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[MOM947]修徳MF田上真伍(3年)_自分を律して決めた直接FK!!

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]

[1.2 全国高校選手権2回戦 綾羽0-1修徳 駒沢]

 スコアレスドローのまま80分が過ぎそうな予感が漂い始めた後半34分、修徳(東京B)のエースナンバーを背負うMF田上真伍(3年)の右足が均衡を破った。

「東京都予選では思い通りにいかなかったが、ここにきてプレスキックの調子が上がってきた。結構練習で蹴っていたその成果がこの場で出ました」と岩本慎二郎・修徳監督も褒めた。

 試合終盤。タフな試合で疲労もピークに近い。だが、田上は冷静だった。「相手GKの身長(157センチ)を考えて、あと、風も追い風だったので、とにかくゴールの枠にさえ蹴れば。たとえセーブされたとしてもこぼれ球からチャンスになると思っていました」(田上)。

 田上のキックは綾羽DFの壁とは無関係のファーサイドへ。GK三谷盛心(3年)も必死で手を伸ばすが、ボールはさらにその先から巻かれ、ゴール右隅へと刺さった。おそらく、どのGKでも止める方が難しかった。そんなパーフェクトのキックをこの場面で打ってみせた。

 実は田上は3年間、ずっと岩本監督の担任するクラス。岩本“先生”は田上の人格を次のように分析する。

「彼はFC東京U15深川出身ですし、もともといいものを持っているんです。でも自分を抑えられない。ひとことでいうと“いじめっ子”です(笑)。だから3年間彼にはことさら厳しく接してきました。今日は緊張する場面で中々なかったキックを決めてくれた。そしてあまりイライラしなくなったのは成長したところですね」。

 この試合、綾羽(滋賀)MF高野大輝(3年)の徹底マークにあった。何度も体を入れられ倒された。そんな執拗なマークにも気持ちを乱さず自分の仕事を淡々と続けた。その末に得たFKのチャンス。冷静にゴールする確率の高いキックを選択できたのも、この3年間で身につけた精神的強さの賜物だった。

「うちは朝練はないんですが、彼は自主的に朝来てボールを蹴っていましたね。僕が課す練習はいいかげんにするんですが、自分のこととなるとしっかりやるんです(笑)」と語る岩本監督の眼は、監督のものでも先生のものでもなく、どこか父親っぽい雰囲気を漂わせていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)

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