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「ロス五輪への推薦状」第9回:CB転向からまだ4か月もポテンシャル大。左足の精度、186cmの高さに注目の旭川実DF澁谷陽

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旭川実高のCB澁谷陽(2年)は高さと左足に注目

 2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 選手権を終え、2024年シーズンが本格化し始めた高校サッカーシーンだが、旭川実高に楽しみな選手がいる。CBとしてポテンシャルの高さを感じさせるDF澁谷陽(2年)だ。元々サイズはあったが、高校1年生で急激に伸長が伸びた。今では186cmまで到達し、競り合いではそう簡単には負けない。成長は今も止まっておらず、フィジカル的な伸びしろの多さも魅力だ。

 何より目を惹くのは左足の精度だ。自身の長所として挙げる長距離のスルーパスを活かすため、昨年まではボランチとしてプレー。状況に応じてはサイドハーフもこなす攻撃的な選手だったが、高さと最終ラインからの組み立て能力を買われ、昨年9月に行なわれたプレミアリーグの青森山田高戦でCBにコンバートされた。

「元々、前目のポジションをやっていたので最初、ラインの守備はやりづらさを感じた。特に背後への対応は入れ替わられるので難しい。その中でも前に強くいかないといけない」。転向当初は慣れない役割に苦労しながらも、プレミアリーグのプレースピードを経験していくうちにCBとして順応していった。

 メンタル面の成長も著しい。中学時代所属したジェネラーレ室蘭は澁谷が中学2年生になったタイミングで北海道コンサドーレ札幌の下部組織へと移行。札幌U-18への昇格も視野に入れていたが、昇格は果たせなかった。「上がれなかった悔しさはありましたが、悔しさを感じても仕方ない。とりあえずやれる所までやろうと思った。高校に進むなら、親元から離れて自立した生活を送りたかった」。そう振り返る澁谷は、誘いを受けた旭川実への入学を決意する。

 入学後に成長期を迎え、「キックの軸足の場所が変わってプレーが難しかった」(澁谷)が、身長が伸びたことでクロス対応が大きく成長した。昨年はプレミアリーグという高校年代最高峰のレベルを経験したことで、負けん気の強さに磨きがかかり、メンタル的に逞しさが増したのも収穫だ。

 最終学年を迎えた今季はCB一本で勝負する覚悟を決めた。「CBとしてやるべきことを、まず1から学んでいる」と話す通り、積極的に前に出て、相手からボールを奪う力、攻撃の芽を潰す技術を身に付けようとしている。昨年末に埼玉県で行なわれたフェスティバルでも、Jクラブのアタッカーに手を焼く場面も見られたが、積極的なチャレンジを度々披露。「CBはやっていて楽しい。ボランチをやっていた時は360度から敵が来ていたけど、CBは180度の視野で後ろには敵がいない。自分に余裕があるので楽しい」。そう笑みを浮かべる通り、新たな持ち場での楽しみも感じている。

 富居徹雄監督は「将来的にプロを狙える選手。左利きのCBは貴重なので、最終ラインで捌ける選手になって欲しい。経験を積んで更に伸びて欲しい」と期待を込める。「球際で絶対に負けたくない。CBでどんどん指示を出して、チームの中心選手になりたい」。そう意気込む澁谷が、日の目を浴びる日はそう遠くないだろう。
森田将義
Text by 森田将義

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