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日本vsオマーン 試合後のザッケローニ監督会見要旨

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[6.3 W杯アジア最終予選 日本3-0オマーン 埼玉]

 W杯アジア最終予選は3日、開幕し、B組の日本代表はホームでオマーン代表と対戦し、3-0で快勝した。前半12分、MF本田圭佑のゴールで先制すると、後半6分にFW前田遼一、同9分にFW岡崎慎司が追加点。オマーンの反撃にも冷静に対応し、そのまま無失点で逃げ切り、最終予選初戦を完封勝利で飾った。

以下、試合後のザッケローニ監督会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「観客の皆さんの後押しもあって、素晴らしいゲームができたと思う。ベンチからみる風景には素晴らしいものがあった。選手たちもサポーターの後押しを受けて、この試合が大切だというのを再確認したのではないかと思う。再確認した上でこのゲームに入ってくれた。初戦を取ることの大切さを強く持ちながら選手たちは戦ってくれたと思うし、私が描いていた通りのゲーム内容にしてくれたと思う。試合前には何人かの選手に緊張しすぎかなという姿も見えた。
 主導権を握ろうというつもりで試合を進めたわけだが、相手は中を固めて、うちの真ん中を消してきた。3次予選の最後のところで無失点で切り抜けたのと同じ戦い方をしてきたわけだが、試合前日の会見で話したように中を崩していくにはうちのプレーができるか、うち次第だと思っていた。
 うちのチームが良かったところはサイドを積極的に攻め上がることで、相手のDFラインの間隔が広くなり、そこをうまく突けたと思う。サイドではある程度リスクを背負っていこうと言っていた。意味のあるプランだったなと思っている。サイドのところでたくさんのチャンスが生まれたし、守備の局面に入っても相手にほとんどチャンスをつくらせなかった。リスクを負っても、そこは良かったと思う。相手は1本くらいしかシュートを打ってないのではないかと思う。ピッチに立った14人の選手全員をほめてあげたいと思うし、チーム全員で攻撃をして、チーム全員で守備をしたと思っている」

―試合前、後半開始前に選手にかけた言葉は?
「試合前に選手たちに出したリクエストは、意識を上げて高いリズムでプレーをしてくれと。このチームの能力が生かされるのは高いリズムでゲームを進めているとき。うちのいいプレーが出るときというのは、パスの距離感が2m、3mのときではなく、15mくらいの距離感で早いリズムでパスを回したときだと思う。
 ハーフタイムに出した指示は、引き続きオフザボールのプレーを止めないでプレーを続けること。後半は私の指示通りに選手たちは動いてくれたと思うし、選手たちには非常に納得している」

―前半、点を取ったあとの残り30分のプレーが本来のプレーではないように見えたが?
「リズムは確かに落ちたようにも見えたが、前半全体を見るとまあまあ良かったのではないかと個人的には思っている。しかし、このチームの選手たちの能力を見ると、今日のようにコンビネーションがつながるのであれば、前半で試合を決めることもできたのかなと思う。
 チームがリズムを落としたのは、前半からオマーンが失点したので、前半の早いうちから相手が前がかりになってくるのではないかと探っているようになったからではないかと思う。それもあってハーフタイムには継続して日本のプレーをしてほしいと、スペースをつくる動きをもっと出してほしいと指示を出した。オマーンが前がかりに来なかったので、自分たちでスペースを見つけていくしかないと伝えた。しかし、90分間ずっと100%の力でいくわけにはいかない」

―緊張している選手がいたと話したが、具体的にどんな様子だったのか?
「非常に集中していた状況だったと思うが、やはり頭の中ではこの初戦がどうなるのか、もしこの初戦を落としてしまったらどうなるんだろうというのを考えてしまったと思う。また、集中しすぎているような状態だったと思う。そのあたりはランチのときの様子から見て取っていた。通常であれば食事のあとに談笑というか、話をして部屋に上がっていくが、ほとんどの選手がすぐに部屋に戻っていくのを見て、少し緊張しているなと感じた」

―初戦として理想的なスタートだったと思うが、左サイドでは香川が本来の力を発揮するようになっていたこともあり、右サイドが見劣りしたように感じられたが?
「右サイドと左サイドは2つの異なったタイプのサイドだと思っている。左サイドではプレーをつくる。右サイドはゴールに直結する。または右サイドからゴールに向かうプレーができたと思っている。どちらのサイドもよくやってくれたという感想。クロスが上がったサイド、ゴールを決めにいったサイド。右サイドに関して言えば、右をスタートポジションにして、ゴールに迫ったという印象を持っている。この場合の右サイドは本田圭佑を含めての右サイドだ」

―これまでの初戦は苦戦してきたが、これだけの試合ができたのはメンタルコントロールがうまくいったからか?
「心配していたのは、この試合に合わせていく中でのメンタルとフィジカルの部分。それがここに照準が合ってくるかが心配だった。選手たちはこの試合の大切さ、この試合に照準を当てる大切さをよく理解していたので、実際にいい形で入れたし、試合のほとんどの時間を自分たちのペースで進めることができた。勝利に導いてくれるチームコンセプトはある程度統一ができている段階なので、試合に向けてメンタルとフィジカルがどういう状態で入れるかというのが大切になってくる。
 チームは非常にいい準備ができたと思うし、ほとんどの時間で攻撃ができていた。今回のオマーンのように引いてくる、なかなかスペースを与えてくれない相手に対して、自分たちでスペースを見つけながら、先ほど言ったようなことができたのは良かったのではないかと思う。最終的な結果とシュート数を見れば、半端な結果に見られがちだが、オマーンというチームは3次予選の後半を無失点で切り抜けてきている。そういった相手に対して、これだけできたということ」

―本田が点を決めたとき、日本語で「やったー」と言っていたように見えたが?
「あのゴールに関しては非常にうれしく思っている。試合前から本田には『クロスが上がったときにはあのタイミングで、できればファーに』と話をしていた。その通りの形になった。本田はいつも私の指示を忠実に聞いてくれる。とにかくうれしかった」

―本田は素晴らしいパフォーマンスをみせたが、どんな魔法をかけた?
「本田に関しては、アゼルバイジャン戦の前、ほぼ1年くらい、2011年の8月まで振り返らないといけない。ボールをキープできる選手だが、チーム全体がオフザボールの動きでボールホルダーに対してチョイスを出すことができれば、だいたい彼はきれいにボールを離す。本田自身もオフザボールの動きが非常によく利いていて、試合のほとんどを相手のアンカーやボランチにマンマーク気味で付かれていたが、それを外す動きが良かったと思う」

―次の試合へ向けて手を加えたいところはあるか?
「今日の時点で大切なことは勝ち点3を取れたこと。今後、この勝利をどう活用するかがキーになってくる。今日はどうして勝てたのか、今日はどのようにして勝てたのかというところを自分たちで探っていくことができれば、次もいい形で臨むことができると思う。3-0で今日は勝って、『簡単なゲームだ』と思ってしまったら、次の試合は難しくなる。
 私自身もサッカーの世界に長くいる人間だが、チームには成長するために常にリクエストを出してきた。これからもチームにはさらなる成長を求めていきたい。サッカーでは常に結果が伴うものではない。それは分かっているが、少なくとも勝利するためにプレーをしなければならない。チームはやはり勇気とバランスを持ってプレーしなければならないと思う」

(取材・文 西山紘平)

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