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“東京の誘惑”を乗り越えて…磐田入団、明治大DF小川のターニングポイント

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 明治大の主将DF小川大貴(4年=磐田ユース)もユース時代を過ごしたジュビロ磐田への入団を勝ち取った。「サッカー選手になることはもちろんですが、ジュビロ磐田の選手になることを1つの目標としてきました」。4年越しの恋が叶い、再び水色のユニフォームに袖を通すことになった。

 入団の決まった磐田は今季、まさかの下位に低迷。来季はJ2リーグを戦うことが決定した。黄金期にあこがれてジュビロの下部組織に入団した小川にとっては厳しい現実だ。だが「落ちてしまったことは残念ですけど、僕はジュビロに戻りたかった。舞台がJ1であろうとJ2であろうと関係ありません」とキッパリ。「黄金時代のころのような強さを取り戻したい」と目を輝かせた。

「サッカー以外の誘惑に目が行きかけた時期もありました」。プロを意識したターニングポイントを問われた小川は自らこの話題を口にした。

 地方からの上京組にとって東京はまさしく憧れの土地。華やかな街にあこがれて毎年春には高校を卒業したばかりの大勢の18歳が、夢を抱き東京へとやってくる。だが誘惑も多く、静岡県出身の小川にも、“東京の誘惑”は容赦なく襲い掛かった。「みんなオシャレだし、服買いたいなと思いました。女の子もいっぱいいましたし…」。サークル活動、都心でのキャンパスライフにと華やかな大学生活を謳歌する同級生が恨めしく思えた。19歳の心は大きく揺れた。

 大学サッカーの壁にもぶつかっていた。これまでは試合に出ることが当たり前だったが、「途中交代で3試合くらい出た程度」と1年次はサッカー人生で初めてとも言うべき挫折を味わった。「1年生は練習の準備をしたり、みんなに連絡をしたりする“仕事”がありました。その“仕事”を理由に筋トレを怠ったり、試合に出れないことへの言い訳にした時期もありました」。挙句の果てには「働けばよかった」と親に愚痴をこぼす自分がいた。

 だが家族の言葉が再び小川を奮い立たせた。「ふざけるな。じゃあ今すぐに帰ってこい。そんな中途半端な気持ちだったらマジでやめろ」。落ちこぼれかけていた小川の心をズドンと打ち抜いた。「そこからはさらにお小遣いも減らしてもらった。お金もないので、僕にはボールを蹴るしかなかった」。“強い気持ち”を身に付けた小川は、2年次からはレギュラーも獲得。4年生になってからは主将を務めるなど、心身ともに成長を遂げた。

 小川は先日、右足第五中足骨を骨折。静岡県内の病院で手術を受け、全治3か月と診断された。だがこれには吉兆も。大学の先輩で同じく磐田で活躍するMF山田大記も3年前の同時期に同か所を骨折。リハビリに努め、ルーキーイヤーの大活躍に繋げた。主将としては現在、関東1部リーグ戦を戦っているチームに参加できないのは心残りだが、仲間は全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)への出場を勝ち取ってくれるはず。今年のインカレ決勝は12月25日。誘惑に目もくれない小川が、最高の仲間と最高のクリスマスを迎えてみせる。

(取材・文 児玉幸洋)

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