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[MOM4624]帝京大可児GK井藤大善(1年)_”チームのやる気を引き出す守護神”、先発抜擢に応えて無失点継続

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帝京大可児高GK井藤大善は落ち着いた守備対応とコーチングで勝利に貢献

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.3 岐阜県高校サッカー新人大会準決勝 帝京大可児高 3-0 大垣日大高 長良川球技メドウ]

 2019年から5年連続で選手権出場を果たすなど、岐阜県内では頭一つ抜けた存在となっているのが帝京大可児高。県内の試合では相手を押し込み、シュートをほとんど打たれない試合も少なくない。だが、この日はビルドアップによる前進が上手く行かず、危ない場面が散見。打たれたシュートは5本で、試合後の仲井正剛監督は「県内でこんなにシュートを打たれたことがない」と口にしていた。

 それでも、試合を無失点で終えることができたのは、今大会からスタメンに抜擢されたGK井藤大善(1年)の貢献が大きい。指揮官は彼についてこう評する。「僕が喋っていることを真似して喋ってくれるからありがたい。練習中や試合中に上手く行かなかった時に、ポジティブな声を掛けてくれている。掛ける声が良いし、ハイボールをこぼした場面もあったけど、思っていたよりも出ることができている」。

 この日は前半10分に幸先良く先制点を奪ったものの、以降は相手の勢いに飲まれ押し込まれる展開が続いた。「今まで(攻撃陣に)何点も決めてもらってきたので、自分から発信して何とか守らないとダメだなと思っていた」とコーチングで味方を鼓舞しながらも落ち着いたセービングを見せ、失点を回避し続ける。

 後半も序盤にDF陣のミスからピンチを迎えたが、「チームのために全員で守れたら良いなと思っていたので自分から声を掛けていた」。積極的に交替カードを切った後半は意思統一が難しくなってもおかしくなかったが、最後まで最後尾からのコーチングを絶やさず初戦から続く無失点を継続したまま試合を終えた。

 帝京大可児と同じグループの4種チーム「FCアンフィニ」でGKコーチを務める父・井藤勇希さんの影響で、年長からサッカーを始めた。当初は泣きながら練習に行くほどサッカー嫌いで、上手い選手ではなかった。ただ、小学2年生の時に初めてGKを任された試合でPKを止めてサッカーと最後尾を守る楽しみに気付いたという。

 GKの先輩である父からは、小学生の頃からずっとプレー動画を見てアドバイスを貰っている。これまで一番言われてきたのはコーチングについて。「味方が良いプレーできるように称えなさいと言われているので、そこは誰にも負けないよう意識している。シュートを外した時も心が折れていてはダメ。味方がミスした時も中では“ちゃんとやれよ”と言われるかもしれないけど、自分はどんどん切り替えて良いプレーして貰えば良い」(井藤)。

 今でこそチームのやる気を引き出す守護神として評価されるが、中学3年生の時に負った腰の怪我によって高1の夏まで全くプレーできなかった。復帰後はU-16リーグに出場し、Bチームでの出番は訪れない。昨年末に行なわれた選手権では4番手の立場で、登録メンバーには入れなかった。

 新チームになってからも序列はなかなか上がらなかったが、レギュラー選手の調子が上がらず訪れた出番で好プレーを披露すると、今回の新人戦ではスタメンに。「高校のトップチームで、オフィシャルのユニフォームを着てプレーするのは初めてなので、まだ緊張しています。ただ、先輩もいるし、同じ学園のGKもたくさんいるので、責任を持ってプレーしている。このまま優勝したい」。

 一度掴んだ出番を明け渡すつもりはない。「このまま自分が1番のユニフォームを着て試合に出続けられるよう一生懸命頑張りたい。将来的にはプロになりたい。2年生から試合に出て結果を残すことで、自分の将来が見えてくるかなと思う。ここからは自分がどれだけできるか」。そう意気込む井藤は次の決勝で今季初のタイトルに貢献し、不動の座にするつもりだ。

(取材・文 森田将義)
森田将義
Text by 森田将義

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