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[MOM3551]前橋育英MF笠柳翼(3年)_練習してきた無回転シュートでゴラッソ。タイガー軍団の10番が全国でも違いを見せる

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初戦から2ゴールを奪う活躍の前橋育英高MF笠柳翼(左、10番)(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.14 インターハイ1回戦 専修大北上高 1-7 前橋育英高 日東シンコースタジアム丸岡人工芝グラウンド北コート]

 爽やかな笑顔で強気な発言をポンポンと繰り出すギャップが、この10番の大きな魅力。自身にとって初めての全国大会で、初戦から2ゴールを奪っても、そのスタンスは変わらない。「ハットトリックはしっかり狙っていましたし、ここから相手も強くなっていく中で、どれだけ自分が点を獲れるかというのは鍵になってくるので、そこは満足せずに、どんどんゴールを決めていきたいと思います」。前橋育英高のドリブラーにして、パサーにして、フィニッシャー。MF笠柳翼(3年=横浜FCジュニアユース出身)は貪欲に、自身とチームの成果を求め続けている。

 流れは悪くなりかけていた。専修大北上高(岩手)と対峙したインターハイの初戦。幸先よく前半3分にDF柳生将太(3年)が先制点を奪ったものの、すぐさま3分後に失点。一瞬でリードが霧散しただけではなく、相手が勢い付くような展開の中で、笠柳はあることを考えていた。

「1点を獲られて、ちょっと雰囲気が悪い中で、早く得点を獲ろうという想いもあったんですけど、やっぱりチームがセカンドボールを取れていないと、調子が悪くなってしまうので、そういうところからしっかり入ろうと思っていました」。その意識は12分に結実する。

 ともにこのチームを牽引してきたキャプテンのDF桑子流空(3年)が送ったパスから、こぼれたボールにいち早く反応すると、イメージはもうできていた。「横に巻いてもこのレベルだとキーパーも上手くて入らないので、上から落とすということを意識していました」。左からカットインしながら右足を振り抜くと、軌道はそのままゴール右スミのゴールネットを鋭く捕獲する。

「アレは無回転なんですけど、1週間ぐらい前からインターハイを意識して、右上に落とすという練習をしていたので、こういう舞台で一発獲れたのは自分にとっても大きな自信になりますし、チームを救える一発だったかなと思います。1-1という均衡したシチュエーションで、相手が勢い付いている時にああやって沈められたのは、日頃の努力というか、練習していたからこそのゴールかなと」。指揮官もキャプテンも口を揃えて、あの1点が大きかったと語ったチーム2点目。それをゴラッソで叩き込むのだから、対峙する相手から見れば厄介なことこの上ない。

 さらに、後半には自身の2点目、チームの5点目も記録。「右の(小池)直矢が少し溜めてくれて、カットインしてくれたので、そこはもう思い切ってゴール前に飛び込むと決めていました。ほぼ直矢のゴールなんですけど、ちゃんとファーまで越したボールを出してくれたというのが、大きかったかなと思います」。MF小池直矢(2年)のクロスをダイレクトボレーでプッシュ。いわゆる“ドッピエッタ”で、その存在を大きくアピールしてみせた。

 初めて臨む全国大会。しかも初戦ということもあり、感情の昂りはもちろんあった。「ちょっと気合が入り過ぎたというか、いつもだったらもっと冷静にできるところを、特に守備の部分で熱くなっている気持ちはありましたね」。ただ、それはごくごく自然なもの。それぐらいの気持ちが、掲げる目標達成には必要不可欠だ。

 この大会は勝負の時。個人としても、チームとしても、その価値を示す絶好のチャンスだと捉えて、必死にトレーニングを積み重ねてきた。「マークが付いているから自分のプレーができないとかじゃ話にならないですし、本当に上手い選手はどんな状況でも点が獲れると思っているので、そのマークをどんどんぶち抜いていかないといけないと思います」。

「全国に名前を示すというところはもっともっとやっていかないといけないし、そういう場に立つのも本当にこの大会が初めてなので、全国に名を轟かせるためにも良い準備をして、プレーで表すしかないと思っていますし、そこは日本一を目指して、集中してやっていきます」。

 まだまだこんなものじゃない。厳しいマークも、課される高いハードルも大歓迎。それをも乗り越え、まだ見ぬ景色へと辿り着くための準備が、笠柳には整っている。

(取材・文 土屋雅史)
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