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ブラジルと初対戦の本田「簡単に勝ったらこの先、面白くなくなる」

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[10.16 国際親善試合 日本0-4ブラジル ブロツワフ]

 悔しさはもちろんある。だが、単純な言葉ではまとめきれない、胸いっぱいの感情が渦巻いていた。

 試合後の取材エリア。スーツ姿の左胸ポケットに刺したルイヴィトンのサングラスを光らせながら、MF本田圭佑(CSKAモスクワ)は笑みすら浮かべていた。

「なんか、うれしくて――」

 視線を宙に漂わせ、恍惚の表情で続ける。

「久しぶりにこんな楽しい気持ちになれた。まさか4点も取られるなんて想定外ですよ。でも、下馬評どおり、案の定負けて、なんかうれしくなる気持ち、分からへんかな」

 幼いころにあこがれたブラジルとの待ちに待った初対戦だった。「僕がサッカーを始めたきっかけと無関係ではないブラジル。そのフル代表と初めて試合をするようになった」と、感無量の面持ちを見せた。

 右ふくらはぎ痛で12日のフランス戦(1-0)を欠場していたが、プレーに陰りはなかった。中村憲剛(川崎F)と2トップ気味でトップの位置に入り、随所で攻撃のアイデアを発揮した。全体練習に合流したのは2日間だけだったが、コンビネーションでも問題は皆無で、試合が始まってみればザックジャパン随一の存在感を見せた。

 前半9分、香川真司(マンチェスター・U)からのパスを受け、ゴール前でシュート。GKに阻まれはしたが、本田がいればフランス戦前半のような攻め手のない状況には陥らない。期待は膨らむ。

 だからこそもったいなかったのは、早い時間帯に先制され、前半のうちに2点を失ったことだ。ブラジルは時間を追うごとに守備を固めていった。

 後半になると“ゼロトップ”の布陣になり、ここでも本田は奮闘したが、ブラジルのゴールを割るには至らなかった。

 そんな中、決定機かと思われたのは0-3となった後半16分だ。PA内を切り裂いていった本田は相手DFに倒された。だが、笛は鳴らない。本田は「審判のことはあまり言いたくない」と多くを語らなかったが、PKを得てもおかしくないプレーだった。

 W杯まであと1年半。欧州での2連戦のうち1試合しか出られなかった本田だが、胸に響いたものは大きかったようだ。「W杯優勝という目標に変化はないか」と聞かれ、「当然でしょ」と即答し、「(4点差という)点差ほどの差はなかったと思っていますから」と言い切った。

 トップ下で、トップで、そしてゼロトップでも力を見せるのが本田スタイル。相手が強ければ強いほど多くのものをつかむのが本田スタイル。

「ブラジルに簡単に勝ったら、この先、面白くなくなる」

 最後は本田らしい言葉が高らかに響いた。

(取材・文 矢内由美子)

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