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北の大地に芽吹きつつある16歳の若き才能。札幌U-18DF窪田圭吾がトップチームのキャンプ参加で学んだこと

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北海道コンサドーレ札幌U-18のディフェンスリーダー、DF窪田圭吾(1年=北海道コンサドーレ札幌U-15出身)

[3.18 イギョラ杯予選リーグ 神戸弘陵高 2-1 札幌U-18 東京朝鮮G]

 北の大地が育んだ新たな才能は、のびやかに芽吹きつつある。若き赤黒で仲間たちと切磋琢磨を続け、目指すべき赤黒でプロの猛者たちに揉まれる中で、着実にその視座が上がっていることは間違いない。

「去年はいっぱい試合に出られていろいろな経験はできたので、それをどれだけ今年に生かせるかということは考えていますし、あとはトップに絡む回数をどんどん増やしていって、それをユースに還元できたらなと思っています」。

 北海道コンサドーレ札幌U-18(北海道)の守備陣を束ねるディフェンスリーダー。DF窪田圭吾(1年=北海道コンサドーレ札幌U-15出身)が期すステップアップの行方には、まだまだ無限の余地が残されている。


 プレミアリーグへの昇格を懸けた昨シーズンのプレーオフ1回戦。ファジアーノ岡山U-18(岡山)と対峙する札幌U-18で、3バックの中央を任されていた33番の1年生。窪田のしなやかなプレーが一際目に付いた。

 きっかけは「ちょうど自分のポジションの上級生がケガをして、たまたま自分が呼ばれた感じでした」とのことだが、そのチャンスをしっかりと生かしたことでシーズン途中からはスタメンを確保し、自信を深めていく。

「試合に出られているところで、自信は絶対に付いていましたし、自分の中でヘディングが武器としてハッキリと認識できたので、ヘディングに自信を持って競り合えるようになったのが一番大きいと思います」。

 ただ、プレーオフは失点を重ね、結果的に1-3で逆転負け。自身の中に小さくない悔しさが宿る。「もともとプレミアの舞台でやりたい気持ちはありましたけど、やっぱりプレミアでプレーできたら、自分の将来も全然変わってくると思ったので、今年こそプレミアに上がりたいという想いはもっと強くなりました」。同じ失敗を2度繰り返すわけにはいかない。今年が勝負の1年だということは、窪田も十分にわかっている。



 新チームは立ち上がったばかりだが、現状にも手応えを感じている。「今年のユースはトップチームと同じサッカーをするということで、自分自身はトップのキャンプに参加していたので、トップのやり方や戦術理解を感じられて、こっちに戻ってきてからちょっと良くなってきた手応えはあります」。

 本人も言及したように、窪田はトップチームの沖縄キャンプへ帯同。「練習試合にもちょっと出たんですけど、まずプレースピードが違ったのと、身体を当てられただけでバランスが崩れたりして、『そもそもプロで戦えるフィジカルが付いていない』と感じました」。厳しい環境の中で、現在地を突き付けられた。

 それでも成長への手掛かりは、きっちりと掴んできた。「『クサビのボールやパスコンにもちゃんとこだわれ』と言われましたし、まだ力もないのでなかなかできなかったですけど、サイドチェンジのボールもインサイドで速いボールで出すことができれば、全然変わってくると思いました」。もっと力が付けば、確実に景色は変わる。それがわかっただけでも、小さくない進化だ。

 特に印象に残ったのは、レジェンドの存在だったという。「(宮澤)裕樹さんの『何、それ?』と思うような“小技”が凄かったです!ポゼッションのボール回しの時も、裕樹さんが自分のチームにいたら、何かわからないけどメッチャやりやすくて、それが何でやりやすいのかはわからないままだったんですけど、何かメッチャボールが回るんです!」。

 “メッチャ”の連呼に小さく興奮が滲む。やりやすさの理由を解き明かすには、34歳のベテランも、16歳の高校生も、同じ土俵でジャッジされるトップチームに、これからも呼ばれるほかに方法はないだろう。

 ちなみに同じポジションで衝撃的だったのは岡村大八とのことだが、その感想が何とも微笑ましい。「ハチくんはマジで強かったです。来たボールは全部取ってくれて、『あそこで取れるからあのサッカーができるんだな』と思いました。似ているタイプではあるんですけど、フィジカルがもう凄すぎて、ぶつかったら内臓まで振動が来ます(笑)」。


 イギョラカップ2024初日の神戸弘陵高(兵庫)戦では、3バックの中央でスタートしながら、途中からは左センターバックに組み込まれた。結果は1-2での敗戦となったが、2つのポジションを任された窪田は、今の課題も口にする。

「今は左側に開くことが多いんですけど、左足がちょっと怪しいので(笑)、運んだ後に左足で対角のサイドチェンジを蹴れたら一番いいんですけど、いつも運んでから左足で蹴れなくて、近くに付けることが多いので、そこをちゃんと蹴れたらいいかなと思っています」。

 一方で確かな武器も把握できている。「競り合いには自信があるのと、カバーリングのタイミングや意識はストロングかなと思っています」。高さと強さを兼備したヘディングに加え、機動力を生かした守備範囲の広さも魅力的。教えられないようなセンスもプレーの端々に滲む。

 これから本格的に始まる2024年のチームにも、既にポジティブな印象を抱いている。「チーム全体としても、スピードがあったり、足元があったり、結構個性がある人たちが多いので、良いサッカーができるんじゃないかなという期待がありますね」。だからこそ、求められるのは明確な結果。そんなことはもうとっくに理解しているはずだ。

 その雰囲気のある立ち姿に、未来への希望が重なる。ジュニアからコンサドーレで育った弱冠16歳の新たな才能。窪田圭吾のさらなる飛躍には、きっと誰もが期待せざるを得ない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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