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[J-VILLAGE CUP U-18] 川崎F U-18が2連覇!前橋育英に一時逆転許すも、再び粘り強さ発揮して追いつき、PK戦で勝利

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川崎フロンターレU-18がJ-VILLAGE CUP U-18で連覇を達成した

[3.18 J-VILLAGE CUP U-18決勝 川崎F U-18 2-2(PK6-5)前橋育英高 Jヴィレッジスタジアム]

 川崎F U-18が2連覇――。第6回 J-VILLAGE CUP U-18決勝が18日、福島県双葉郡のJヴィレッジスタジアムで開催された。予選1位の川崎フロンターレU-18(神奈川)と同2位の前橋育英高(群馬)が激突。2-2で突入したPK戦の末、川崎Fが6-5で勝ち、2連覇を達成した。なお、川崎FのFW恩田裕太郎(1年)が大会MVP、前橋育英MF白井誠也(1年)が大会MIPに選出されている。

 川崎Fは予選リーグで神村学園高(鹿児島)、静岡学園高(静岡)、U-17日本高校選抜相手に3連勝。決勝は、GK松澤成音(1年)、ゲーム主将のDF柴田翔太郎(2年)、林駿佑(1年)、楠田遥希(1年)、関德晴(1年)、MF矢越幹都(2年)、八田秀斗(2年)、知久陽輝(2年)、児玉昌太郎(2年)、FW加治佐海(2年)、香取武(2年)が先発した。

 一方の前橋育英も静岡学園、神村学園に連勝し、清水ユース(静岡)にも5-1で勝利。同じく3連勝で得失点差も並んだ湘南U-18を総得点差で上回り、決勝へ駒を進めてきた。決勝はGK藤原優希(2年)、DF瀧口眞大(1年)、青木蓮人(2年)、立木堯斗(2年)、牧野奬(1年)、MF石井陽主将(2年)、平良晟也(1年)、黒沢佑晟(2年)、白井、FW佐藤耕太(2年)、四方田泰我(1年)の11人が先発した。

 川崎FはCB土屋櫂大主将(2年)がU-19日本代表活動のために不在。一方の前橋育英もDF山田佳(2年)、MF平林尊琉(1年)、FWオノノジュ慶吏(2年)をU-17日本高校選抜活動のために欠いていた。だが、川崎Fは楠田が主軸選手たち遜色のない動きで穴を埋め、前橋育英もCBでコンビを組んだ青木蓮と立木が健闘。決勝進出に貢献した。

 試合は開始直後、前橋育英にアクシデント。牧野が負傷し、DF井上萩斗(2年)が緊急出場した。互いに4連戦の疲れもあったか、前半はコンパクトな戦いの中でボールを保持する川崎F、奪い返しからサイド攻撃を狙う前橋育英ともになかなか差を生み出すことができない。ともに守備範囲広く守っていた前橋育英のダブルボランチ、石井と平良や、林や矢越を中心とした川崎Fの連係を取れた守備が目立つ展開だった。

 川崎Fは林の縦パスから児玉が抜け出しかけるが前橋育英DF瀧口がカバー。前橋育英はその瀧口が右サイドで出力を発揮し、佐藤がポストプレーで健闘する。31分には敵陣に押し込んでから連続攻撃。四方田がシュートへ持ち込んだが、川崎FはGK松澤のファインセーブやDFのシュートブロックで得点を許さない。

 迎えた40分、川崎Fがスコアを動かす。柴田の左CKのクリアを知久が右足でフィニッシュ。鋭い弾道の一撃はクロスバーを叩いたが、柴田が左サイドでボールを拾い、ゴール方向へクロスを上げる。これが相手DFのオウンゴールを誘い、先制。川崎Fはさらに矢越のループパスを加治佐が落とし、香取が右足シュートを放つ。

 ハーフタイム、川崎Fの長橋康弘監督は守備を評価した一方、「ここに来た意味っていうのは、やっぱり成長しなきゃいけないっていうところで言うと、このままじゃいけないっていうような話はしました」と説明する。自分たちから仕掛ける部分の不足を指摘された選手たちは後半、その姿勢が向上。関が左サイドで2人をかわしたほか、八田や加治佐が積極的にシュートへ持ち込んだ。

 だが、前橋育英は1点差を維持すると24分、連動した攻撃から黒澤が右サイドでCKを獲得。石井のCKをニアの黒澤が右足ダイレクトで合わせて同点に追いついた。さらに27分、前橋育英は右サイドで白井が瀧口とワンツー。DFと並んでしまえば潜り込む自信があるという白井が前に出たところでPKを獲得する。このPKを石井が右足で決めて逆転した。

 追う展開となった川崎Fは、31分に知久と恩田をチェンジ。直後に恩田がクロスバー直撃のヘディングシュートを撃ち込む。昨年の反省からリードされてもひっくり返す力、後半でも足が止まらないチームになることを目指してきた川崎が同点に追いつく。

 36分、左サイドの関がライナー性のクロスをゴール前へ通す。これを恩田が1タッチで合わせて2-2とした。長橋監督は「今年はチームの中でしっかりと解決することを、チーム内で話が良くトレーニング中からできてるんですね。ああいう苦しい状況になっても、何か巻き返せると言いますか、あそこからひっくり返せる粘り強さっていうものが、うちのチームも感じられるので、しっかり自信に繋げながら、開幕に向けてさらに成長していきたいなと思っています」。川崎Fが今年、求めてきた力の一つを発揮。ここから互いに勝ち越し点を狙い合った。

 37分、前橋育英は黒沢と四方田をFW中村太一(2年)とMF鈴木蓮大(2年)へ交代。中村が推進力を活かして強引に前進したほか、井上のクロスなどからチャンスを作る。一方の川崎Fも恩田が左中間への抜け出しから左足を振ったが、クロスバーを直撃。互いに勝ち越し点を生み出すことはできず、2-2のまま後半を終えた。

 試合は即PK戦に突入。後攻・川崎Fは2人目がポストを叩いたが、相手の4人目をGK松澤がストップする。互い譲らず、6人目を終えて5-5。ここで審判団はPKマーク付近の芝の状況を考慮し、PK戦のサイド変更を決断する。逆サイドのゴールへ移って再開された7人目、先攻・前橋育英のシュートがポストをヒット。直後に川崎Fの恩田が決め、連覇を達成した。

 川崎Fの柴田は「ああいうところを許してはいけない集団にしたいと個人的に思ってるので、2失点っていうのは良くなかったかなと思います」とセットプレーでの失点、連続失点を指摘。一方で追いついて、PK戦で勝利したことを評価する。「やっぱり、今年はあそこで粘り強く追いつく力だったりっていうのがあるチームだと思ってるので、恩田が取ってくれて、感謝したいなと思います。(自主練でPKを蹴る選手が多いが)みんな本気で蹴ってるので、(優勝を懸けた状況でも)冷静に蹴れたかなって思います」と微笑んだ。

 長橋監督は失点後など苦しい時に相手を見ながらどのようなプレーをするのか考えることや、ギア上げて推進力を発揮したことを収穫に挙げる。J-VILLAGE CUP U-18で成長すること、連覇することを目指してきた選手たちは素直に大喜び。長橋監督も優勝を評価した上で「この先にどれだけ、この優勝っていうものを繋げていけるかいうところが一番大事なので、その辺のところをまた帰ってやっていきたいと思います」と引き締めていた。“フロンターレのサッカー”を絶対に忘れないこと、昨年のプレミアリーグ3位という悔しい結果を繰り返さないことを繰り返し伝えられてきた選手たちは、今回出た課題を整理して新シーズンへ向かう。

 柴田は「プレミア優勝、ファイナル優勝で、クラブユース優勝っていうタイトルを僕たちは本気で思っています。それに向けて努力できる集団だと思ってますし、本気で思うことが大事だと思うんで。クラブユースで言えば3年連続ベスト16で敗れてますし、そこには何か足りないものがあると思います。自分としても3回目のクラブユースの挑戦でタイトル取りたいですし、(リーグ戦も)シーズン通して戦っていく中で良い時も悪い時もあると思うんですけど、やっぱ粘り強く戦って勝ち点を0なのか、1になるのか、3になるのかっていうのは大きな差になると思うんで、少しでも3を積み上げられるような戦い方をして、最後優勝できれば良い」と力を込めた。

 新シーズン開幕前にプレミアリーグ勢10チームなど高校年代の強豪19チームと、U-17日本高校選抜が、震災からの復興を目指す福島県、Jヴィレッジに集結して4日間、A戦とB戦で切磋琢磨。各選手、チームはライバルたちから刺激を受けながら成長と結果を目指してきた。王者・川崎Fは個々の力をさらに伸ばし、チームとしても24年シーズンの主役となる。

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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