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注目エース離脱も進化への「良いきっかけに」。市立船橋が一体感のある戦いで待望の今季初白星

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一体感を持って戦った市立船橋高が今季初白星

[5.21 高円宮杯プレミアリーグEAST第7節 市立船橋高 2-0 前橋育英高 千葉県フットボールセンター]

 市立船橋高(千葉)が待望の今季初白星を飾った。20日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EAST第7節で前橋育英高(群馬)と対戦した市立船橋は、CB五来凌空(3年)とFW岡部タリクカナイ颯斗(2年)のゴールによって2-0で勝利。勝ち点3を獲得し、順位を7位へ上げている。

 市立船橋はここまで5分1敗。黒星が重なっていた訳ではないものの、勝ち切れない試合が続いていた。加えて、前節負傷したエースFW郡司璃来(3年、22年U-17日本代表)が離脱。今季3度の同点弾でチームを救ってきた10番の不在は間違いなく痛い。それでも、MF太田隼剛主将(3年)が「大変ですけれども、良いきっかけになったと思います」と語ったように、名門はチームのピンチを変わるきっかけにして2位の前橋育英を撃破した。

 前半からボールを保持した市立船橋はなかなか差し切れない展開だったが、前半38分にセットプレーでスコアを動かす。MF森駿人(3年)が獲得した左CKを太田が蹴り込むと、味方との連係でマークを外した五耒が強烈なダイビングヘッド。この一撃がU-17日本代表GK雨野颯真(3年)の守る前橋育英ゴールを破った。

 一方、前橋育英は前半、速攻中心の戦いだったが、後半はスピーディーにボールを動かす回数が増加。攻撃にリズムが生まれる。2分にMF篠崎遥斗(3年)がDFの股間を通すドリブル突破からチャンスを演出すると、16分には交代出場のMF黒沢佑晟(2年)、篠崎、MF山崎勇誠(3年)が3連続シュートを打ち込む。

 だが、市立船橋はゴールを許さない。太田が広い視野でチームをコントロールし、強度を発揮。この日、躍動したMF秦悠月(3年)が縦横無尽の動きでインターセプトに貢献する。また、球際の攻防で迫力のある動きを見せていたU-17日本代表候補左SB内川遼(3年)、右SB佐藤凛音(3年)が対人守備の強さを随所で披露。そしてCB宮川瑛光(3年)と五耒の両CBが着実に相手の攻撃を跳ね返すと18分、敵陣右サイドでの奪い返しから秦がクロス。これを岡部が頭で合わせて2-0と突き放した。

 市立船橋は今年、下級生時からの公式戦経験者が多い世代。試合で球際・切り替え・運動量の三原則を徹底することに変わりはない。だが、太田が「チャレンジしないと成長はないな、とみんなで話していた」と説明したように、繋ぐこと、サボらずポジションを取ることも貪欲に求めてプレミアリーグでも攻撃的な戦いで強敵と渡り合っている。

 なかなか結果が出ない中で原点回帰。「ベースの部分が緩くなってしまっていたんで、もう一回しっかり球際・切り替え・運動量をしっかりやろうという中で、プラスアルファでやってきた攻撃も出せればと一週間やってきた」(太田)。郡司の離脱もあり、各選手がより一体感と責任感を持って戦ったこの日は、三原則を表現し、攻守に連動性もあった。加えて、郡司の代役として初先発した岡部が「いるメンバーで次誰が出てくるんだという意味合いもあった。出場機会得て、ボール収めて、後半点数を取って、とやってくれた」(波多秀吾監督)。チームの危機を各選手が成長に繋げた。

 一方、上位争いを演じている前橋育英だが、山田監督が「(まだまだ)力が無いので。精度とかパスワークでもどこかがズレちゃう」と指摘する状況。ボールを保持して動かし続けていたものの、細かなズレによって、流れを遮断してしまっていた。それでも、交代出場FWオノノジュ慶吏(2年)がその推進力で攻撃の強烈なアクセントに。終盤、前橋育英は決定機を連続で作り出していたが、フィニッシュの精度を欠いて市立船橋GKギマラエス・ニコラス(2年)に阻まれてしまった。

 市立船橋は気持ちが前のめりになりすぎて、2-0の状況でも前からプレッシングに。終盤は失点してもおかしくないようなシーンが続いたことは反省点だが、それでも気持ちが周囲に伝わるような戦いを貫き、今季初の無失点で勝ち切った。ここから次節・昌平高戦へ向けた一週間が大事になるが、波多監督は「しっかりともう一回締めて。勢い良くとかノリでというものも持ちながら太田が締めたり、内川が締めたり自立してきるんじゃないか。(インターハイや選手権で日本一を取る)本当にチャンスがあるような子たちだと思うので、しっかりと一戦一戦積み上げてそこへ向かえるように」と太田、内川を中心に意識の高い世代に期待する。

 太田は「中断前ホーム最終戦で、あんな応援をずっとしてくれていたので、絶対に勝たないといけないとずっと思っていた。これまでの試合だと苦しくなると郡司任せになるというのがあった中で、今日は周りでみんなで連動してというプレーが結構あった。郡司がいる時にできれば郡司も活きるし、周りも活きるのかなと思います。しっかりと準備をし直してもっと質高いサッカーができるように」と引き締めた。この日よりもより質、強度も高い戦いを続けて、郡司が戻ってきた時にスケールアップしたチームになること。間もなくスタートするインターハイ予選でも厳しい戦いが予想されるが、必ず勝ち抜いて日本一への挑戦権を獲得する。

(取材・文 吉田太郎)
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