[12.17 MIZUNO CHAMPIONSHIP U-16準決勝 尚志高 1-1(PK4-5)大津高 時之栖うさぎ島G]

　全国の強豪16校の1年生が日本一を争う「2023 MIZUNO CHAMPIONSHIP U-16 ルーキーリーグ」は17日午後、準決勝を行った。大津高(九州2、熊本)が1-1からのPK戦の末、5-4で尚志高(東北1、福島)に勝利。19年大会以来となる決勝進出を果たした。大津は初優勝を懸け、18日の決勝で鹿島学園高(関東3、茨城)と戦う。

　大津は宮崎祐介監督が「あれだけ前半劣勢で、ああいう嫌な失点の仕方でしたけど、良く崩れずに。タフになったなっていうのは選手を見ながら感じました」と成長を驚く戦いぶり。苦しい戦いで流れを変え、わずかな差で強敵を上回った。

　前半13分、尚志が先制点。後方からボールを動かす大津に対し、“回させていた”尚志はボランチの位置から鋭くCBにアプローチしたMF小曽納奏がインターセプトし、ゴールを破る。

　その尚志は、推進力のある動きを見せていた右SB榎本司と左SB木村心貴の両DFが味方選手を追い越していく動きを連発。そしてMF阿部大翔、小曽納の配球や両SBのラストパスなどから力強いアタッカー陣が相手ゴールを脅かした。

　だが、大津は「今大会を通じて、声を人一倍出してチームを引っ張って、全体が強くも明るくもなるようにしています。(トレーニングで水戸内定の碇)明日麻さんや(稲田)翼さん相手に抑えるところを意識してたから、経験が繋がって(CB2人の)連係も良くなってきている」というCB村上慶とCB松野秀亮がゴール前で相手の攻撃を食い止める。また、前半終了間際には、GK篠原伊吹が相手DF木村の決定的なヘッドをファインセーブ。流れが悪くても連続失点しないチームは1点差で前半を折り返した。

　後半、大津はシステム変更が功を奏す。「スリーセンター(バック)とスリーボランチにしてから、だいぶセカンド(ボール)が拾えるようになってきて、ビルドアップも後ろでだいぶスムーズになってきた」と宮崎監督は説明する。

　加えて、全体的にアクションが増加。サイドを深く突くシーンも出る中、10分にMF岩崎天利が相手GKのファウルを受けてPKを獲得する。MF福島京次の右足PKは尚志GK門井宏樹に止められたが、蹴る前にGKがゴールラインを離れたという判定で蹴り直しとなった。

　そして、“2度目”のPKを福島京が右足で流し込んで同点。主導権を握り返した大津がクロスや岩崎の抜け出しなどから勝ち越しを狙う。だが、予選リーグ無失点の尚志の守りも堅く、CB長尾星吾のカバーリングなどで次の1点を阻止する。迎えた33分、尚志は左サイドで阿部がスルーパス。ここから粘ってボールを繋ぎ、MF根木翔大の放ったシュートがDFのハンドを誘ってPKを獲得した。

　キッカーの阿部が右足で狙う。だが、これを大津GK篠原が右へ跳んでビッグセーブ。大津はこの後、相手MF根本のロングスローなどを確実に跳ね返していく。終了間際の木村のヘッドも再び篠原がファインセーブ。1-1のまま前後半80分が終了し、決着はPK戦に委ねられた。

　PK戦1人目、後攻・大津のシュートを尚志GK門井がストップする。だが、大津GK篠原が尚志3人目を止め返すと、尚志は4人目も失敗。だが、直後に尚志GK門井が再び止めて見せる。5人目、6人目はともに成功。迎えた7人目、先攻・尚志のシュートを大津GK篠原が右への跳躍から再び止める。最後は大津MF福島悠士が決め、激闘に決着をつけた。

　大津の選手たちにとって、尚志戦はリベンジマッチでもあった。10月の国体少年男子の部で大津の選手たちが主軸を担った熊本県選抜が、尚志中心の福島県選抜に2-3で敗戦。「今日、大津のプライド持って返していこう」(宮崎監督)と臨み、雪辱勝利を果たした。

　決勝も個人、チームで進化して終える。村上は「強い相手になると、自分の力がどんどん成長してるって実感がある。(今日も尚志の強力アタッカー陣と対峙して)どんどん何か1対1とか強くなっていた。(決勝では)あの選手権で準優勝している森田大智さんたちの代も、決勝で1-5で桐光(学園)に負けてるから、(勝って、)自分たちの代で歴史塗り替えれるようにやっていけたら良い」。また、宮崎監督は「鹿島学園さんは凄く勢いがある。相手の良さをしっかり消して、今日みたいなゲームができればと思ってます」と語った。

　大津は今年、九州の球蹴男児D1リーグで3位。2位の神村学園高が辞退したプレーオフ2回戦でD2リーグ優勝の飯塚高と対戦し、後半終了間際のゴール、引き分けで全国切符を獲得した。這い上がってきたチームにはタフさに加え、勢いも。決勝も勝って、偉大な先輩たちの成績を塗り替える。

(取材・文　吉田太郎)