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[選手権予選]2回戦注目カードは「我慢強い」習志野が幕張総合下す:千葉

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[8.27 全国高校選手権千葉県予選決勝T2回戦 幕張総合1-5習志野 スポレク]

 第91回全国高校サッカー選手権千葉県予選、決勝トーナメント2回戦の最注目カードとなった習志野対幕張総合戦は、CB藤原直哉(3年)の先制ヘッドなどで習志野が5-1で勝利。流通経済大柏と対戦する3回戦(10月27日)進出を決めた。

 3回戦で対戦する流経大柏の選手たちが視線を送る中、習志野が千葉県1部リーグ1位対2位の強豪対決を制した。攻撃の柱である10番MF安芸銀治(3年)を負傷で欠く習志野は前半、守備の連係が取れず、前線からの守備にズレが生じてしまう。ショートパスをつなぎ、ヒールパスでのスイッチも多用してくる幕張総合に振り回されるような場面もあった。

 だが、今春八千代から転任してきた砂金伸監督が「リーグ戦とは違うプレッシャーはあるけれど、負ける気はしなかったですね」と語ったように習志野は前半終了間際の先制点で試合の流れを傾ける。37分、SB大坪煕史(3年)の左CKをニアサイドへ走りこんだ藤原が「ヘディングには絶対に自信を持っている。頭で決めようと思っていた。決められて良かった」と187cmの長身を活かしたヘディングシュートでゴールへ突き刺した。

 快晴だった前半から大粒の雨へと空模様が変わった後半、習志野は12分にもセットプレーから追加点を奪う。右CKのこぼれ球を拾ったMF小川康太(3年)が左サイドをえぐってクロス。最後は中央のFW齋藤俊輔(3年)が左足でゴールへ押し込み、リードを広げた。

 ただ雨脚が強くなったその後は完全に幕張総合ペース。23分にはゴール正面から縦に仕掛けたFW岩松永理(3年)の左足シュートがポストをかすめ、27分には交代出場のMF三森悠司とFW竹内隆太(ともに3年)が立て続けに決定的なシュートを放つ。だが、習志野は千葉県選抜の守護神として昨年の山口国体で優勝しているGK佐々木祐紀(3年)が立ちはだかり、追撃を許さない。

 激しさを増した雨の中、両サイドから波状攻撃を繰り出す幕張総合は32分にも竹内が決定機を迎えるが、習志野は佐々木がストップ。35分にもゴール前での揺さぶりからMF小池雄人(2年)が右クロスに飛び込んだものの、わずかに合わず。1点が遠い幕張総合に対して習志野は後半40分、MF釣巻涼(3年)が勝敗の行方を決定づける3点目。ロスタイム突入後の42分にもMF吉野清太郎(3年)のスルーパスから交代出場のDF花元洋慶(2年)が右足で加点して4-0とした。

 意地を見せたい幕張総合は44分にMF佐藤啓太朗(3年)がゴール正面右寄りの位置から左足FKを決めて1点を返す。だが、習志野は45分、釣巻の左足ループで5点目を奪い、試合を締めた。

 11年間指揮を執った水庫祥元前監督から砂金監督体制へと変わった今年、「水庫前監督とやり方が全然違った。より考えるサッカーになった」(佐々木)ことで選手たちは戸惑った。関東大会予選では2回戦で東京学館浦安に敗れ、県リーグでは渋谷幕張、柏井相手に黒星。八千代と対戦した県総体1回戦では後半ロスタイムに同点に追いつかれてPK戦の末に敗れた。選手間では「大丈夫かよ」という声が出ていたという。だが、爆発力がある一方でなかなか強い相手に対して自分たちのサッカーができず、また先制しても追いつかれる悪癖は砂金監督の指導の元で徐々に改善されていく。

「乗ったら強い。強い相手でも粘り強くやれば、結果がついて来るかもしれないよ。相手をイライラさせるサッカーをしろ、と」という指揮官からチームは我慢することを学んだ。ボールを持てなくても前からのディフェンスを徹底するなど、我慢して相手の嫌なことをやり続ければ、いつか自分たちに流れは来る。これが結果にも少しずつ反映され、ジャパンユースサッカースーパーリーグでは準決勝で東京Vユース、決勝でも川崎F U-18に連勝して優勝。県リーグでは5連勝で首位に立った。この日も苦しい時間帯が続いたが、チーム内から「向こうはイライラしているゾ」という声。最後は5得点を奪って3回戦進出を決めた。

 佐々木、藤原、安芸、吉野ら今年はタレントも豊富。練習試合で連勝し、フェスティバルでも結果を残すなど春先から注目を集めていた。一時は低迷したが、現在はチームがまとまり、下級生の台頭もある。キャプテンマークを巻く藤原はこの日の戦いについて「連係の甘さがあった。これからです」と引き締めたものの、「自分たちのサッカーをやれば負けない。自信を持ってやりたい。苦しい戦いになると思うけれど、勝って国立で戦う」。まずは2か月後の3回戦。「我慢する」強さを加えた習志野が流経大柏との大一番を制し、目標へ一歩前進する。

(取材・文 吉田太郎)
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