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トップ昇格内定のFC東京U-18FW野澤零温はプレーの幅を広げつつ、それでもゴールを奪い続ける

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FW野澤零温(18番)はアシストのDF中野創介とゴールを喜ぶ

[10.3 プレミアリーグEAST第10節 市立船橋高 1-1 FC東京U-18 タカスポ]

 決定機は一度で十分。決め切る力は小平のグラウンドで磨いてきた。ここぞという場面でゴールを挙げることこそ、ストライカーが果たすべき唯一の仕事だ。

「プロに上がるという部分でもそうですし、チームのストライカーとしてもそうですけど、やっぱり自分は常に結果を求められている選手なので、その期待に応えないといけないですし、それが自分の仕事でもあるので、そこはもっともっと突き詰めていきたいと思います」。途中出場でもきっちり結果を。FC東京U-18の点取り屋。FW野澤零温(3年=FC東京U-15深川出身)はゴールで自分の価値を証明し続けていく。

 ベンチスタートだった野澤に声が掛かる。市立船橋高(千葉)を相手に、1点ビハインドで迎えたハーフタイム。後半開始からの投入が告げられた。「忠さん(中村忠監督)からは『エースストライカーとして点を獲ってこい』ということは言われましたし、自分としてもチームのストライカーとして、点を獲って勝たないといけないというふうに入りました」。為すべきことは1つ。ゴールを奪うこと。それだけだ。

 後半4分にはやはり途中出場のFW桜井秀斗(3年)からのパスを受け、狙ったシュートはクロスバーを越えたものの、いきなり得点への意欲をフィニッシュに込めると、その真価は終盤に入って発揮される。

 35分。「ボールがサイドに行って、(中野)創介に落とされた段階で『クロスが上がってくるな』とは思っていて、呼んだというのもあるんですけど、タイミング的にも中でフリーだったので、『来るな』というのはわかっていました」。右SB中野創介(3年)が中央を窺いながらクロスを上げた瞬間、野澤は既に駆け引きで相手を上回っていた。

「創介から上がってくるタイミングでもともとフリーでしたし、もう感覚的に『相手が寄せてくることはないな』と自分でも分かっていました。あとはもう創介が良いボールをくれたので、コースはちょっと甘かったんですけど、『強く叩けば入るかな』と思って、当てられて、決められて、良かったです」。頭で叩いたボールは柔らかい軌道を描いて、ゴールネットへ辿り着く。同点弾はチームに勝ち点1をもたらす貴重な一撃。きっちり自らに課せられた仕事はやり遂げてみせた。

 ただ、それは今までだったらの話。トップチームへの昇格が内定し、自身に求める基準も当然上がっていることは間違いない。「今日を振り返ると得点だけだなと思っていて、守備でも攻撃でもチームにあまり貢献できなかったので、そこは少し反省点です。プロになるという自覚を持たないといけないというのはもちろんなんですけど、ユースに所属している今の自分だったら、もっともっとチームのために、攻撃においても守備においても、ストライカーとしての仕事をもっともっとやっていかないといけないですね」。

 昇格内定を受けて、多くの人からの祝福を受けた。「本当に凄く祝福されました。インスタだったら100件ぐらいの連絡が来て、いろいろな人にお祝いしてもらいました(笑)。ジュニアの時のチームのコーチからだったり、小学校や中学校の仲間や先生だったり、もちろん今のチームメイトからもいろいろなお祝いの言葉をもらって、凄く嬉しかったですし、出会いの大切さというか、みんなに本当に恵まれているなと改めて思いました」。続けて「人気者ですね」と水を向けると、「そうですね!」と言い切るあたりに、明るい性格が現れる。

 改めて自身の特徴を言葉にしてもらう。「全体的には足の速さや得点力というのが自分の武器だと思っているので、守備だったら前からプレスを掛けたり、プレスバックしたり、攻撃だったらたくさん抜け出しの数を増やして、チャンスを作っていくところですね。トップチームには沖縄キャンプから帯同させてもらって、しばらく練習も行かせてもらっていたんですけど、ゴール前での嗅覚やドリブルは結構通用するなとは思っていて、自信は持っています。ただ、まだまだ足りないところは多いので、そこは補っていって、武器を伸ばせるようにやっていきたいと思います」。

「今日は1点獲れたんですけど、勝つことができなくて、まだまだ物足りないし、力も足りないというところがあるので、もっともっと力を付けていって、自分が点を獲って勝てるようになりたいですし、チームの勝利のためにやっていきたいと思っています」。

 J1のクラブで日本人ストライカーが躍動することは容易ではないが、そこで力を発揮できれば、自ずと次のステップも見えてくる。世界に通用する名前のスペルを持つ『LEON』は、ここからゴールという名の結果で、自らの未来を手繰り寄せる。

(取材・文 土屋雅史)
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