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エース負傷交代も怯まず。走り勝つ力と選手層の厚さ示した綾羽が昨年決勝のリベンジ:滋賀

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延長戦勝利を喜ぶ綾羽高イレブン

[5.31 総体滋賀県予選準決勝 綾羽高 1-0(延長)近江高 布引]

 綾羽が昨年決勝のリベンジ! 31日、平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」サッカー競技(インターハイ、三重)滋賀県予選準決勝が行われ、昨年準優勝の綾羽高が延長戦の末、同優勝の近江高に1-0で勝利。2年ぶりの優勝に王手を懸けた綾羽は2日の決勝で草津東高と戦う。

 岸本幸二監督が「大会を通してちょっとずつ成長してくれている」と評する綾羽が、延長戦を含む90分間の激闘を制した。立ち上がりは敵陣でFKを獲得した近江がゴール前のシーンを増やす。だが、徐々に試合の流れは綾羽に傾いていった。

 綾羽は2年生ながらキャプテンマークを巻くMF松本斎が近江のキーマン、FW槙山佳佑主将(3年)を徹底マーク。また、最終ラインでCB大田烈(2年)とCB浦山昂泰(3年)が高さと強さを発揮する綾羽はセカンドボールを拾うと、素早くサイドへ展開して右SH畠山逸基(3年)がクロスまで持ち込んでいく。

 だが、近江も関西屈指のGK土屋ヒロユキ(3年)や的確なカバーリングを見せるCB長ヶ原陸矢(3年)、181cmのCB山内舟征(3年)が中心となって相手の攻撃を跳ね返す。前半は綾羽FW今西純(3年)がヘディングシュートを放ったのみでシュート数は両校合わせて1。“堅い”試合展開となった。

 後半、近江はカウンターから惜しいシーンも作ったが、綾羽は交代出場の左MF桐畑涼太郎(3年)が果敢な仕掛けを連発するなど主導権を渡さない。迎えた後半24分、試合の行方を左右するようなアクシデントが発生する。桐畑の左クロスに飛び込んだ綾羽のエース・今西とクリアしようとした近江の守備の柱・CB長ヶ原が交錯。互いに頭部を強打し、4分ほど倒れ込んだ後に両者とも交代してしまう。

 この間、綾羽の準備が早かった。救急車が呼ばれるほどの状態だった長ヶ原を心配する近江に対し、綾羽は選手たちがいち早く集まって対応策を確認。浦山は「チームとして得点源の今西純がいなくなった時に、前の選手が崩れても、後ろの選手がいつも通りの守備をすれば得点はされないので、そこを確認していました」と自発的に行っていた対話について説明する。

 再開後、まずは守備を徹底。70分間で試合を決めることはできなかったが、それでも、延長戦で綾羽の強みである「走り勝つ力」と「選手層の厚さ」が白星を引き寄せる要因となった。

 延長前半6分、近江はMF池田海翔(2年)が右足ミドルを打ち込む。対する綾羽は7分、左サイドからMF廣瀬勇輝(2年)が鋭い仕掛けで切れ込む。これは近江CBが対応してボールを奪ったが、これに綾羽の廣瀬とFW小林真渡(2年)が猛然とプレス。逃げ場を失った近江の半端なクリアを狙っていたFW中井康貴(3年)が、右足で待望の先制点を流し込んだ。

 廣瀬、小林、中井はいずれも交代出場の選手。今年の綾羽はチーム作りが遅れたこともあり、メンバーを固定せずに色々な選手がチャンスを得る中で、「結果的に層が厚くなった」と岸本監督は説明する。ベンチスタートの選手たちが先発組と変わらないパフォーマンスを見せ、また「自分たちは走ってきた自信があって、走り勝つというところで自分たちは負けていない」(松本)という部分も発揮。近江も諦めずに反撃したが、最後まで落ちなかった運動量に加え、冷静に相手の攻撃に対応していたGK岩本彪真(3年)ら後方の安定感も光った綾羽がリベンジを達成した。

 岸本監督は「戦いながら成長させてもらっている」と語り、「結果がどうなるかは別にして、必ず次の一戦はいい経験になる」と選手たちがさらに成長する環境を得たことを喜ぶ。もちろん、選手たちの目標は決勝も勝利してさらに成長する機会を得ること。浦山は「自分たちは受けて立つチームではない。チャレンジャーとしてやればやってきたことは自分たちの方が自信がある。全力を出して全国行きたい」と力を込めた。近江を乗り越えた綾羽が、昨秋の選手権予選準決勝で敗れている草津東にも雪辱して頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2018

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