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[選手権] 4強進出の四中工、PK戦の勝因は『味方の声』と『監督の勘違い』?

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 履正社1-1(PK5-6)四日市中央工 駒場]

「最後は『もうダメかな』と思っていた」と、四日市中央工のGK高田勝至(2年)は、正直に心境を吐露する。後半のアディショナルタイムに入っても、四中工は1点を追いかける状態だった。しかし、DF後藤凌太(3年)が執念のゴールを決めて試合を振り出しに戻し、試合はPK戦にもつれ込む。

 今大会、初めて迎えたPK戦で、GK高田は緊張していたことを明かす。「緊張していたから、最初の1、2本目は、めっちゃ早く動いてしまったんです。高校に入ってからPK戦は初めてだったので、めっちゃ緊張してしまいましたね」と、振り返る。その緊張をほぐしてくれたのが、チームメイトの声だった。

「うちの2番目のキッカーだった大辻竜也(3年)さんが、決めてから僕に『緊張しすぎて、早く動きすぎているぞ』って声を掛けてくれたんです。あれで落ち着き直して、しっかり待って、相手の動きを見ることができました。蹴る瞬間に、体が開くか、閉じているか。そこを見ることができるようになりました」

 緊張を乗り越えた高田は、履正社の3番手、4番手のシュートを立て続けに止めた。だが、試練は続いた。「2本止めて、これで1本決めて勝てるかなと思っていました」という高田の期待とは裏腹に、四中工も4番手、5番手が連続で履正社GK安川魁(2年)にシュートを止められてしまう。それでも、高田は「残念な気持ちもありましたが、止めたらヒーローになれると思い、マイナスなことは考えずに集中していました」という。

 サドンデスに入ったPK戦でも、高田は履正社8人目のキッカーのシュートを防ぐ。最後はMF服部雄斗(3年)が決めて、四日市中央工の4強進出が決まった。試合後、樋口史郎監督は「選手たちに『四中工はPKに負けたことがないから、大丈夫だぞ!』と言って、PK戦に向かわせました」と明かし、選手たちは「あれで気が楽になった」と振り返る。だが、実際は1992年度大会で山城高(京都)にPK2-3で敗れていた。

 その事実を知らされたGK高田は「本当ですか!?  2日前にも、(GK中村)研吾さんとPKの話をしたときに『四中工は負けたことがないから、大丈夫でしょう』って話をしていたので、PKに負けていないっていう話は知っていたのですが、間違っていたとは知らなかったです」と、目を丸くした。

 緊張からGKを解き放った味方の声。そして、キッカーの緊張をほぐした監督の勘違い。樋口監督が言うように、四中工には「風が吹いている」のかもしれない。

(取材・文 河合拓)
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