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星稜とのスコアレスドローも糧に、帝京長岡は届かなかった“あと2勝”を今年こそ手繰り寄せる

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切り替えも早く、お互いに攻め合った好ゲームはスコアレスドロー。

[9.26 高円宮杯プリンスリーグ北信越第7節 帝京長岡高 0-0 星稜高 長岡ニュータウン運動公園]

 一方は昨年度の高校選手権で、全国ベスト4を経験。もう一方もこの夏のインターハイで、やはり全国ベスト4まで駆け上がった。日本一がすぐ目の前まで迫るステージを知ったからこそ、そこに挑む意味をどちらのチームも十分に理解している。

「もちろんチームとしては日本一を目指していますし、去年の成績を超えないといけないというふうにトレーニングはしていますけど、1つ1つ勝ち続けないとそこには辿り着かないので、目の前の1試合を大切に、全力で戦わないといけないと思います」(帝京長岡高・三宅凌太郎)「あと1つ勝てば決勝というところまで行ったことで、そこからの勝負強さを付けたいなって。日本一に対する実感は前よりも湧いていますし、そこで基準が分かったので、それをトレーニングでやるだけだなと思います」(星稜・井上陽向大)。

 26日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ北信越第7節、帝京長岡高(新潟)と星稜高(石川)が激突した好カードは、お互いにクロスバーに阻まれる決定機も作り出したものの、得点は最後まで生まれず。0-0のドロー決着となっている。

「前半の立ち上がりは僕らがペースを掴めたと思います」とDF井上陽向大(3年)も言及したように、まず攻勢に打って出たのは星稜。前半2分には左右に揺さぶる展開から、MF平良大研(2年)が狙ったミドルは枠を越えたものの、得意のサイド攻撃からフィニッシュまで。帝京長岡も5分には、カウンターからFW三宅凌太郎(3年)、MF岡村空(2年)と繋いだパスを受け、FW渡辺祐人(3年)がシュートを放つも、星稜のGK山内友登(3年)がセーブ。お互いにチャンスを作り合う。

 ただ、以降は「ウチは両サイドにどう展開を持っていくかというところが大事ですからね」と河合伸幸監督も話した星稜が、そのサイドアタックの鋭さで主導権を奪取。24分にはDF黒田大翔(3年)が左から好クロスを上げ切ると、逆から飛び込んだMF戸川期雄(3年)が決定的なヘディングを打ったが、「クロスに“アザー”が逆サイドからしっかり入ってくるという練習をずっとしていて、その形は良かったんですけど、最後の詰めが甘かったですね」と自ら振り返った軌道はクロスバーを直撃。絶好の先制機を逃してしまう。

 なかなかリズムの出ない帝京長岡は、29分にベンチスタートだったU-17日本代表候補のMF廣井蘭人(2年)と、U-16日本代表候補のDF内山開翔(1年)を早くも投入すると、少しずつ攻撃にテンポが出てくる。45分には星稜もMF福島元基(2年)のラストパスから、FW山下陸(2年)が枠内シュートも、帝京長岡のGK佐藤安悟(2年)がファインセーブ。前半の45分間はスコアレスで終了した。

 後半はスタートから「自分たちのやりたいサッカーが少しずつできるようにはなったかなと思います」と三宅も口にした帝京長岡ペース。3分、8分と続けて、その三宅とのパス交換から渡辺がシュートまで持ち込むも、ともに山内がセーブ。11分には渡辺が時間を作り、岡村のフィニッシュはここも山内がキャッチ。15分にも左サイドでMF武原幸之介(3年)、岡村とパスを回し、三宅のシュートも山内に阻まれたものの、ゴールの匂いを漂わせる。

 21分には帝京長岡にセットプレーから決定機。右サイドで獲得したCK。そこまで蹴っていたレフティの廣井ではなく、右利きの岡村が蹴り込んだボールはバウンドする軌道に。巧みに合わせた渡辺のヘディングは、しかしクロスバーにヒット。「アレは絶対に決めなくてはいけなかったですね」と9番を背負うストライカーも悔しさを露わに。スコアを動かせない。

 23分は星稜。山下とのワンツーから、途中出場のMF高橋鴻太(3年)が放ったボレーはゴール左へ。29分は帝京長岡。岡村の左CKに、飛び込んだDF松本大地(3年)のヘディングは枠の上へ。33分は星稜。投入されたばかりのDF河合伸悟(3年)がロングスローを投げ込み、キャプテンのDF中村実月(3年)が競り勝ったボールに井上が頭で合わせるも、軌道は枠外に。38分は帝京長岡。廣井のラストパスにDF根本龍成(3年)が抜け出したものの、シュートはまたも山内がキャッチ。0-0の均衡は続く。

 45分のラストチャンスは帝京長岡。廣井が左サイドへ丁寧なスルーパスを通し、走った武原が懸命に折り返すも、突っ込んだFW堀颯汰(1年)も渡辺もわずかに届かず。「自分たちも決めれば優位に立てるシーンは多かったんですけど、その分相手にも決定機があって、攻守においてどちらもハードワークの激しい試合だったなと思いました」と井上も振り返った90分で決着は付かず。両チームが勝ち点1を上積みする結果となった。

 帝京長岡はインターハイ予選の準決勝敗退後、最初に迎えたリーグ戦では黒星を喫したものの、以降の7月のゲームは3連勝を達成。とりわけ県内最大のライバルとして切磋琢磨してきている新潟明訓高に6-1と大勝するなど、「夏は結構痛い目に遭いながらも、少しずつ『やれるかな』という手応えがあった」と谷口哲朗総監督も当時を振り返る。

 だが、9月に入ってからは部活動の休止もあって、前節の丸岡高(福井)戦も2-1で勝利こそ挙げながらも、「ちょっと巻き戻ってしまった感がありますね」と谷口総監督。ここから選手権予選に向けて、「上手く行かないゲームもあると思うんですけど、そこでどんな形であれ、勝てるようなチームになっていかないと上には行けないと思いますし、良いサッカーをしていても勝たないと意味がないので、泥臭い1点を獲ってでも、ゲームに勝ち切れるという力を加えていきたいです」と三宅が表現したようなチームへの成長を、より促していくことになる。

 一昨年度、昨年度と全国4強を経験しているからこそ、自ずと目指すべきところは決まってくるが、そのハードルはもちろん低くない。「凄く簡単じゃないですよね(笑)。でも、それは去年も感じていたことで、コーチングスタッフ全員の力が必要なことも分かったし、子供たちにそこを本気にさせるというか、『これでやれるんだ』という信じられるものをどれぐらい得られるか、かなと」。

「それは選手権予選が始まって、1個1個勝ち進む中で埋めていく自信だと思うんですけど、本当に1つ1つクリアしていく中で生まれてくる自信も多々あると思うので、やっぱりどういう形であれ、『自信を持つ』部分でどういう働きかけができるかなというのは、ここ1か月の勝負になると思います」(谷口総監督)。古沢徹監督、西田勝彦コーチ、亀井照太コーチと経験値の高いスタッフが結集させていく総力も、ここからは大事なポイントだ。

 決して多弁ではない渡辺が、力強く発した言葉が印象深い。「絶対負けたくないですし、『もっとやれば良かった』みたいな悔いは残したくないので、空いている時間は全部サッカーに費やしていきたいです。目標はもう選手権の日本一以外にはないですね」。

 日本一を目指すための基準は、各々の中に叩き込まれている。あとは、やるだけ。2年続けて届かなかった“あと2つ”の勝利を手繰り寄せるまで、帝京長岡は無敗で駆け抜ける覚悟をここから整えていく。

(取材・文 土屋雅史)
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