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[MOM4390]G大阪ユースMF當野泰生(1年)_「ホンマに悔しかった」ベンチでの日々…出場3分後に日本一への同点弾

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控えめなゴールパフォーマンスを見せたMF當野泰生(1年、背番号34)

[8.2 日本クラブユース選手権決勝 FC東京U-18 3-3(PK4-5) G大阪ユース 味フィ西]

 もっと俺を使え——。ガンバ大阪ユースに16年ぶりのクラブユースタイトルをもたらしたのは、堂々たるメンタリティーを持ったルーキーの活躍だった。1点ビハインドのまま終盤に差し掛かった後半34分、MF當野泰生(1年)がピッチに投入されると、たった3分後に大仕事。MF森田将光(2年)のパスを受けて力強く右足を振り抜き、起死回生の同点弾を突き刺した。

 シュートシーンは「あまり覚えていないけど感覚で打った」という當野。それでも今大会で抱え続けてきたフラストレーションを発散させるかのような一撃だった。

「この大会は最初から出場機会に恵まれなくて、予選からずっと悔しい思いをしてきた。最後に決勝で何かチームにもたらせたらそれでいいなと思っていた」

 グループリーグ初戦から出場機会は得ていたものの、与えられた時間は最後の数分間のみ。ルーキーという立場に甘んじることもなく、ベンチから眺める試合の景色に葛藤を感じていたという。

 そうした複雑な思いを抱えていたのも、自信があったからだ。「初戦から決勝まで、ベンチで見ていて『いつ出ても行けるな』と思っていた。ゴールだけ目指してチームに貢献できるようにという気持ちで頑張った」。

 その一方、いざ決めた後のゴールパフォーマンスでは、誇らしげな表情こそ浮かべつつも、歓喜の表現は両手を大きく広げたのみで控えめなものだった。「ホンマにこの大会悔しかった。ゴールを決めてやっとや…という感覚だった。まだまだこんなところで満足していたら終わり。試合もまだ同点だったし、喜ぶのは早いなと思っていた」。

 その後も試合を決めるには至らなかったが、堂々のメンタリティーはPK戦でも活きていた。3人目のキッカーとして登場した當野は、全く焦りを感じさせない助走から余裕で成功。「緊張せずに落ち着いて蹴れた。自信あるんで決めるだけでした」。ルーキーらしからぬ強心臓っぷりを見せ、日本一のタイトルを大きく手繰り寄せた。

 そんなルーキーたちの活躍には町中大輔監督も「パフォーマンスもすごく良い1年生ばかりで、誰が出ても良いパフォーマンスをしてくれると信じていた。それがピッチで表現できた」と称賛。「スタートでは絡んでいなかったけど、日頃の練習からやる気に溢れていて、俺を使えというオーラが多い1年生なのでたくましい」と目を細めた。

 また當野にとっては、酷暑の大会にもかかわらず現地で応援をしてくれたサポーター、負傷で試合に出られないMF田中彪雅ら3年生の存在も大きな活力となっていたという。「心強いサポーターと、怪我で苦しんでいる3年生とがずっとみんな戦ってくれていた。最後に自分がゴールできたけど、弱気なプレーはできないと思うし、自信を持ってやるだけだった」と感謝の気持ちを口にした。

 もっとも、時間限定での活躍となったこの大会で、全てを出し切れたわけではない。幼少期に取り組んでいた体操と水泳の経験に加えて、「小学校低学年にいたチームが足でサッカーをするというより、体全体でやるというちょっと独特なチームだった。今のプレースタイルはそこで磨いたもの」というFC Salva de Souza(サルヴァ・ジ・ソウザ)で身につけた身体動作のセンスはさらに輝くポテンシャル大。憧れのMFアンドレス・イニエスタのようなワールドクラスの選手になるべく、すぐに高みを見据えていた。

「世界で活躍しないといけないと思っているので、この日本一という経験だけではスタート地点にも立てていない。これから世界で活躍できるように頑張りたい」。あくまでもここが出発点。まずはチームの先発に定着すべく、さらなるアピールを続けていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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