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玉田圭司新監督が求めることに対し、積極的にトライ。昌平が4-2で前橋育英に撃ち勝ち、初勝利を「プレゼント」

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後半45+3分、昌平高は交代出場MF三浦悠代がこの日2点目のゴールを決めて4-2

[4.13 プレミアリーグEAST第2節 昌平高 4-2 前橋育英高 昌平高G]

 新体制の昌平が今季初白星! 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EASTは13日に第2節1日目を行い、昌平高(埼玉)と前橋育英高(群馬)が対戦。ホームの昌平が交代出場MF三浦悠代(3年)の2ゴールなどによって4-2で勝利した。今年3月から元日本代表FW玉田圭司新監督が指揮を執る昌平は、今季初白星で1勝1敗。一方の前橋育英は開幕2連敗となった。

 試合終盤、昌平はU-17日本高校選抜のMF大谷湊斗主将(3年)やMF鈴木宏幸(3年)が距離感良くボールを動かし続け、セカンドボールも連続で回収してまた攻撃。昌平の良さが出続けて迎えた後半45+3分、23年U-17日本代表の10番MF山口豪太(2年)が右サイドからラストパスを通す。最後は三浦がコントロールから対角の右足シュートをゴール左へ決め、勝利を決定づける4点目。間もなく試合終了の笛が鳴ると、玉田監督はベンチで静かに勝利を喜んでいた。

玉田圭司監督は初勝利

 昌平は、横浜FCユースとの開幕戦(4月7日、0-1)で出た課題も改善しての初勝利。玉田監督はヒーローの三浦とハグするなど選手たちを讃えた一方、90分間を通して多くの課題も感じたようだ。

「ほんとにみんな良さが出てるし、(その良さが)出た時はほんとに(良いサッカーができている)。それを出すためにどうすればいいのかっていうのは、もっともっと詰めていかなきゃいけない部分ありますけれど」

 前半は自分たちからボールを奪いに行くことができず、相手のU-17日本高校選抜CB山田佳(3年)に縦パスを通されるなど、受け身になって劣勢の時間帯も。それだけに、積極的にボールを奪いに行ってシュートを打ち込んだり、相手陣内でボールを動かすなど「自分たちの時間帯っていうものを増やしていきたいなと思いました」と語った。

 高体連の強豪校対決は、昌平が先手を取った。前半11分、MF本田健晋(3年)の右クロスからMF岩谷勇仁(3年)が決定的な右足ボレー。これは決め切れなかったものの、直後の12分には右SB安藤愛斗(2年)が攻め上がり、ゴールライン際からのラストパスをFW鄭志錫(3年)がニアで合わせる。このこぼれを山口が左足で決めて先制した。

 昌平は、最前線の鄭が再三ボールを収めて攻撃の起点に。同じくキープ力の高い本田、山口がタメを作り、安藤らが前線を追い越すような動きを見せていた。昌平の玉田監督は、相手の守備ブロックの外側で回すシーンが増えていた一週間前の反省から「相手をひっくり返すことによって何かが生まれる」とアドバイス。この日については、「ボールを持った選手を追い越すっていうことはできていたと思うし、まだまだ足りないとは思いましたけど、その量と質っていうものは出てきたのかなと思います」と頷いていた。
 
 相手の状況を見ながらボールを動かす昌平に対し、前橋育英は山田耕介監督からCBの持ち上がりが少ないことを厳しく指摘されていた。重心が重くなり、なかなか仕掛けるシーンやシュートを増やすことができない。

 それでも、昌平・玉田監督も警戒していたCB山田からFW佐藤耕太(3年)への縦パスや、右SB青木蓮人(3年)の攻め上がり、MF石井陽主将(3年)を起点としたショートカウンターなどから徐々に反撃。そして、40分、U-17日本高校選抜FWオノノジュ慶吏(3年)が相手DFラインでのビルドアップをインターセプトすると、DFと競りながら前に出て左足を振り抜く。これは左ポストを叩いたものの、跳ね返りを佐藤が右足で押し込み、1-1とした。

 昌平はFW鄭へのロングボールがやや増えていたものの、背番号15のエースストライカーは個の力でもボールを収め、強引にPAまでボールを運んで足を振っていた。その昌平は後半8分、抜群のスピードを発揮していた岩谷が左サイドへ抜け出す。そして、中への動きながら中央へパス。これを大谷がヒールで落とすと、リターンを受けた岩谷が右足で鮮やかに決めて勝ち越した。

 だが、前橋育英は直後に佐藤が青木の右クロスからクロスバー直撃のシュート。そして10分、右サイドから山田の蹴り込んだ左足CKがニアの混戦を抜け、ゴールラインを越えた。苦しい展開になりかけたところで2度目の同点ゴール。昌平は追いつかれた直後に大谷が中央突破し、岩谷とのパス交換から決定的な左足シュートを放つ。前橋育英も石井が高い位置に顔を出し、崩しに係っていく。互いに交代カードを切りながら目指しあった3点目のゴール。これを奪ったのは、昌平の方だった。

 後半33分、昌平は右サイドから鈴木がボールを運び、前方のスペースへパス。これで鄭が抜け出し、一気にゴールへ迫る。そして、GKを引き付けて中央へラストパス。最後は三浦が右足でゴールへ流し込んだ。交代出場で大仕事の三浦は、ピッチサイドの控え部員とともに喜びを爆発。この後、昌平はベンチの玉田監督から「守り切ろうとするな!」という声が上がる中、距離感良くボールを繋ぎながら試合を進める。また、左SB上原悠都(3年)が対人の強さを発揮するなど相手の攻撃を封じ、セカンドボールの攻防戦でも優位に。そして、試合終了間際に三浦が自身2点目を決め、決着をつけた。

 昌平は、日本代表としてアジアカップやワールドカップで活躍した玉田監督の就任から1か月。玉田監督はスペシャルコーチとして昨年一年間携わった昌平で、習志野高(千葉)時代の同期の多いコーチ陣と協力しながら、高校生と向き合ってきた。

 鄭は「(玉田監督は)ほんとレジェンドの方ですし、毎日、自分が指導受けてるのが不思議と思うぐらい。日々熱血的に指導してくれますし、身振り手振りとか、ほんと情熱持って毎日接してくれるんで、そこも自分たちは感じています。あと、一昨日(4月11日)、玉さんの誕生日で、昨日(4月12日)は(玉田監督の習志野高時代の同期で、前監督の)藤島(崇之)さんの誕生日だった。『全員で勝って、誕生日プレゼントを送ろう』っていう話をしていました」と微笑む。その中で取り組んできた形も表現して勝利。大谷は「玉田さんの練習は、結構ゴールに近い場面だったり、そういう部分を中心的にやってるんで、こういった試合で4点という得点を取れて良かったです」と頬を緩めた。

 選手たちは玉田監督が求めることに対し、積極的にトライ。指揮官も「(相手は)高校生ではありますけど、高校生っていう扱いは、僕はしてないんで。プロに対して言うようなことを僕は言ってるつもりなんで、それに対して『無理です』っていうような感覚の選手たちではない。『やってみる』っていうことをまずやってくれてるんで。やっぱり、やることによって伸びる部分ももちろんあるし、やって無理だったら自分的にちょっとアレンジしてくれれば全然いい。まず、やってみてくれるっていうことは、僕はありがたいです」と感謝する。

 昌平は年代別日本代表や高校選抜だけでなく、サブ組、下のカテゴリーのチームも含めて向上心の強い集団だ。この日は、課題も多かったが、随所で成功体験。玉田監督は「言葉で伝えるよりも、やっぱり自分たちで体験して、いい体験ができたら、『こういうことか』って感じるのが多分一番だと思う」。それを試合で繰り返しながら、成長を続ける。

 次の試合へ向け、また改善と努力。大谷は「先とかではなく、目の前のことに集中して戦っていきたいです」と語り、鄭は「本当にもう常に上を目指して、現状維持じゃなくて、一人ひとりが向上心を持っているチームだと思うので、そこを継続して、どこのチームよりも上、上を目指して頑張っていきたいです」と誓った。この日、玉田監督に1勝をプレゼントした昌平の選手たちが、次戦でもまた成功体験を増やし、勝ちながら成長を続ける。

後半8分、MF岩谷勇仁が勝ち越しゴール

後半33分、昌平高がMF三浦悠代の勝ち越しゴールを喜ぶ

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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