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桐生一が開幕3連勝に迫るも…矢板中央が0-2から追いつき、今季初の勝ち点1獲得

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後半44分、矢板中央高CB梶谷皇光斗が同点ヘッド

[4.15 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第3節 矢板中央高 2-2 桐生一高 矢板中央東泉G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関東1部は15日、第3節を行った。矢板中央高(栃木)対桐生一高(群馬)戦は桐生一が2点を先取したが、矢板中央が追いついて2-2でドロー。勝ち点1を分け合った。

 桐生一が開幕2連勝、矢板中央が開幕2連敗で迎えた北関東の強豪校対決。試合を通して雨の降り続く中で行われた一戦は、桐生一が先制点を奪う。前半10分、10番MF小野剛史(3年)の展開を起点にサイド攻撃。最後はゴール前の混戦からFW篠原一樹(3年)が3試合連発となるゴールを決めた。

 序盤からボールを保持していた桐生一の攻勢が続く。相手の守備ブロックの外側でボールを動かす一方、J注目のCB中野力瑠主将(3年)が精度の高いミドルパスを連発。中盤で浮いた小野とMF小林昂立(2年)に次々とボールが入る。そして、キープ力の非常に高い2人が失わずにボールを繋ぎ、MF能崎大我(3年)の推進力などを活用した攻撃。だが、なかなかゴール前の質が上がらない。

 矢板中央は構えて守りながら、入ってくるボールを出足の速いCB庄司碧月(3年)や脳震盪から先発復帰したMF井上拓実主将(3年)らがインターセプト。31分には、左SB小関大翔(3年)の縦パスでMF鳥塚翔真(3年)が抜け出す。またショートカウンターからシュートへ持ち込むシーンもあった。失点後受けに回ってしまっていたが、焦れずに守り続けるうちにバランスも向上。指揮を執った金子文三コーチが「(精神的にゆとりが出て)『大丈夫』が積み上がると、プレッシャーが掛かり出した」と説明したように、自信とリズムを取り戻してハーフタイムを迎えた。

 後半立ち上がり、矢板中央の圧力が増す。良い形でボールを奪い、ショートカウンターやセットプレーからフィニッシュへ持ち込む。特に左SH鳥塚翔真(3年)の身体の強さを活かしたボールキープや守備が利いていた。ゴールキックから徹底してパスを繋ごうとする桐生一に対し、矢板中央は前からの守備でパスを封じようとする。だが、桐生一の中野は狙われている中でも30~40mの正確なキック。なかなか攻めきることができていなかったことも確かだが、相手に飲み込まれずに試合を進めていた。

 すると26分、桐生一は敵陣左中間でFKを獲得。これを左SB深澤拓夢(3年)が左足で蹴り込むと、ゴール前へ飛び出した小野が1タッチでゴールへ沈めた。昨年からレギュラーの小野は待望のリーグ戦初ゴール。リードを2点へ広げた。

 流れを引き寄せていた矢板中央にとっては痛恨の失点。だが、ホームチームの気持ちは落ちない。188cmGK大渕咲人(3年)のファインセーブなどで失点を阻止。桐生一も中野が相手FWをねじ伏せるように止め、183cmボランチMF清水大嗣(3年)が前へ出て跳ね返すなど無失点を続けていたが、ミスによる失点から追いつかれてしまった。

 32分、矢板中央のロングフィードに対し、桐生一はCB2人が弾きに行くが、触れずに後方へ流れてしまう。これを拾ったFW香崎青空(3年)が右前方へラストパス。最後は登録154cmの交代出場FW堀内凰希(2年)が右足で流し込み、1点差とした。

 桐生一の中村裕幸監督は「2-1になった1点が全てだと思います」と指摘。対して矢板中央は堀内の2試合連続ゴールで勢いづいた。残り時間が少なくなる中、CB梶谷皇光斗(3年)が気迫の攻撃参加で1度と2度と攻め上がる。そして44分、矢板中央は左サイドからの攻撃でCKを獲得。自分たちで盛り上げる中、右SB岡田獅央(3年)が右足でボールを蹴り込む。すると、ファーサイドの梶谷が戻りながらのヘッドを見事に決め、土壇場で2-2とした。

 試合はこのまま引き分け。2-0から追いつかれ、勝ち点2を落とす形となった桐生一だが、開幕3試合で2勝1分と前向きな結果だ。チームの目標は1年でプレミアリーグへ復帰すること。中村監督は「(昨年プレミアリーグを初経験し、)僕らの基準が上がったことも大事なんですけれども、選手たちにも頑張ればいけるんだというところに居続けたいなと。トップトップの選手層がごっそり来る訳ではない。みんなで目指して身近なものにしたいなと思います」と語る。この日はプレミアリーグの経験者である中野や小野が違いを示す動きを見せていたが、選手同士で経験を受け継げる間にプレミアリーグへ。そして、チームの土台をより高めていく。

 一方の矢板中央・金子コーチは、プレミアリーグを経験してきた相手選手たちを慌てさせられなかったことを認める。だが、「やってきたことを試合で出してくれた選手たちに感謝したい」。そして、「リーグは(3戦未勝利と)厳しい状況ですけれども、やるべきことをしっかりとトレーニングしていれば彼らは必ず大きく成長するチャンスが来るし、それを信じて厳しいトレーニングとかをやるだけなので。個人の育成を念頭に置いた上で、選手権で勝つというところは目指しているところです」。新チーム発足から結果の出ない時期が続いても、選手たちは日々できることに取り組んで勝ち点1を奪取、先を見すぎずに日常から自力をつけて、これから必ず輝く。

(取材・文 吉田太郎)
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