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10得点0失点で堂々の全国4強復帰…早稲田の快進撃支えるプロ内定GKの「風物詩的スピーチ」

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GK山田晃士(4年=浦和ユース/群馬内定)

[1.10 #atarimaeniCUP準々決勝 甲南大 0-3 早稲田大]

 ピッチ内でのウォーミングアップを終えた直後の早稲田大ベンチから、突如会場中に響き渡る大声が響いた。海老茶の選手たちが見つめる先は、ただ一人空色のユニフォームに身を包んだGK山田晃士(4年=浦和ユース/群馬内定)。「感謝」「思い」「責任」「仲間」——。今季のチームを象徴するキーワードをふんだんに盛り込んだ熱いゲキは、堂々の4強入りを予感させるのに十分な気迫を帯びていた。

 今季の主将を担い、今大会限りでサッカー選手生活に幕を閉じることを決めているDF杉山耕二(4年=三菱養和SCユース)は「風物詩的になってきた」(外池大亮監督)という副将の“試合前スピーチ”がもたらす価値を次のように語る。

「一緒に戦ってくれている仲間のこと、日々支えてくれている方々の思い、自分たちはそうした戦わないといけないんだということを彼が毎回伝えてくれている。あの言葉が選手一人一人のモチベーションにつながっているし、試合にうまく入ることができ、試合の入りから相手に圧力をかけるためのエンジンになっている」。

 早稲田大はこの日、初出場ながら“非関東勢”唯一の8強入りを果たした甲南大を立ち上がりから圧倒。前線からの激しいプレッシングで相手をのみ込むと、前半19分にセットプレーから杉山が強烈なヘディングシュートを決め、試合の主導権を決定づけた。その後は甲南大がペースを取り戻すも、気迫あふれる守備からの速攻でさらに2点を追加。終わってみれば、試合の入りに成功したことが勝負を分けたといえる。

 外池監督は、試合前スピーチの内幕を次のように明かす。

「実はあれはセットプレーの指示や確認をする場面なんです。誰が壁の何枚目に立つとか。その最後の“余興”じゃないですけど、ちょっとした時間を彼がああいう形で使っています。ただ、もう選手たちもセットプレーの話がだんだん頭に入らなくなっていて、『今日は山田が何を言うんだ?』って(笑)。山田もセットプレーの話より、どうやってみんなをモチベートするかになっています」。

「山田が伝えているのは、今日の試合の意味や、われわれがどういうことを基盤に活動させていただいているかという感謝の思い、そしてこのような舞台でサッカーをさせていただくことの喜びのところ。ここに来られなかったメンバー、すでにオフに入っているメンバーもいる。そういう人たちも含めてチーム一丸となって日本一を勝ち取ろうというところで、まずは試合の入りが重要だよということで雰囲気をつくってくれました」。

 この日の2点目を決めたFW梁賢柱(4年=東京朝鮮高)も試合後、「毎試合ああやって心に響く言葉を与えてくれる。今日はそのなかでも特に気持ちに響く言葉を言っていた。自分はそれに感化されて『やってやろう』という気持ちになった」と振り返っていた。

 山田が発する「感謝」「思い」「責任」「仲間」といったメッセージはおそらく、その言葉が表面的に意味する内容以上に選手たちに深く響いている。杉山は今季の早稲田大を「つながりが強いチーム」と評するが、その団結力の強さは10得点0失点という結果に表れているだけでなく、ピッチ内外の至るところで体現されている。

 今大会の1〜3回戦、早稲田大の試合会場のピッチ脇には常に、部員全員のメッセージが記された『感謝』の大判フラッグがあった。これは「当たり前でない日々の中で、一番強く感じたのが『感謝』だった」(杉山)と女子部と共同製作したもの。そこには遠征メンバーに帯同できず、試合前にモチベーションビデオを通じてチームを支えてきた部員たちの思いも込められていた。

 また、試合に出ていた選手たちはそうした思いを背負い、あるテーマを掲げて3連戦を戦ってきた。「東伏見に帰る」——。今大会は1〜3回戦がセントラル開催で行われた後、約10日間のインターバルを経て準決勝を控えるスケジュール。準決勝・決勝は味の素フィールド西が丘で開催されるため、いったん全員が再集合できる4強進出には、その結果だけにとどまらない価値があった。

「場所は違うけど一緒に戦っていると伝えてくれていた。仲間からの言葉にモチベートされていた」。遠くで支えてくれたメンバーに対して感謝の思いを明かした杉山は「つながりが強いチームだと思う。もちろん出場メンバー全員はつながって試合を戦っているが、ここに来られていないメンバーも含め、BチームやCチームのメンバー、学生スタッフも含めて全員がつながっている。一人一人がチームのためにできることをやっている」とチームの長所を誇りつつ、“東伏見帰還”の喜びを語っていた。

 そうして辿り着いた8年ぶりの全国4強。指揮官は「4年生中心にやってきて準決勝という舞台まで辿り着けたのはとても誇りに思うし、この4年生たちの姿を見ていたらある意味“妥当”というか、それくらい突き抜けた4年生だと思っている」と難しいシーズンを支えてきた杉山らを称賛。その上で準決勝以降の戦いに向けて「一つ一つ積み上げてきたものでここに立つことができた。ここにふさわしい姿を示していければ」と強く意気込みを語った。

 さらに、目の前に浮上した懸念材料さえも団結力で乗り越えていく気概を見せた。

 準決勝の法政大戦は、これまで中盤で攻守にわたって存在感を見せてきたMF鍬先祐弥(4年=東福岡高/長崎内定)が累積警告により出場停止。同じく出場停止で欠いていた関東大学リーグ1部第18節の順天堂大戦で早稲田大は0-5の大敗を喫しており、キーマン不在の影響は計り知れない。

 それでも外池監督は「これまで“リカバリー”をテーマに取り組んできたので、コンディションのリカバリーだけでなく、チームとして欠けたものに対してしっかり穴埋めしていくという新しいエネルギーが10日間で出てくることに期待したい。その下地はできている」ときっぱり。「不安というよりも楽しみにしたい」と言い切った。

 いずれにせよ準決勝は、今季の早稲田大が積み上げてきた真価が問われるまさに正念場となる。「4年生にとってはこの大会が最後。今年1年間、日本一のためにやってきたので、猛烈に意識して最善の準備をして臨めれば」(杉山)。「次の試合を楽しみにできるように良い準備をしたい」(外池監督)。連戦を終えて勝ち取った10日間の準備期間から、11日後に再び選手たちの心を揺さぶるであろう守護神のメッセージまで、まずは試合へ良い形で入るためにすべての力を注ぐ。

(取材・文 竹内達也)


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