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ユース取材ライター陣が推薦する「クラセン注目の11傑」vol.2

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土屋記者が推薦するMF皿良立輝(セレッソ大阪U-183年)

 ゲキサカでは7月23日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集! 「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。

 土屋記者「真夏の群馬を舞台に繰り広げられるクラブユース選手権。今回も最高学年に当たる3年生の中から、11人の注目選手をチョイスしました。クラブユースの選手にとっては、これがシーズンの中でも最初で最後の全国大会。3年生にとっては高校生最後の夏休みの思い出として、1人でも多くの選手に素敵な記憶が刻まれることを陰ながら願っています!」

以下、土屋記者が推薦する11名

GK小林将天(FC東京U-18、3年)
一度ゾーンに入ってしまうと、この守護神からゴールを奪うのはどのストライカーにとっても困難なミッションだ。シーズン前に参加したトップチームのキャンプでも「シュートストップの場面では結構アピールできたのかなと思います」と本人も言い切るように、シュートストップのレベルは世代屈指。常に年代別代表に招集され続けているのも頷ける。もともとはフィールドプレーヤーだったが、「小学5年ぐらいの頃に遊びでキーパーをやっていたら意外と止められて、『何かいいなあ』と思って」自らの希望でGKに転身。その頃に活躍していたマヌエル・ノイアーの姿が脳裏に焼き付いているという。今シーズンはチームのキャプテンにも指名されており、責任感もより一層増してきた。齋藤朝陽後藤亘をはじめとするハイレベルなライバルとのチーム内競争を繰り広げる中でも、小林の圧倒的な存在感は今のFC東京U-18にとって絶対に欠かせない。

DF佐藤柚太(ヴァンフォーレ甲府U-18、3年)
「右サイドは全部行ってやろうと。自分で崩して点を獲るみたいな感じで、ガンガン前に行きたいです」と口にする、カイル・ウォーカーに憧れている超攻撃的な右サイドバック。今大会の関東予選ではチーム事情でセンターバックを務めていたが、「自分は1対1に強みもあるので、そこには自信があります」と話しながら、「センターバックでもたまに上がったりしちゃいますね」と笑顔でニコリ。そのアグレッシブさはプレーの随所に滲み出ていた。U-12からU-15までは名古屋グランパスでプレーし、高校進学時に甲府U-18へ加入。今大会には“古巣”も出場しているため、「良い大会だったなと思えるように、まずはグループステージを突破して、1つ1つ積み上げていって、少しでも優勝に近付けるように頑張りたいです」と掲げた目標に加えて、全国で元チームメイトたちとの“再会”を待ち侘びていることも想像に難くない。

DF市原吏音(大宮アルディージャU18、3年)
1年生から主力を張り続けてきたタレントも、いよいよ最終学年を迎えてキャプテンに就任。「去年は凄い先輩たちがいっぱいいて、その先輩たちにちょっと寄りかかっていたところもあったんですけど、今年はより一層自分の足で立つだけではなくて、後輩のカバーもしなくてはいけないと思います」と自覚も十分。オレンジ軍団の最終ラインの中央に逞しくそびえ立つ。ただ、その立ち位置はここに来て変わりつつある。7月12日の天皇杯3回戦・セレッソ大阪戦でスタメンフル出場を果たすと、4日後のJ2第26節の栃木SC戦でもフル出場で無失点に貢献。強さと高さとしなやかさを兼ね備えた才能はプロの舞台でも確実に通用しているため、このままトップチームへ定着する可能性も。「『このクラブに結果で恩返ししたい』というのが今年の一番の自分の目標です」と話していたセンターバックは、果たして真夏の群馬に現れるのか。

DF林奏太朗(サガン鳥栖U-18、3年)
センターバックもボランチも高次元でこなしてしまう、クールなレフティだ。丁寧なビルドアップの正確性はもちろん、「自分は左利きでパスを売りにしているので、ロングキックで違いを出していきたいです」と自身も語る左足でのロングフィードは、一発でチームメイトに決定機を創出する代物。所属チームの鳥栖U-18ではリサンドロ・マルティネスを参考にしているというセンターバックでプレーし続けており、守備強度も着々と身につけつつあるが、年代別代表ではボランチでプレーすることも。その際のお手本として「藤田直之選手はパスの配球も上手いですし、攻撃でも守備でも強度を落とさないところが凄く参考になりますね。万能な選手だと思います」とレジェンドの名前を挙げるなど、クラブの歴史も十分に理解している様子。最終ラインから攻守を掌握する司令塔が、3年ぶりとなる日本一のキーマンへ名乗りを上げる。

DF池田春汰(横浜F・マリノスユース、3年)
そのプレーを見れば、サッカーIQの高さは一目瞭然。トップチーム同様にサイドバックが独特のポジショニングを取るユースの中でも、内側も外側も自在に泳ぐ池田の役割はチームの重要なピースを占める。高校1年の秋まではボランチをやっていたこともあり、「センターバックが競った後のカバーリングは意識していますし、セカンドボールの反応は得意な方だと思います」と守備時の効果的な動きはお手の物。失点を覚悟するような局面で、この男がピンチを救うゴールカバーを披露してきたことも一度や二度ではない。加えて、インサイドでボールを受けてサイドへ展開したかと思えば、「前に上がっていって、点に関われるのも僕の良いところ」と口にする通り、周囲との連携でスルスルと左サイドを駆け上がって、決定的なクロスを供給するシーンも多々。トリコロールが誇る現代型サイドバックのハイクオリティなプレーは一見の価値がある。

MF石山青空(アルビレックス新潟U-18、3年)
クラブとして5年ぶりとなる、U-18からのトップチーム昇格を手繰り寄せた新潟生まれのファンタジスタは、リオネル・メッシやケビン・デ・ブライネの動画を繰り返しチェックしているだけあって、「1.5列目で受けてのターンだったり、ゴール前でのアイデアや迫力、スルーパスが得意です」と自身でも分析する、ゴールを演出するようなプレーに大きな特徴を持つ。3月8日のルヴァン杯・アビスパ福岡戦でトップデビューも飾るなど、周囲からの期待も高まっているが、「自分に満足しないようにということは一番強く思っていますし、それがなかったら上手くならないと思います」という向上心にあふれる言葉も頼もしい。仰ぎ見るのは自分と同じ“U-18の10番”を背負った先輩。「アルビから海外に行った至恩くんはユース出身ですし、同じ環境で育った人なので、自分もそうなりたいです」。本間至恩に憧れながら、“至恩超え”も真剣に狙っている。

MF坂本翔偉(ヴィッセル神戸U-18、3年)
プレミアリーグWESTでは前半戦全11試合にフルタイム出場。「僕は口で『どうせい』というようなタイプではないので、戦う部分やチームを鼓舞する部分で頑張っていこうかなと。もう自分がやるしかないですし、『やってやるぞ』という感じです」とキャプテンとしての強い存在感を放ち続けている。また、プレー面でも「自分は身体の強さが売り」と認める高い強度で、ドイスボランチの一角を任され、攻守を繋ぐ役割もまっとう。周囲には才能あふれる下級生が居並ぶ中で、彼らを気持ち良くプレーさせながら、機を見た攻撃参加ではゴールを挙げ切る決定力も見せ付けており、確実にできることの幅も広げている。「僕は小学校5年生からヴィッセルに入ったので、今年は悔いのないように、これまで積み上げてきたものを存分に発揮できたらなと思っています」と意気込むヴィッセルアカデミーでのラストイヤーで目指すのは、もう日本一だけだ。

MF中村駿太(ジュビロ磐田U-18、3年)
とにかく効きまくっている。「よくみんなからは『カンテに似ている』と言われるんですけど、ガンガン行く感じのプレーはガットゥーゾ選手が凄いなと思って、モチベーションを上げるために動画を見ています」という言葉は、そのプレースタイルを過不足なく表している。163センチという小柄な身体に積み込んだ高性能エンジンは、90分間フル稼働がベース。「相手がヘディングした時の目線とか身体の向きとかでだいたいボールの落ちてくるところがわかるので、そこにすぐ反応できるような身体の向きも意識してやっています」と頭も高速で回転させながら、ボールの行き先へと誰よりも早く先回りしていく。「寮からすぐ見えるので、トップチームの練習も見ています」という視線の先によく捉えているのは、遠藤保仁と上原力也とのこと。カンテとガットゥーゾのハイブリッド系ボランチは、サックスブルーのど真ん中に太い軸を通す。

MF鈴木陽人(名古屋グランパスU-18、3年)
9歳から一貫してこのクラブでプレーし続けてきた生粋の“グランパスっ子”は、トップチーム昇格も内定。笑顔いっぱいで晴れの会見に臨む姿が印象的だった。今シーズンはキャプテンを任されているように、人間性も抜群。自身のストロングを問われ、「ゴールに直結するプレーというのは自分の得意なプレーで、その中でもサイド45度くらいでボールを持った時は注目してほしいというか、ワンツーだったり、仕掛けに行ってシュートだったり、逆サイドまでのロングボールだったり、そういういろいろなアイデアは自分の武器かなと思っています」と一息に言い切れる頭の良さも持ち合わせている。まだ1年生だった2年前には、夏の日本一を勝ち獲ったファイナルのピッチにも立っており、重ねてきた経験値もチーム有数。「基本的には一番早くグラウンドに出てきて、一番にアップを始めて、という感じです」というサッカー小僧の躍動、要注目。

MF皿良立輝(セレッソ大阪U-18、3年)
10番でキャプテン。自ら背負った重責は、思った以上にのしかかる。「今年は10番を付けたいと思っていましたし、もらった時には嬉しかったですけど、そのあとでキャプテンをやることになって、自分では“10番のキャプテン”でも普通にやれるかなと思っていたんです。でも、プリンスの開幕戦なんてプレミアの時より全然ガチガチで(笑)、『ああ、背負っているものがあるな』とその重みを感じたんですけど、今は慣れてきて、何とかできているという感じです」。プリンスリーグでは開幕3連勝を飾ったものの、以降はまさかの4連敗。ようやく5試合ぶりに白星を手にした試合には、脳震盪の影響で欠場するなど、なかなか理想と現実が嚙み合わない日々が続くが、悪魔の左足に宿したクオリティと野心に疑いの余地はない。彼らだけが目指すことを許されている大会連覇には、この“10番でキャプテン”の爆発が必要不可欠だ。

FW岡崎寅太郎(川崎フロンターレU-18、3年)
連覇を狙うプレミアリーグEASTでは、既に前半戦だけで昨シーズンの自身の数字を上回る10ゴールを記録し、得点ランキングトップタイに。「ボールを受けた時のアイデアだったり、ゴール前での突破力とかフィニッシュの部分は強み」とは本人だが、セカンドトップの位置から、単騎での勝負と周囲との連携を巧みに使い分け、常にゴールへ向かうアグレッシブさはチームの中でも群を抜いている。今季から託された9番は「1年生の時に目標にしていた田中幹大くんが背負っていた番号ですし、去年は(五木田)季晋くんが背負っていた番号で、点を獲らなきゃいけない番号だと思っています」と意気に感じるストライカーナンバー。プレミアの開幕戦でラウタロ・マルティネスのプレーを参考にしてボレーを決めてから、新たに襲名した“トラタロ・マルティネス”がゴールを重ねることは、チームの悲願とも言うべきクラセン初優勝の絶対条件だ。


■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に『蹴球ヒストリア: 「サッカーに魅入られた同志たち」の幸せな来歴』(footballista)。」
●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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