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勝って兜の緒を締めるキャプテン。前橋育英DF桑子流空の圧倒的なリーダーシップ

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前橋育英高のキャプテン、DF桑子流空(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.14 インターハイ1回戦 専修大北上高 1-7 前橋育英高 日東シンコースタジアム丸岡人工芝グラウンド北コート]

 タイガー軍団のキャプテンマークを託されてから、初めて挑んだ全国大会。小学生の頃から憧れた舞台に胸が躍らないはずがない。「実際は緊張したんですけど、ピッチに立ってみると自信を持ってやれたかなと。今日は雨も降っていて、ピッチコンディションも悪い中で、守備は自分がしっかり統率してやっていかないといけないなと、いつも以上に強く思っていたので、声の部分も自信を持って出せたかなと思います」。前橋育英高を束ねる絶対的リーダー。DF桑子流空(3年=前橋FC出身)が確かな手応えとともに、力強く全国デビューを飾っている。

 初戦となった専修大北上高(岩手)とのゲームも、立ち上がりは最高だった。センターバックでコンビを組むDF柳生将太(3年)が、開始3分で先制ゴールを叩き込む。ところが、その3分後にまさかの失点。流れが悪くなりかけた中で、12分に盟友のMF笠柳翼(3年)がとんでもないゴラッソを叩き込んでみせる。

「あの失点の後の得点は大きくて、気持ちの部分ですぐに勝ち越せたというのは、本当に大きかったので、そのおかげで攻撃陣もまたリラックスして、ディフェンス陣も前半の最後の方は良い守備ができたので、そこは良い点だったかなと思います」。前半のうちにもう1点を追加し、3-1にリードを広げてからのゲーム運びは盤石。全体をコントロールしながら、常にゴールを目指す戦い方を徹底し、大量7ゴールを記録。失点も前半の1点だけに抑え、7-1というインパクト抜群のスコアで初戦を突破してみせた。

 インターハイ独特のレギュレーションにも、早く慣れる必要がありそうだが、既にポイントは整理できている。「インターハイは試合時間が35分で、プリンスリーグと違って10分短いので、試合展開も速いですし、そこは慣れない点でもあったんですけど、立ち上がりと給水の入りとか、最後の方だったり、その時間帯を集中できれば本当に上に行けるチームだと思いますし、あとは失点を防げれば攻撃陣には良いタレントが揃っているので、自分をはじめとして粘り強く、失点ゼロでこれからも戦っていきたいと思います」。アップセットが起きやすい試合時間だからこそ、的確に試合を読む力が求められることも十分に理解している。

 初戦で得たものを尋ねると、「良かったところは試合の中で攻撃と守備を改善できたところで、相手が強いチームになればなるほど流れを持っていかれたり、追加点を獲られたりというのもあると思うので、そういう部分は次に向けて改善していきたいです」とこちらも明確。ゲームの中での修正力も、今年のチームの大きな武器。とりわけうまく行かない時に、桑子の出番が訪れる。

 声を出し、周囲を鼓舞しながら、チームがうまく回るための下支えができるキャプテンには、笠柳も「本当に桑子がみんなに声を掛けてくれるから、チームとして誰が出ても良いプレーができるというか、練習からもう桑子中心に全員で声を掛け合って、お互いがお互いを高め合って、切磋琢磨できているのがチームの良いところです」と全幅の信頼を置いている。

 なんと柳生はこの日、コーナーキックから2ゴールを記録。桑子も「センターバックとして悔しい部分もあるんですけど、チームが勝てばもっと自分も活躍できる場が増えると思うので、まあ今日のところはアイツに譲ってやった感じです(笑)」と笑いながらも刺激を受けている様子。初戦の終盤には負傷から復帰したDF徳永崇人(3年)も登場し、このセンターバック陣のポジティブな競争も、チーム力向上に欠かせない要素になるだろう。

「失点が心残りなんですけど、得点の面では申し分ないので、そこは自信を付けていいですし、また東山戦に向けて、改善できる部分は改善していきたいです」。赤い腕章を巻いたタイガー軍団のキャプテン。桑子のリーダーシップは、このグループをさらに上へ、上へと引き上げていくだけの要素を兼ね備えている。

(取材・文 土屋雅史)
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