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新たな歴史を創る冒険へ漕ぎ出すための水先案内人。岡山U-18MF藤田成充はその左足で未来を切り拓く

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ファジアーノ岡山U-18のキャプテン、MF藤田成充(2年=ファジアーノ岡山U-15出身)

[3.18 イギョラ杯予選リーグ 神戸弘陵高 0-0 岡山U-18 東京朝鮮G]

 新たな歴史の扉は先輩たちと一緒にこじ開けた。ここから先は未知の階段を上っていくフェーズ。とにかく楽しみな最高のステージを戦う上で、チームが結果を残すために、個人が成長するために、自分がこのチームを牽引していく覚悟は定まっている。

「高校年代最高峰のプレミアリーグで戦えるので、メチャメチャレベルの高い相手とできるというところは一番の楽しみでもありますし、その中で自分たちがどれだけできるか、どれだけ差があるかも試合を通して知りながら、成長していけるのが本当に楽しみです」。

 初めてのプレミアリーグ参戦を目前に控えたファジアーノ岡山U-18(岡山)の新キャプテン。MF藤田成充(2年=ファジアーノ岡山U-15出身)が左足で振るうタクトは、チームの未来を切り拓いていく。


「風がメチャメチャ強かったので、自分たちのいつもの戦い方とは少しずつ変えながらやっていくことへの適応に時間が掛かりましたね」。藤田は終わったばかりの70分間をそう振り返る。イギョラカップ2024の初日は、強風が吹き荒れるコンディション。神戸弘陵高(兵庫)と対峙した岡山U-18も、いつものようにボールを動かす姿勢は打ち出すものの、攻撃での前進には苦心する。

 その中でも20番を背負ったキャプテンは焦らない。「しっかりポジションを取って、全員が距離感良くワンタッチツータッチで動かしていくところは、練習から意識しています」。パスを受けて、捌く。スペースに潜り、サイドを変える。狙いを定めて、スルーパスを通す。チームがスムーズに回るように、巧みにポイントを作っていく。

 語り落とせないのは守備への意識。相手に寄せ切ってボールを奪うシーンもあれば、最後の局面でシュートブロックを繰り出して、ピンチを救う場面も。「去年からの課題で守備というところは監督からも言われていて、トップチームのキャンプに参加させてもらった時にも改めて守備は課題で出たところですし、そこは練習から意識しているので、さっきの試合で少しずつ出せたところは良かったと思います」。

 試合はスコアレスドローで終わったものの、藤田の攻守に渡る存在感は特筆モノ。腕章を左腕に巻いて戦うことの意味を、しっかりと体現してみせた。



 昨シーズンの岡山U-18はプリンスリーグ中国を堂々と制すると、プレミアリーグプレーオフでは北海道コンサドーレ札幌U-18と京都サンガF.C.U-18を相次いで撃破し、チーム史上初となるプレミアリーグへと昇格。藤田は中盤で定位置を確保し、チームの軸として稼働し続けた。

「一言で言うとメチャメチャ充実していました。チームの一体感がどんどん上がっていったのも感じていましたし、試合をするにつれてチーム全員が成長しながら、自信も付けていった感じがありました」。充実の1年を過ごす中で、少しずつ中心選手としての自覚も増していったという。

「去年も『2年生でもチームを引っ張っていこう』という意識は自分の中であったので、今年もコミュニケーションを取る回数は去年に比べてメチャメチャ増えたなと思いますけど、特にキャプテンになったからといって、自分が変わった部分はあまりないんです」。新キャプテンという役割も、自身の中では昨シーズンの延長線上にあるもの。良い意味で気負いやプレッシャーの類は感じていないようだ。


 この冬には1週間に渡ってトップチームのキャンプに参加。「選手ともコミュニケーションを取っていくことで、少しずつ慣れていって、自分の特徴を徐々に出せたことは良かったかなと思います」。磨き続けてきた左足のキックは、プロを相手にしても通用する手応えは得た。

 中でも大きな刺激を受けたのは、同じレフティとして尊敬する14番だ。「田部井涼選手は運動量も凄いですし、利き足もおなじ左足なので、そこから繰り出されるパスはかなりお手本にしています。自分も今季はキャプテンをやっているので、副キャプテンとしてチームをまとめるところも参考になりましたし、コミュニケーションや声掛けもメチャメチャ参考にしています」。

 細かくもらった貴重なアドバイスも、心の中に刻んでいる。「センターバックからボールを受ける時の身体の向きを意識しているという話をされていて、受ける時に少しでも肩を開いて、逆サイドに展開できるような身体の向きを作ることとか、そういう細かいところを教えてくれるので、メチャメチャ勉強になります」。いつかはシティライトスタジアムのピッチで、ともに戦う日を夢見つつ、目の前のトレーニングと向き合っていく。


 岡山U-18の新章が幕を開ける2024年。梁圭史監督も「ここまではそんなに悪くないですね。段階的には去年やったことをもう1回整理するのと、出てきた課題にトライしていくという中では、前向きな期間だったなと思います」と始動からの時間を評価する中で、藤田は新チームへの印象をこう教えてくれる。

「今年は個人に特徴のある選手が多くて、攻撃面でのアイデアや個人が1対1で剥がせるところは去年にはなかった部分かなと思います。逆に去年は全員で守備をして粘り強く戦えたので、そういうところは今年のチームはまだまだ足りないかなと感じています」。リーグ最少失点だった守備のベース維持に加え、攻撃力のさらなる向上はプレミアを戦う上で欠かせぬ命題だ。

 いよいよスタートする新シーズン。目標を問われたキャプテンの言葉が力強く響く。「チームとしてはプレミアを戦っていく中で、自分たちのサッカーを出して、強いチームに勝てるようにやっていくのは目標としてあって、個人としては年代別の代表に入るところは意識していますし、トップチームにも2種登録されたので、トップの試合にも絡んでいけたらいいなと思っています」。

 岡山U-18が挑む歴史的な冒険を指揮する水先案内人は、左利きのコンダクター。藤田成充が勝利への地図を丁寧に読み解きながら導き出す正解は、チームが望んだ成果を手に入れるためにも、絶対に欠かせない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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