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「ロス五輪への推薦状」第8回:速さと強さ、技術力、運動量も兼備。国体で可能性示した大型右SB関徳晴(川崎F U-18、1年)

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川崎フロンターレU-18DF関徳晴(1年)は国体東京都選抜で存在感を示した

 2028年ロサンゼルス五輪まであと5年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 茨城県の49年ぶり優勝で終わった特別国民体育大会「燃ゆる感動かごしま国体」サッカー競技少年男子の部。世代のトップクラスの選手たちがしのぎを削った大会で目についたのが東京都の一員としてプレーした川崎フロンターレU-18のDF関徳晴(1年)だ。

 身長182cmの大型ながら、務めるのは右SB。「能力値はかなり凄い」と一目置くのは東京都の指揮を執る石川創人監督(東京農大一高)で、身体能力は代表クラスが揃うチームの中でも上位に位置する。「足が速いと思っているので、推進力はSBの方が活かしやすい。運動量も自分の強み。行けるなと思ったら行くようにしている。あまり体力面を考えずに走っています」。本人の言葉通り、スピードを生かしたオーバーラップが持ち味だが、きつい試合終盤でもアップダウンの強度は落ちない。

 フィジカルだけに頼らないのも彼の魅力で、足元の技術も高い。川崎フロンターレU-15時代はポゼッションの核となるボランチとしてプレー。「チームでやっている相手を外す動きや、ボール回しには自信を持ってやれている」。トップチームには日本代表のDF山根視来というお手本がいるのも彼の成長には大きく、ビルドアップへの関わり方やゴール前で内側に入っていく動きをよく見ているという。実際、茨城県と対戦した国体準決勝は「ボールの回りが良くなかったので、ボールを動かして自分たちの時間を増やしたかった」と後半は中央でのプレーを増やし、攻撃を改善した。

 多才さはチームでも評価され、1年生ながらもすでにAチームに帯同。プレミアリーグでも3試合でベンチ入りを果たし、9月の流通経済大柏高戦では後半途中からピッチにも立った。退場者が出たCBにそのまま入ったが、対人守備には自信十分。前半に奪った1点を守り切り、勝利に貢献した一方で、「ワンプレーの強度が高くて、きつかった」と振り返る。

 ただ、これから川崎F U-18の右SBとしてポジションを掴むのは決して簡単ではない。3年生には“鉄人”DF江原叡志がおり、一歳上にも6月のU-17アジアカップメンバーの一員だったDF柴田翔太郎(2年)がいる。DF加治佐海(2年)も今年に入って定位置を掴み、U-17代表に選ばれる実力者だ。「上級生のライバルも強力なので、自分も食い込んでいきたい」。意気込みを口にする関は、競争を勝ち抜くために彼らの違いを意識している。

 サイズ感は自身のアピールポイントだ。「僕の方が上背はあるので空中戦の強さでは負けたくない。あとは絶対に抜かれない守備には自信がある」。左右両方のSBだけでなく、CBやボランチもこなせるユーティリティーさもチームにとっては有難い。先輩たちの売りである攻撃面を参考にし、更に総合力の高い選手へと成長していく。

 これからタレント豊富な川崎F U-18でポジションを掴めば、更なる上も見えてくる。DF伊藤洋輝(シュツットガルト)、中山雄太(ハダースフィールド)、橋岡大樹(シントトロイデン)とフル代表を見ても、SBの大型化は進んでおり、関はトレンドにも合致する。本人は至って謙虚に「代表も意識はしていますが、意識しているだけ。自分のプレーをやっていくのが一番だと思っている」と口にするが、遠い話ではないだろう。「サッカーをやるからには世界で戦いたい」と意気込む関の飛躍はここから本格的に始まっていく。

執筆者紹介:森田将義
1985年、京都府生まれ。10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動。2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。現在は高校年代を中心に育成年代のサッカーを取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェスト、サッカークリニックなどに寄稿している。主な著書に「ブレない信念 12人が証言するサッカー日本代表 鎌田大地の成長物語」(ベースボール・マガジン社)
森田将義
Text by 森田将義

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