beacon

ドアの隙間から見た仲間の雄姿…國學院久我山DF加納直樹「涙をこらえられなかった」

このエントリーをはてなブックマークに追加

國學院久我山高DF加納直樹(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.2 選手権2回戦 専修大北上高0-0(PK5-6)國學院久我山高 NACK]

 提示されたのは、この日2枚目となったイエローカード。退場となった國學院久我山高DF加納直樹(3年)はピッチを後にする。ロッカールームへと引き上げると、「絶対に勝ってくれる」とチームの勝利を祈った。

 後半11分だった。「ルーズなボールで相手が触るか、自分で触るかだった」。ルーズボールに反応した加納と専修大北上高FW阿部耀仁(2年)が交錯。すると、主審が加納にイエローカードを提示する。前半20分に警告を受けていた加納にとって、この試合2枚目のイエローカード。退場となった。

「何も考えられなかったし、チームの皆に迷惑を掛けると思った」

 だが、試合が終わったわけではなかった。ピッチ上には残された10人の仲間がいる。ロッカールームに下がった自分にできることは、「10人になっても絶対に勝ってくれる」と仲間を信じることだった。

「退場して仲間の雄姿をロッカールームから見ていた」。ロッカールームからは「ピッチ全部は見えなかった」が、「ドアの隙間から見ていた」と限られた視界と「歓声で何となく」状況を確認した。仲間たちは数的不利に陥りながらも、試合終盤には猛攻をかけた。後半33分にFW山下貴之(3年)、同35分にMF大窟陽平(2年)、同40分にFW戸坂隼人(3年)がフィニッシュに持ち込んだように、勝利への執念を見せた。

 前後半の80分間で勝負を決めることはできなかったが、PK戦ではGK村上健(2年)の活躍もあり、6-5で制して3回戦へと駒を進めた。

 ドアの隙間から見つめた後半の29分間。PK戦は心境的に「見ることができなくて、ただ祈っていた」ようだが、大きな歓声で勝利を確信した。「勝ったと分かった時には涙をこらえることができなかった。仲間を誇りに思うし、感謝したい」。次戦は出場停止となるため、加納がピッチに復帰するにはチームが準々決勝に駒を進めなければならない。「仲間を信じる」だけでなく、「皆のケアの手伝いをして良い準備をしてもらいたい」と自身がすべきことをして、チームを後押しする。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2019

TOP