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G大阪が16年ぶりクラブユース日本一!! 80+4分に勝ち越しも直後の同点被弾で3-3大激闘、最後はMF遠藤楓仁“父親譲り”のキックでPK決着

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ガンバ大阪ユースが16年ぶりクラブユース制覇

[8.2 日本クラブユース選手権決勝 FC東京U-18 3-3(PK4-5) G大阪ユース 味フィ西]

 第47回日本クラブユース選手権(U-18)大会は2日、東京都の味の素フィールド西が丘で決勝戦を行い、ガンバ大阪ユースFC東京U-18が対戦した。互いに点を取り合う激闘は2-2で迎えた後半アディショナルタイム4分、G大阪のMF武井遼太郎(1年)が劇的なゴールを決め、終止符が打たれたかと思われたが、ラストプレーの同6分にFC東京のDF永野修都(2年)がこの日2ゴール目となる起死回生の同点弾を記録。最後は延長戦でも決着がつかずPK戦にもつれ込み、7人目のMF遠藤楓仁(3年)が仕上げのキックを沈めたG大阪が16年ぶり4回目の優勝を飾った。

 奇しくも1-1の引き分けに終わったグループリーグ開幕節と同じ組み合わせとなった“クラセン”決勝戦。立ち上がりは両チームともに出方をうかがう展開となったが、先にスコアを動かしたのはG大阪だった。

 前半26分、U-17日本代表のMF宮川大輝(3年)が中盤で相手の背後にボールを蹴り出すと、FC東京守備陣のクリアが中途半端になったところにプレッシャーをかけ、MF天野悠斗(2年)がボールを奪取。天野はDF和泉圭保(3年)とのコンビで左サイドを打開し、マイナス方向へのパスを送ると、これを受けたFW安藤陸登(2年)が右足を振り抜き、グラウンダーでのシュートをニアポスト脇に突き刺した。

 安藤は準々決勝・大分U-18戦(○5-1)での2ゴール、準決勝・岡山U-18戦(○1-0)の決勝ゴールに続き3試合連発で、得点ランキング2位の今大会5ゴール目。着実に結果を積み重ねてきたストライカーの一撃で先手を取った。

 ところがその直後、FC東京が早くも試合を振り出しに戻した。前半28分、U-17日本代表のMF佐藤龍之介(2年)が右サイドの深い位置にボールを持ち運び、相手の守備ラインを大きく押し下げると、バックパスをDF金子俊輔(2年)がダイレクトでクロス。これにFW山口太陽(2年)が高い打点のヘディングで合わせ、豪快にG大阪ゴールを破った。

 山口も決勝トーナメント1回戦・川崎F U-18戦(○2-1)と準決勝・清水ユース戦(○4-1)での2ゴールに続く今大会5得点目。負傷の影響でU-17アジアカップ参加を見送られ、この夏に向けて並ならぬ決意で臨んできたエースが決勝でも輝きを放った。

 その後はFC東京が主導権を握る時間帯が続き、豊富な運動量を見せたMF菅原悠太(1年)のカットインシュートや、トップ下の位置で圧巻の存在感を放つ佐藤のゲームメークでG大阪ゴールに迫る。だが、G大阪ユースもDF古河幹太(2年)、DF山口遥太(3年)のセンターバックコンビを中心にゴール前で身体を張り続け、1-1のままハーフタイムに持ち込んだ。

 すると後半はG大阪が一転、良い立ち上がりを見せ、FC東京のプレッシングをかいくぐっって何度も敵陣に攻め込んでいく。同7分には宮川の浮き球パスをMF森田将光(2年)が折り返し、後方から攻め上がったDF與那嶺虎汰朗(3年)に決定機。これはDF沼田青瑳(2年)の好ブロックに阻まれたが、同10分にも波状攻撃から天野が惜しいシュートを放った。

 それでも後半29分、粘り強く試合を進めていたFC東京が試合を動かした。途中出場のFW吉田綺星(3年)の突破力を活かしたサイド攻撃が機能していた時間帯で左CKを獲得すると、佐藤がG大阪のU-17日本代表GK荒木琉偉(1年)がギリギリで触れないコースに低弾道キックを蹴り入れ、永野が準決勝に続いて豪快なヘディングシュートを突き刺した。

 ところがG大阪は直後の後半30分以降、ベンチに控えていたFW久永虎次郎(1年)、FW武井遼太朗(1年)、MF當野泰生(1年)を次々に投入。すると同37分、再び試合は振り出しに戻った。G大阪はMF大倉慎平(2年)のインターセプトからカウンター攻撃を仕掛け、當野が森田とのワンツーでゴール前に潜り込むと、力強く右足一閃。強烈な弾丸シュートを突き刺し、同点に追いついた。

 1年生トリオの投入を機に勢いに乗るG大阪。西が丘に集まったサポーターの熱量も高まる中、後半アディショナルタイム4分、ついに試合を決定づける1点を奪った。右サイドでのスローインでボールを前に進め、相手のクリアミスで裏に流れると、これに武井が追走。ペナルティエリア右で仕掛けて相手をいなし、左足シュートでニアポスト脇を撃ち抜いた。第4審が表示した「4分」のアディショナルタイム終了間際に奪った勝ち越し弾。G大阪の選手たちも勝利を確信したゴールパフォーマンスを見せた。

 しかし、激闘はここでは終わらなかった。ゴールパフォーマンスによって延びた後半アディショナルタイムは5分を回る中、FC東京は金子のロングフィードで裏を取ると、うまく抜け出した吉田がマイナス方向に浮き球のクロスを配球。これに合わせたのは永野。この日2点目となるヘディングシュートを押し込み、起死回生の同点ゴールとなった。直後に主審のホイッスルが吹かれ、前後半は終了。最後まで息もつかせぬ激闘は延長戦にもつれ込む形となった。

 延長戦は追いついた勢いの残るFC東京が主導権を握り、佐藤と山口のタレントコンビに加え、途中出場のFW尾谷ディヴァインチネドゥ(1年)が縦への迫力を見せる。だが、G大阪も体調不良明けで途中出場となったMF遠藤保仁(磐田)の長男・楓仁が試合のリズムを落ち着かせ、相手に脅威を与えるシュートを連発。後半の最後はFC東京のシュートミスが続いたこともあり、両者譲らぬまま3-3で規定の100分間を終え、勝負はPK戦に委ねられることになった。

 PK戦では先攻・FC東京の1人目を担った佐藤のキックが枠外に外れる波乱の幕開け。その後は次々に成功させたが、G大阪も4人目武井のキックが外れ、同点となる。運命の5人目はG大阪のGK荒木が山口のキックをストップし、王手をかけたが、G大阪の古河のキックをFC東京GK後藤亘(2年)がストップ。サドンデスにもつれ込んだ。

 決着がついたのは7人目。FC東京は途中出場のDF佐々木俊英(1年)のキックが枠を外れると、G大阪は「背番号7なので7人目に蹴った」という遠藤がキッカーに登場。父親・遠藤保仁から「見て学んだ」というそっくりのキックフォームから力強いシュートを蹴り込み、勝利が決まったG大阪の選手たちが歓喜を爆発させた。

 G大阪は降格1年目のプリンスリーグ関西1部で2勝2分5敗の8位と苦戦が続いていた中での戴冠。町中大輔監督は「やっていることはほとんど変わらない。パスの強さ、どっちの足につけるか、どのポジションを取るかといったことを細かく指導してやってきたつもり」と述べ、「徐々に選手たちも意図を持ってプレーすることができてきて、それが成功体験につながったのが非常に大きい」とこれまでの積み重ねを誇った。

 指揮官はかつて稲本潤一、大黒将志ら“黄金世代”と共にプレーしていた経験を持つG大阪ユースOBで、今年4月の就任から「われわれガンバアカデミーがこだわってきた」という技術指導を突き詰めてきた。「当たり前のことを選手が理解してプレーで表現できるようになってきたことがよかった。それが成果になりつつあるんじゃないかなと思う」(町中監督)。伝統に立ち返った名門クラブが、大きな自信を取り戻す夏の日本一に輝いた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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