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「ロス五輪への推薦状」第11回:「全部できる10番」へ。Jスカウト陣も注目、大津MF嶋本悠大の確かなプレゼンス

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大津高の10番MF嶋本悠大は「全部できる10番」になることを目指す

 2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 大津高MF嶋本悠大(2年)は、早々から高円宮杯プレミアリーグでも出場機会を得て着実な成長を見せてきた選手だ。主なポジションはボランチ。「体力には自信がある」と語るとおり、活動量も豊富に攻守に絡むプレーを見せてきた。

 ただ、山城朋大監督は「ボールを奪うとか、しっかり守る部分に関してできることはわかっている。本人の今後のことも考えて、それだけではないところを身に付けてほしいし、見せられると思っている」と、今季は伝統の背番号10を託しつつ、左サイドハーフに配置。攻守に絡みながら「よりゴール前で仕事をしてほしい」と期待を込めていた。

 17日に開幕したKYFA男子第45回九州高等学校(U-17)サッカー大会では、その評価に違わぬプレーを披露。視察したJスカウト陣からも感嘆の声が漏れるほど、攻守両面での質の高さを発揮。ドリブルだけ、パスだけと言った形ではなく、180cmのサイズも活きるディフェンスを含めて「全部できる」タイプの現代型MFとしての可能性を示している。

 その上で指揮官が「それもできる子だと思っている」と語っていた“ゴール”の仕事も見せ付けた。日章学園高との準決勝ではハットトリック。「得点力」も備えた選手であることを証明してみせた。

 自ら「狙いどおりだった」と振り返る開始8分の1点目は、ロングボールから粘って繋いだボールをペナルティーエリアの外で受けると、左に大きく持ち出してから鋭く切り返し、右足で巻いて蹴る形のミドルシュートを鮮やかに突き刺すスーパーゴール。さらに26分にはミドルシュート、35分にはこぼれ球を押し込む形で3得点を奪ってみせた。

「撃ったら入るという感覚だった。今日は雨でピッチも湿っていてGKもやりづらいと思って蹴っていこうと思っていた」

 新しいポジションにも違和感はないと言う。

「サイドに張るより中に入っていくタイプなので、チャンスメークもそうだし、点を取るところも意識している」

 イメージしているのはイングランド代表の名手だ。

「マンチェスター・シティのフォーデン選手が好きですね。シュートも上手いですし、足元もあってチャンスメークもできる選手なので」

 プレーの理想像でもある「何でもできる」MFとしての憧れを語る。一方、結果を残し、成長を示したその先のステージについては遠慮がちだった。「年代別日本代表は意識するのか?」というこちらの問いには、「頑張ります」とだけ言って笑いつつ、「いまはまず1試合1試合を戦うことに集中しています」と語るにとどめた。

 U-17日本高校サッカー選抜候補には招集されたものの、年代別日本代表にはまだ縁がない。もっとも、この日見せていたプレーを継続するのであれば、そう遠くないうちに日の丸を付ける姿も観られるのではないだろうか。個人的には、単に候補に選ばれただけではない、より大きな成長を期待したいと思っている。

(取材・文 川端暁彦)

川端暁彦
Text by 川端暁彦

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