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「ロス五輪への推薦状」第7回:J1ベンチ入りを経験した福岡U-18のレフティーMF岩永創太。新たな武器を磨いて躍動中

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アビスパ福岡U-18のMF岩永創太が新たな武器のドリブルで躍動中

 2028年ロサンゼルス五輪まであと5年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 一度、ボールを持ったら簡単には奪われない。大分U-18(大分)との一戦で右サイドから切れ味鋭いドリブルを繰り返していたのが、アビスパ福岡U-18のMF岩永創太(3年)だ。

 キレのあるプレーは現役時代トップチームでドリブラーとして活躍し、8月から正式にチームの指揮を執る久永辰徳監督も認めるほど。「調子が凄く良い。テクニックがありますし、スピードもあるので相手は止めづらいんじゃないかな。個人での打開で、相手と拮抗したゲームで違いを作ってくれる。プリンスリーグでは1対1をやれば、ほとんど打開できるレベル」と評価する。

 また、本人が「いつも練習ではプッシャーが速い中でやっている。練習中はハイスピードでずっと仕掛けて、試合では少し落として仕掛けているので周りがよく見えるというか、仕掛けやすい」と明かす通り、ドリブルの秘訣は落ち着いた状況判断にある。相手が縦を切れば、中へと侵入して左足でシュートやパスを狙う。相手が中を切れば、そのまま縦を突破し、クロスを上げる。判断よくコースを使い分けたドリブルで、この日も立ち上がりから福岡の攻撃を力強く牽引し続けた。

 チームへの貢献は縦横無尽な仕掛けだけに留まらない。「(相手の)7番はプロに上がるじゃないですか。昔から知っていたので、負けたくない気持ちがあった」。言葉通りの負けん気を感じさせる激しい守備で、大分FW木許太賀(3年)のカウンターも阻止。チームは0-1で敗れたが、試合を盛り上げた主役の一人だったのは確かだ。

 元々はスルーパスが売りのサイドハーフ。今年6月にトップチームで2種登録され、7月に行なわれたJ1第21節の湘南ベルマーレ戦ではベンチ入りを果たした。憧れだったJリーグデビューが目前にまで迫ったがピッチには立てず、痛感したのはプロサッカー選手との差だったという。「信用できる選手でないと出られない。お金がかかっている試合なのに、そこにかける想いが足りなかった。笑顔が売りなのですが、止めておいた方が良いかなと思って(笑顔を)出せなかった」。

 プレースピードが速いトップチームの中では光る物がなければいけない。武器を作ろうと、トップチームのベンチ入りを経験してから、取り組んでいるのがドリブルだ。まだ意識し始めてから公式戦は3、4試合ほどだが、「もっと仕掛けろ」という指揮官の後押しもあって、すぐにピッチで躍動できている。トップチームに同じレフティーで右サイドを主戦場とするMF紺野和也という良いお手本がいるのも、彼にとって好都合だ。

「観客を盛り上げたい。抜け切ってシュートまで行きたい」。そう笑みを浮かべる岩永は今後も新たな武器を磨き続け、プロの舞台で躍動する日を狙っていく。

執筆者紹介:森田将義
1985年、京都府生まれ。10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動。2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。現在は高校年代を中心に育成年代のサッカーを取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェスト、サッカークリニックなどに寄稿している。主な著書に「ブレない信念 12人が証言するサッカー日本代表 鎌田大地の成長物語」(ベースボール・マガジン社)
森田将義
Text by 森田将義

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