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「1点の重み」を理解し、徹底する力、DFラインの安定感も向上。東山がG大阪ユースを撃破!

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前半38分、東山高の1年生CB上山泰智が決勝ヘッド

[6.24 高円宮杯プリンスリーグ関西1部第8節 東山高 2-1 G大阪ユース 東山高等学校総合グラウンド]

 今年も力をつけてきた東山が、G大阪ユース撃破――。高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関西1部は24日、第8節1日目を行った。9位・東山高(京都)と8位・ガンバ大阪ユース(大阪)との一戦は、東山が2-1で勝利。5試合ぶりの白星を勝ち取った。

 東山は昨年度の全国高校選手権で準優勝。プリンスリーグ関西でも2部から1部へ昇格した。だが、MF阪田澪哉(C大阪)ら主力のほとんどが卒業した今年のリーグ戦成績は開幕6試合で1勝5敗と苦戦。公式戦で勝つことの難しさ、現実を突きつけられる結果となった。

 だが、チームは苦しい戦いとなったインターハイ予選で耐えて、京都連覇。福重良一監督は「結果も出たのでちょっと良くなってきている。彼らの良さも出てきている」という。前節は終了間際の失点でドローに終わったが、今節は強敵・G大阪ユース相手に勝ち切った。

 序盤から相手にボールを保持される展開となった。G大阪ユースは中軸のMF宮川大輝(3年)と、GK荒木琉偉(1年)がU-17日本代表としてU17アジアカップ出場中。また怪我や体調不良者が出ており、今季6得点のMF和泉圭保(3年)もベンチから外れていた。それでも、余裕のあるボールコントロールが印象的なMF森田将光(2年)をはじめ、個々の技術力が高く、東山の選手を寄せ付けずにボールを動かしてゴールへ迫っていく。

 東山は序盤、G大阪のパスワークの速さについていけなかった。だが、ゴール前で我慢し、1チャンスを活かして先制する。前半14分、自陣から敵陣中央へロングボール。G大阪DFがゴール方向を向いて処理しようとしたが、東山のFW宇野隼生(3年)が強引にDFと身体を入れ替える。そして、間髪入れずに右足シュート。これがGKの頭上を越えてゴールを破り、先制点となった。

 G大阪は最終ラインからボールを運ぶ形で反撃。MF武井遼太朗(1年)が右サイドでボールを収め、質の高いラストパス、ドリブルを繰り出すなど崩しの中心になっていた。だが、相手のスピード感に慣れた東山は攻撃に対応して奪い返し、ボールを保持する時間を伸ばす。MF古川清一朗(2年)、MF三日月澪青(3年)のダブルボランチが守備面含めて健闘。なかなか崩しにまで持ち込むことはできなかったが、切り替えの速いG大阪のプレッシャーの中でもボールを繋いで逆サイドまで動かし、縦パスを通すシーンもあった。

 そして、本来のSBではなく右SHとして起用された足立康生(3年)が力強い突破からクロスを上げ、ロングスローを投げ込む。また、左サイドではMF沖村大也(2年)がタメを作り、大型左SB志津正剛(3年)がダイレクトでクロスを上げ切っていた。

 ゲーム主将の志津は、「時間帯、時間帯で割り切るところやボールを持つところがチームとして統一できていると思う」。シンプルに試合を進めていた序盤からボールを保持する時間を徐々に増加。新チーム結成当初に比べてやれることを増やしているチームは、繋いで剥がすことにもチャレンジして追加点を目指した。

 東山に攻め返されるシーンの増えていたG大阪だが、前半35分、同点に追いつく。武井が自ら獲得した右CKを左足で蹴り込む。これがニアの東山DFに当たってゴールイン。1-1とした。だが、東山はその2分後、左サイドから足立がロングスロー。ニアでCB海老原雅音(3年)がそらすと、ファーサイドで詰めていたCB上山泰智(1年)が頭で勝ち越しゴールを決めた。

 G大阪ユースは正確かつスピーディーにボールを動かし続け、個の力でDFを破るFW加藤倖太(1年)や、攻守に献身的な動きを続けるFW岡本陽向(3年)がゴール前へ。だが、東山はDF陣が最後の局面で身体に当て、GK二川陽翔(3年)がファインセーブを見せるなど得点を許さない。

 東山の福重監督はチームの結果が出てきている要因としてDFラインの安定を挙げる。「ここが安定してきたのが大きいと思います」。この日はチームリーダー同等のメンタルの強さを持つという1年生DF上山が堂々のプレー。チームを鼓舞する声と対人能力の強さが印象的なCB海老原、選手権優秀選手で左SBへコンバートされた志津、スピードのある守備を見せる右SB尾根碧斗(1年)とともにG大阪の攻撃に粘り強く対応していた。

 G大阪は森田とMF大倉慎平(2年)が高い位置でボールに絡み、押し込んでいたが、抜け出したFW中積爲(1年)の左足シュートが枠を外れ、またラストパスがわずかにズレるなど決め切ることができない。G大阪の町中大輔監督は「ボール握れてゴール前まで行けるけれど、最後のところで点を取れない。(課題は)両ゴール前の質です」と指摘。一方の東山は守備意識高く守り続ける。そして、奪ったボールを前線に入れ、沖村のキープなどで幾度も相手を押し返していた。

 この日は東山も怪我のMF濱瀬楽維主将(3年)らを欠く陣容。だが、苦しい時間帯でもチームは崩れなかった。志津は「苦しい時に耐えて1点取ったり、1点の重みが徐々に分かってきて、ボールを大切にするとか、そういうところで前と違って考えるようになったと思います。(また、) 徹底できているところが前勝ち切れなかった時期と違うと思います。(特に守備陣は)真ん中2人が試合中ずっと声をかけてくれて、二川も集中切れている時に声をかけてくれて、最後まで集中力切らさずにできている」。1点リードを守り抜き、今後へ弾みをつけた。
 
 プリンスリーグもう1試合を挟んで次はインターハイ。昨冬、先輩たちがあと1勝にまで迫った日本一に挑戦する。「まずは一戦一戦を大事にして、でも優勝することが目標で、その中で自分たちができることを精一杯やって勝っていくだけです」(志津)。簡単には結果は出ないかもしれない。福重監督も前線の攻守など課題を指摘し、「まだまだです」と厳しい。それでも、1点の重みを理解して表現、徹底できるようになってきたチームは、一つ一つ積み重ねて昨年超えを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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