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目指すのは右サイドで輝く絶対的な「緑の翼」。東京VユースFW半場朔人は走れて戦えるレフティへ進化を遂げる

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東京ヴェルディユースが誇る「右の翼」、FW半場朔人(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)

 高く羽ばたくための助走期間は、もう終わった。このグループの大事な役割を任されたからには、今まで以上に明らかな違いを生み出す必要がある。右サイドを切り裂くドリブルは誰にも邪魔させない。目指すのは誰もが認める『緑の翼』としての躍動だ。

「去年はケガが多くて人一倍悔しい想いもしてきましたし、今年は最高学年になるので、『自分がやってやる』という想いは本当に強いですし、『やっぱりヴェルディは両翼が凄いな』と言われるようなプレーをしていきたいなと思います」。

 エクストラな左足を備える突破系ドリブラー。東京ヴェルディユース(東京)のナンバー7。MF半場朔人(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)はいよいよやってきたアカデミーラストイヤーに、すべてを懸ける覚悟を定めている。


「自分はスピードがそんなにあるわけではないので、技術で相手を剥がして中の選手と繋がったり、ドリブルでかわしてチャンスを作ったり、シュートを決めたりする特徴があると思います」という本人の言葉を待つまでもなく、そのプレースタイルは明確過ぎるぐらい明確だ。

 持ち場となる右サイドでボールを持ったら、ファーストチョイスはまずドリブル。縦に仕掛けてクロスを上げたかと思えば、中に切れ込んでシュートチャンスを窺うことも。いくつかの選択肢をちらつかせながら、対峙したマーカーを無効化していく。

 昨シーズンのプリンスリーグ関東1部では2得点に終わったこともあり、「チャンスは作るんですけど、得点のところでまだ結果が足りないなという想いはあるので、もっと結果を残してチームに貢献できればなと思います」と自ら言い切るように、得点力向上はさらなる飛躍への大きな課題。この日の試合でも果敢にシュートを放つシーンが目立つ。

 だが、実に5回もあった枠内シュートはいずれも空砲に。「カットインからファーやニアに打ち分ける練習をたくさんしているんですけど、ああいうのを決め切れるようにならないとダメだと思います」と本人は反省しきりだったが、積極的な姿勢は間違いなく前面に打ち出していた。



 2023年は試練の年だった。U-15から年代別日本代表に招集されていた半場にとって、U-17ワールドカップの出場は大きな目標だったが、プレシーズンの時期に足首の手術を余儀なくされたことで、思うようなアピールが叶わない。「結局3か月ぐらいは試合に出られなくて、6月の終わりぐらいに復帰したんですけど、そこからもケガがあって、フルシーズンは戦えなかったです」。

 その一方でチームメイトのFW川村楽人(2年)は少ないチャンスを確実に生かし、U-17ワールドカップのメンバー入りを果たすと、本大会でも2試合に出場。日常をともにする仲間の活躍を願う気持ちはもちろんありながら、同時に悔しい感情も半場の心の中に湧き上がる。

「自分はケガが多くて、代表に割り込めなかった中で、逆に楽人はスピードを武器にたくさん結果を残したので、納得している部分もあるんですけど、サイドは違うとはいっても同じポジションなので、やっぱり悔しい想いはありました」。

 突き付けられた経験は、サッカー選手として新たなフェーズへと進むチャレンジを促してくれたようだ。「ヴェルディも技術だけではなくて、走り負けしないチームを目指して頑張っているところで、去年以上に今年は練習でもフィジカルのメニューがかなり含まれていて、メチャメチャキツいですけど、自分も走れるウインガーになりたいので、モチベーション高く気合を入れてやっています」。

 薮田光教監督からも大事なミッションを言い渡されている。「今シーズンは監督から『両サイドで優位性を作れ』と言われていて、左の楽人と右の自分で、個でも剥がせて優位性を作って、チームに勢いをもたらせたらなと思っていますし、もっと守備を意識して、“守るだけの選手”ではなくて、“奪える選手”になっていきたいなと思っています」。2024年のイメージは『走れるウインガー』。そのための努力を惜しむつもりはない。


 一緒にプレーしていた仲間の存在も、半場に進むべき道の方向性を指し示してくれている。「今年は(白井)亮丞、(山本)丈偉、楽人と3人もトップチームに上がったことで、ユースからトップに昇格するチャンスが自分たちにもあるのかなと感じられるようになったので、ユースでもっと結果を残して、トップに呼んでもらいたいという刺激になっています」。

 そのために必要なのはチームの結果と個人の結果。両方のイメージをきっぱりと力強い言葉に滲ませる。「チームで掲げている大きな2つの目標が、夏のクラブユース優勝とプレミア昇格なんですけど、去年はどちらも叶わなかったので、今年は厳しい練習に耐えながらみんなで成長して、その目標を達成したいのと同時に、個人としてはプリンスで10得点は挙げて、自分の力でプレミアにチームを昇格させたいという気持ちもあります」。

 ジュニア時代から濃密な時間を過ごしてきた、ヴェルディアカデミーでの集大成となる2024年。高性能レフティが見据える理想像は『戦える緑の翼』。自らのさらなる進化がチームの目標達成へと直結することは、半場自身が誰よりもよくわかっているはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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