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[MOM_839]和歌山北DF高出天晴(3年)_チームを支える“小さな巨人”

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.22 高円宮杯プリンスリーグ関西2部第17節 和歌山北高3-1初芝橋本高 橋本]

 和歌山北の後方を引き締めるDF高出天晴の身長は165cm。「ヘディングはやっぱりリーチの差があって負けてしまうので、苦手」と本人も言い切るように、CBとしては異例の低さだが、チームを支える要のポジションで使われるのには理由があった。

「同じ和歌山なんで、負けたくなかった。選手権もあと1か月なんで、今日が弾みになれればと思っていた」と挑んだこの一戦。高出はサイドから仕掛ける初芝橋本の攻撃陣に対し、左SB中山航、CB笹文哉らDF陣に小まめに指示を飛ばし、グループで対応。ファーストディフェンスが破られても、冷静かつ素早く相手の前に身体を入れて自由を与えず、「今日は思ったより、スライディングが当たっていた。自分のストロングポイントだと思っている。スライディングとカバーリングが発揮できたと思う」と持ち味を存分に発揮した。

 そして、彼のもう一つのストロングポイントは積極的な声出し。「キーパーとはサッカー以外の面でも密にコミュニケーションをとっている。自分たちが話し合って修正することで、守備からリズムを生むことが出来たらいい。暑かったんで、なるべく声を出して、チームへの指示を切らさないようにしていた」と、自陣に相手のボールが来る度に、状況を見渡し、キャッチしたGK榎本勝仁に対し、「蹴らんと持っといた方がいい」、「右に展開しよう」などと展開を指示。高い位置からボールを奪いに来る初芝橋本の守備を掻い潜り、的確な繋ぎに貢献した。

 もともとはSBだったが、高校3年生になってから、CBにコンバート。「ここまで小さいCBはなかなかいないと思う」と苦笑いしたように、最初は戸惑いもあったが、プリンスリーグ、高校総体と経験を積むに連れ、「今は楽しめるようになった。SBは縦への上下動が激しいけど、CBは動きの面で激しさはない。でも、守備の中心なんで、頭を常に動かさないとやられてしまう。集中力を切らさないように心がけている」と少しずつ、CBが様になってきた。
 
 小さな身体で身体と声を張る彼がいたからこそ、「入学した時から能力が低いと思っていた」と中村大吾監督が辛口な評価を与える今年の世代が、高校総体に出場し、「昨年よりもコレクティブ。組織的なサッカーが出来ている。ちょっとずつ出来ているし、やろうとする意欲が見える」と成長しているのかもしれない。

「昨年みたいに目立っている選手はいないけど、チーム全員が連動して攻撃も守備も出来る。全員で乗り越えていけるのが今年の強みだと思う。でも、もっとチームがまとまって出来るようになったら、もっと上に行けると思う」。目指すは2年連続選手権出場。歓喜を掴むために小さな巨人の奮闘が続く。

(取材・文 森田将義)

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