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「宏樹が1人で上げてよ」「絶対に周作くんと上げたい」ACL王者浦和が優勝トロフィーを2人で掲げた理由

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DF酒井宏樹とGK西川周作が2人でトロフィーを掲げた

[5.6 ACL決勝第2戦 浦和 1-0 アルヒラル 埼玉]

 5大会ぶり3回目のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を果たした浦和レッズの優勝セレモニーでは、DF酒井宏樹とGK西川周作が2人でトロフィーを掲げた。最初のリフトアップはキャプテンが行うのが一般的。他のチームではなかなか見られない珍しい光景だった。

 この計らいは現キャプテンを務める酒井たっての願いだったようだ。

 試合後、酒井は異例のリフトアップに至った経緯を明かした。「準決勝までは周作くんがキャプテンだったし、ACLは2人でリレーしていて、僕は最後のところの美味しいところだけ持っていった。ほとんど周作くんがつなげてきた力なので二人に上げたいなと」。さらに「本人は嫌がっていたけど、強引に巻き込みました」と笑みを浮かべて付け加えた。

 コロナ禍とACLシーズン移行の影響により、昨年3月のプレーオフから約1年2か月間をかけて行われた異例の今大会。一昨季の天皇杯制覇で出場権を獲得した浦和にとって、アジア制覇は丸2年を通じたビッグプロジェクトだった。

 21年6月にマルセイユから浦和に加わった酒井は3年目の今季からキャプテンを担当。昨季までの2年間は西川がこの大役を担っていた。重圧に耐えながら厳しい戦いを勝ち抜いてきた前任者への思いがセレモニーでの提案につながっていたようだ。

 また酒井に続いて取材エリアに姿を現した西川は「宏樹が声をかけてくれて、周作くんと絶対に上げたいって言ってくれていた。『宏樹が一人で上げてよ』って言ったけど、宏樹とは去年の苦しい時期も一緒に経験してきた仲なのでいろんな思いがあった」と酒井からの提案を受け入れた理由を明かした。

 何より西川にとって、このトロフィーは自身が主将を務めていたということ以上の重みがあった。

 天皇杯は2回戦・富山戦でのFWキャスパー・ユンカーの決勝点に始まり、準決勝のC大阪戦ではMF宇賀神友弥、決勝の大分戦ではDF槙野智章が決勝点を挙げるなど、すでにチームを離れた選手たちの活躍で突破を果たし、アジア進出につなげていた。

 また昨年のACLでも準決勝で劇的な同点ゴールを決めたユンカーのほか、MF江坂任、FW松尾佑介らの活躍が欠かすことができなかった。当時率いていたリカルド・ロドリゲス前監督はこの日、埼玉スタジアムの2002のスタンドで戦況を見つめていた。

「このACLは特別で、こんなに長いACLはなかった。ウガやマキのゴールから始まって、去年いた選手、リカルドもそうだし、いろんな選手の思いがあったACLだった。だからこそなんとしても取りたかった」(西川)。ピッチ上でも絶大な信頼感を発揮してきたトロフィーを掲げた2人。その光景の裏には厳しいアジアの戦いを勝ち抜いてきた全員の思いが詰まっていた。

(取材・文 竹内達也)
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