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[プリンスリーグ九州2部]小久保悟監督就任の鹿児島が粘り強く戦い、飯塚とドロー。鹿児島城西で選手権準Vの名将とともに目標達成を目指す

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鹿児島高CB五百路晴翔主将(右)が飯塚高FW大園治慈のシュートをブロック

[10.8 高円宮杯プリンスリーグ九州2部第13節 飯塚高 1-1 鹿児島高 飯塚高G]

 8日、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 九州2部第13節を行い、3位・飯塚高(福岡)と4位・鹿児島高(鹿児島)との一戦は1-1で引き分けた。

 鹿児島がアウェーで勝点1をもぎ取った。鹿児島城西高(鹿児島)監督として08年度の選手権準優勝、同インターハイ8強、選手権鹿児島県予選3連覇などを記録し、FW大迫勇也(現神戸)らを育てた小久保悟監督が今年4月から鹿児島監督に就任。名将の下で新たなスタートを切った集団はこの日、やるべきことを必死に表現した。

 立ち上がりから飯塚がボールを支配。10番MF溝口敢大(3年)らがスピードを意識しながら素早くパスを左右へ繋ぎ、前線の選手が動き出しとスプリントを繰り返す。そこへ岡山内定CB藤井葉大主将(3年)やCB坂本海凪太(3年)からロングボール。前からのプレッシングも速く、相手にほとんど攻撃機会を与えずに連続攻撃を繰り出した。だが、鹿児島がファーストチャンスをモノにする。

 前半10分、鹿児島はMF藤山勇陽(3年)が右へ展開。そのまま動き続けてGKとDFの間を狙うと、MF谷崎亮音(3年)のラストパスを右足で左隅へ流し込んだ。この日、シャドーの位置で巧みなボールタッチと身のこなしを見せていた藤山のゴールで1-0。藤山は14分にも敵陣での奪い返しからGKのポジションを見て、クロスバー直撃のロングシュートを放った。

 鹿児島は先制後、攻撃面も好転し、落ち着いてボールを繋ぐシーンが増えた。馬力のあるFW有木翔真(3年)と藤山にボールが収まり、コンビネーションによってサイド、中央からの崩しにチャレンジ。藤山の落としをMF谷山航琉(3年)が右足で狙うなど優勢の時間帯を続けた。

 だが、流れの良い中で失点。25分、飯塚は連続攻撃から期待のドリブラー、MF永田朔太郎(2年)の左クロスをFW大橋翔太(1年)が頭でゴールへ叩き込む。この日、推進力やポストワーク、スルーパスなど異質の動きを見せていたルーキーがリーグ戦初ゴール。鹿児島はゴール前で人数が揃っていたものの、このシーンでは緩さが出てしまい、同点に追いつかれてしまった。

 飯塚は怪我のCB坂本が30分限定出場だったほか、主軸数人が欠場中。注目FW原翔聖(3年)が右SBを務める状況だった。それでも、流れを好転させ、33分には藤井の左足FKが枠へ向かう。これは鹿児島GK濱川大翼(3年)に阻まれたが、その後も原翔が攻め上がりからクロスを上げ切り、FW大園治慈(3年)が縦パスで抜け出しかける。だが、「小久保先生からも個人では負けるなという話があった」という鹿児島CB五百路晴翔主将(3年)がいずれもギリギリのカバーリング。鹿児島はその五百路やCB冨田友羽(3年)、MF福田敬斗(3年)を中心に、各選手が際のところで一歩深く入ってボールを奪い切ることやチャレンジアンドカバー、細かなポジション修正などの部分から徹底しようとしていた。

 ミスを突かれてピンチを迎えたシーンや、攻撃で慌ててチャンスを逸するシーンも。だが、小久保監督が「よう辛抱して頑張ったと思います。攻撃の部分ではもうちょっと組み立てて後ろから行ける形を増やさないといけない。でも、ゴール前で体を張ったり、頑張ったかなと」と話したように、GK濱川の好守などで1-1を持続する。一方の飯塚は中辻喜敬監督が「ずっとですよ。今シーズン、常に」と言うように、出力を出して好内容のゲームに持ち込みながらも、得点、白星に結びつけることができていない。

 この日も技術力の高さや走力、連動性、藤井を中心とした堅い守りなど力を示しながら、後半に停滞。逆に相手のオープン攻撃に押し返されてしまう。鹿児島は30分、デザインされた右CKからファーサイドの冨田が決定的な右足シュート。だが、飯塚GK松崎鴻毅(3年)が素晴らしい反応でシュートを阻止する。互いに攻め合う中で迎えた43分、飯塚は前線へポジションを移した原翔がバイシクルショット。だが、ここでもGK濱川ら体を投げ出して守る鹿児島守備陣が食い止め、1-1のまま試合を終えた。

 1部の昇格争いは無敗首位の熊本U-18(熊本)が優位な状況。だが、1部からプレミアリーグへ昇格するチームが出てくれば、2部1位以外のチームにも昇格のチャンスが出てくる模様だ。現在、2部は1試合消化の多い2位・宮崎日大高(宮崎)を同勝点の飯塚、勝点2差の鹿児島が追う状況。鹿児島は1部昇格、全国大会出場を掲げる選手たちに対し、小久保監督がそのための基準を求めてきた。

 小久保監督は鹿児島城西で監督を退いた後、顧問のいないボクシング部を担当。全国2位となった選手が在籍していた21年には、ボクシング部顧問としてインターハイに帯同していたという。いつかサッカーの世界へ戻ることも考えていた中、縁があって鹿児島へ。選手たちの鹿児島で優勝したい、1部へ昇格したいという目標を聞いた指揮官は、原理原則の部分からやるべきことを伝え、チームのレベルを引き上げてきた。

 鹿児島市内の中心、鹿児島中央駅から徒歩圏内に位置している鹿児島は、生徒数1500人を超えるマンモス校。県内上位の英数科など学業にも力を入れており、一つの部活動に特化した強化体制がある訳ではない。サッカー部は地元・鹿児島の生徒たち中心で、主に土のグラウンドで活動。小久保監督は担任、体育の授業も持ちながら指導している。

 五百路は当初、実績のある小久保監督就任に驚いたというが、「(樺山市基前監督からも多くを教わったが、小久保監督は)凄く経験のある方なので、練習から色々なことを教えて頂いている。選手権では神村(学園)を倒して優勝するとやっていて、そのためには走り切ることだったり、今日の試合みたいに粘り強く守備することが大事というのをチーム全体として教えて頂いたので、そこを持ちながら、もっと決定力という部分をチームとして上げて行って、選手権とプリンスあと2試合と頑張らないといけないと思う」と語る。

 鹿児島は「サッカー部の子たちが学校の中心になって、という思いはあります」という小久保監督の下、まずはピッチ内外の取り組みでより応援されるチーム、学校の中心になれるチームを目指す。これまでは新人戦で九州大会8強を経験しているが、全国大会出場は無し。結果も期待されている中、先を行く昨年度選手権3位の神村学園高や鹿児島城西、伝統校の鹿児島実高に追いつき、追い越していかなければならない。小久保監督もまずは県準決勝、決勝へ行くチームを目指して強化した上で、「やっぱり全国大会に出たいですよね。全国大会に連れて行ってあげたい」と力を込める。

 選手たちも今年、歴史を変える意気込みだ。五百路は「新しく小久保監督になって、この代で選手権全国大会に出る。鹿児島高校、まだ出場したことがないので、ここで自分の代で出れるようにこの1年間やってきているので、3年生、2年生、1年生、全部の力を合わせて頑張りたい」と誓った。名将就任の注目校が選手、コーチ陣一体となって目標達成に挑戦する。

FW大迫勇也(現神戸)ら育てた小久保悟監督が今年4月から鹿児島高を指導する

鹿児島高の目標は鹿児島制覇、プリンスリーグ九州1部昇格だ

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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