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ブンデスリーガで“逆襲”を誓う男たち…宇佐美、M・ゴメスなどの後半戦に注目が集まる

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宇佐美貴史は後半戦で巻き返しなるか

 約1か月に及ぶウィンターブレイクを経て、ブンデスリーガが今週末からいよいよ再開する。良いリスタートを切るべく、各チームは年始早々からキャンプを開始。バイエルンがけん引するタイトルレースから欧州カップ戦の出場権争い、残留を巡るサバイバルまで、再び目が離せなくなる戦いが繰り広げられようとしている。

 注目に値するのはチームだけではない。ドルトムントピエール・エメリク・オーバメヤンケルンアントニー・モデストバイエルンロベルト・レバンドフスキによる三つ巴の様相を呈しそうな得点王争い、雨後の筍のように次々と出現するヤングプレーヤーなど綺羅星の如く輝きを放つタレントの活躍からも目が離せない。

 今回のコラムで取り上げるのは、不本意なシーズン前半を過ごし、冬の中断明けからの“逆襲”を誓う男たち。日本代表の宇佐美貴史やドイツ代表のマリオ・ゴメスら、厳選した有力プレーヤーたちの現状を整理しながら後半戦を展望する。

宇佐美貴史(アウグスブルク)

 ブンデスリーガ第16節終了現在で先発出場が1試合にもかかわらず、宇佐美への期待が高まっているのはアウグスブルクの指揮官が代わったからだ。ウィンターブレイク中に暫定監督を務めていたマヌエル・バウムが監督に昇進。初めて采配を振るった第15節ドルトムント戦で、宇佐美を初スタメンに抜擢した38歳のこの青年監督が、雌伏の時を過ごした日本人アタッカーを飛躍へと導くかもしれない。

 肝心の宇佐美自身は1月4日から始まったスペイン・マルベーリャでのトレーニング合宿に参加。同7日に行われたAZ(オランダ)とのテストマッチで先発出場すると、1-0の勝利をもたらす決勝ゴールを挙げた。右からゴール前に上がったクロスを押し込むだけと、フィニッシュ自体の難易度は低かったものの、新年早々に良い滑り出しを見せたのは事実。12日のハノーファー戦でもスタメンに名を連ねている。

 アウグスブルクの公式ツイッター上で「すごく良いトレーニングができています。僕自身も僕自身の後半戦に期待していきたいです」と手応えを口にしたのは本人だ。定位置争いの強力なライバルになりうるブラジル人のカイウビーが依然として負傷離脱している中、宇佐美は2列目左サイドのポジションを自分のモノにできるか。

 今週末に再開するリーグ戦で激突するのはホッフェンハイムで、開幕からいまだ無敗を維持しているチームを相手に土をつけるような働きができれば、巻き返しへの大きな弾みがつく。総得点(13)が18チーム中17位というチームの“貧打”を解消する意味でも、宇佐美の覚醒が待望されるところだ。

マリオ・ゴメス(ボルフスブルク)

 前半戦に期待を裏切ったチームの一つがボルフスブルク。チャンピオンズリーグ出場権の確保を目標に掲げながら、ここまで4勝4分8敗の13位と低迷している。戦犯の一人に挙げられたユリアン・ドラクスラーが1月にパリSGに移籍し、新たにユヌス・マリ(←マインツ)やリーヘドリー・バズール(←アヤックス)、ポール・ジョルジ・エンテプ(←レンヌ)を迎え入れた陣容で復調を期す。

 そうした新戦力とともに上位浮上のカギを握るのは、主砲マリオ・ゴメスだろう。ここまで15試合で計38本のシュートを放ちながら、わずか4ゴールに終わっているストライカーの爆発なくして、チームのV字回復はありえないかもしれない。それを百も承知のはずの本人も「期待に応えたい」と後半戦への抱負を語っている。

 復調に不可欠なのはマリとの新たなコンビネーション構築だ。チャンスメイク力に優れたトルコ代表のアタッカーが、バレリアン・イスマエル監督から期待される「違いを作り出すこと」をコンスタントに実践するようなら、おのずとゴメスのゴールチャンスは増えるはず。ビルト紙に「この二人は理想的なペアになるか」と問われたバレリアン・イスマエル監督も、「そうなるといいね。可能性はある」と期待を寄せる。

クラース・ヤン・フンテラール(シャルケ)

 シャルケは今冬の移籍マーケットで、2部リーグの得点ランクトップに立つギド・ブルクシュタラーをニュルンベルクから獲得。パワー、局面打開力、決定力の三拍子が揃ったウインガー兼CFの加入に伴い、昨夏に入団したエフゲン・コノプリャンカが徐々にフィットしてきている攻撃陣の充実度は以前より高まっている。

 その中で居場所を失いつつあるのがクラース・ヤン・フンテラールだ。2010年8月の入団以来、不動のエースとして君臨してきた点取り屋は怪我もあり、かつてないほどの体たらく(リーグ戦で7試合・1ゴール)に終わっている。今季いっぱいで切れる契約満了後は古巣アヤックスへの復帰が有力視されるが、最後にもう一花咲かせられるか。

 シャルケ歴代2位の通算124得点を叩き出している名手の逆襲に期待だ。

■ホルガー・バドシュトゥバー(バイエルン→シャルケ)

 この冬に一大決心を下したのがホルガ―・バドシュトゥバーだ。02年からの15年間を過ごしてきたバイエルンを離れ、シャルケへの今シーズン末までとなる期限付き移籍に踏み切ったのだ。出場機会の増加を望んでの決断だった。日本代表の内田篤人も所属する新天地では3バックの左を務めるのが有力で、セルビア代表の実力者であるマティヤ・ナスタシッチとレギュラーの座を争うことになるだろう。20歳の成長株ティロ・ケーラーに遅れをとるようなら、バイエルンへの復帰は遠ざかる。度重なるケガでキャリアを狂わせてきた男が復調を果たすには、とにかく健康体を維持すること。完全復活の暁には、長らく遠ざかっているドイツ代表への復帰が見えてくるかもしれない。

レナト・サンチェス(バイエルン)

 昨夏にベンフィカから移籍金3500万ユーロ(最大で8000万ユーロまで増幅)でバイエルンに加わったレナト・サンチェスにとって、ブンデスリーガ開幕からの半年間は“顔見せ”の期間に過ぎなかった。最優秀ヤングプレーヤーに輝いたユーロ2016での躍動感溢れるプレーは影を潜め、攻守に幅広く顔を出す持ち前のダイナミズムを発揮したシーンも稀。むしろミスを恐れているようで、若手らしい大胆さが損なわれていた。

 ビッグネーム揃いのチームで定位置を確保するのは容易ではないが、フル稼働している主軸の疲労がピークに達しそうな3~4月頃に改めて真価を問われるだろう。周囲が期待するのはボランチのレギュラー定着で、今シーズン限りで契約が切れるシャビ・アロンソの後釜たりえる実力を示したいところだ。

カリム・ベララビ(レバークーゼン)

 レバークーゼンが黒星先行(6勝3分7敗)と不振に喘いでいるのは、この快足ウインガーが筋肉系のトラブルで不在だった影響に拠るところが小さくない。戦力のやり繰りに苦労したロジャー・シュミット監督は、ベララビのいわば指定席である右サイドハーフに17歳のカイ・ハフェルツやハカン・チャルハノールを試してきたが、いずれも万人を納得させるパフォーマンスを示せなかった。

 ドリブル突破などの独力でゴールへの活路を開けるだけでなく、プレッシング時には快足を飛ばして相手の自由を奪えるベララビは、プレッシングサッカーを標榜するチームの陰のキーマンだ。地元紙に「できるだけ早くピッチに戻り、チームの助けになりたい」と語るなど、後半戦への意欲を燃やす男が悩めるレバークーゼンの救世主になるかもしれない。

文=遠藤孝輔

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