレベルであることを示してチームに貢献する意気込みだ。

 全国大会で対戦したい相手として名前を挙げたのは、その青森山田。「青森山田とやりたいです。高校のうちに1回やりたいなと言うのがあるので」。互いに勝ち上がれば準決勝で対戦。その他、夏の王者・前橋育英高などライバルを乗り越えて目標を達成することができるか。

 平野直樹監督は「斗哉にやって欲しいことは右からのクロスでヘディング決めること、カットインしてからイン巻きのシュートを決めること」と要求。昨年のプレミアリーグプレーオフの圧倒的なゴールなど指揮官を驚かすようなプレーをしてきた10番は、「『コイツ、凄えな』とか『見ていて楽しいな』という思ってもらえるようなプレーをできるように。結果という形でチームを勝たせられるように、チームが日本一になるためにできることは全部やろうと思います」。今冬の主役候補である10番は、観衆を沸かせてゴールと白星を積み重ねる。

(取材・文 吉田太郎)
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